第901話 周囲の人達は適当に蹴散らす
「な、何!?」
俺の声や、晴れてきた視界で姿を確認した女性が驚愕。
驚き方もよくある感じだけど、勝利を確信していたのが覆された悪人って、大体こうなるんだろうか?
「あの爆発の中にいながら、無事で済むはずは……ちっ! だが、先程以上ならばどうだ、っ!」
「「「「「フレイムエクスプロージョン!!」」」」」
「あー、無駄なんだけどなぁ……」
一瞬だけ戸惑った様子だったけど、女性はすぐに今度は両手を上げ、周りの人達に指示。
すぐさま、先程よりも多くの……多分十人以上いるほとんどの人が、魔法を俺に向かって再び放った。
数が増えても、爆発自体は威力それなりくらいだから、もしかしたら結界すら必要ないかもしれないけど……熱いのは嫌だし、ちょっとでも痛い思いをするのも馬鹿らしいので、もう一度結界で体を包んだ。
いやぁ、結界って便利だねぇ……なんて、炎と一緒に先程よりも多くの砂や土が巻き上げられるのを、結界の中から見ながら暢気に考える余裕がある。
見た目が派手だから凄い威力の魔法に見えるけど、透明な結界越しにじっくり見るとやっぱりそれ程じゃないなぁ。
何せ、地面に当たって爆発した部分を見ても、俺が落ちてきた時にできた穴の方が大きい……結界を使っていたし、自分の事だからよくわからなかったけど、俺どんな勢いで落ちて来たんだろう? なんてどうでもいい事も考え始めていた。
とは言っても、炎も巻き上がるので炎熱の効果もあるし、戦う事ができない人間に向けられたら危険なのは間違いないか。
っと、そろそろ巻き上がった砂や土が晴れて来たね……そろそろ結界を解いてもむせなくて済みそうだ。
「今度こそ、バラバラになったか。いや、燃えて消し炭にでもなったか? くっくっく……」
「いやぁ、あれじゃバラバラにも消し炭にもならないんじゃないかなぁ?」
「な、なんだと!?」
あの威力、確かにそこらの人が連続で撃ち込まれたら、いのちの危険は間違いなくあるけど、それでも体がバラバラに……は、少しはなりそうかな?
それはともかく、消し炭はさすがにないと思う。
まぁ、炎に巻かれて燃えるとかはあるだろうけど、さすがにあの時間だけで炭になるほど燃えないよね。
首を傾げながら言う俺に、予想通りの反応をする女性だけでなく周囲の人達も、驚愕していて動きを止めている。
あ、一人顎が外れそうなくらい口を開けているね……顎が外れると痛いから気を付けるんだよー?
「ど、どういう事だ! あれ程の魔法を叩き込まれて、無事で済むはずが……!」
「そう言われても、実際無事だからねぇ」
「貴様は化け物か!? 一体何をした!」
「化け物はひどいなぁ。でも、元々大した魔法じゃないってだけじゃないかな? あれじゃ人一人も倒せないよ?」
「そんなわけないだろう!」
まぁ、本当にそんなわけないんだけどね……実際は結界のおかげだし。
「くそ! 何をしたのかはわからんが、今度は私も……」
「うーん、そろそろ原状回復が面倒になりそうだから、もういいかな。……ファイアバースト!」
「んな!? ぐぅぅぅぅ!!」
「「「「「ぐぁぁぁぁっ!!」」」」」
再度腕を振り上げ、今度は自分もと魔力を集め始めた女性。
さすがにこれ以上ここを穴だらけにすると、元に戻すのが面倒そうだから止めないとと思い、適当な事を言いながらイメージしていた魔法を使用。
俺自身に放たれた魔法を元に、炎を小さく爆発の衝撃を大きくするイメージだ。
魔法名は、向こう側のをそのままというのはなんとなく嫌だったので、変えてみた。
悪人が使う魔法と同じ魔法名って、なんかね。
両手を広げて左右に魔法を放つと、俺の左右が大きく爆発。
炎を小さくしたのは人や物が燃えてしまわないためで、爆発の衝撃で吹き飛ばすようにしておいた……思ったよりも威力が強くて、地面がえぐれて土だけでなく石が爆発に巻き込まれた人達に襲い掛かったりと、結構凶悪な威力になってしまったけど。
さらに、周囲に爆風もまき散らして、ローブの女性以外は全員吹き飛んだ……原状回復と自分で言いながら、自分が一番周辺の破壊をしているなんて事は、あまり考えない方が良さそうだ。
……後で、クラウスさんとか付近の人達に謝ろう、うん。
「な、な、な、な……なんだこの魔法の威力は!?」
「そうだよね、俺も驚いたんだけど、ちょっとだけ強すぎたよ」
もう少し、ちゃんと魔力の使い方に慣れないと威力が強すぎるなぁ……俺自身は少なめに魔力を使っている感じしかないんだけど、魔力量が増えた影響なのか、ちょっとした魔法でも威力が出過ぎてしまっている。
やっぱり、どこかで魔力の使い方に慣れないといけないね。
「さて、とりあえず残りは君だけになったみたいだけど?」
「くっ……」
「おとなしく、降参してくれたりしないかな?」
一応、聞いてみる。
爆発の威力を見て、敵わないとおとなしくなってくれたらいいなぁ、という希望的な考えだけど、多分不可能な事はわかっている。
「くっ……くっくっく! そんなわけがないだろう!」
「ですよねー」
「貴様、あれ程の魔法を使ったのだから、もう魔力も残り少ないのではないか? だから、私と戦う事を避けるように言ったのだ。違うか!」
「いや、そういうわけじゃ……」
何を勘違いしたのか、ローブの女性は俺がもう魔力が尽きかけていると考えたようだ。
うーん……確かにさっきの魔法を、他の人が使ったら魔力が尽きてもおかしくない……のかな?
魔力量の具体的な使用量とか、他の人が使った場合とかまではよく考えていなかったからわからないけど。
「だが、私は先程から一切魔力を使ってはいない。そして、見ればわかるだろう……この可視化された魔力を! この強大な魔力の前にひれ伏すがいい!」
そう言って、さらに勝ち誇った女性が滲み出ている魔力を、さらに内側から絞り出して、可視化した魔力を濃くする。
なんでこう、こういう人達って自分が絶対に上位にいるって信じて疑わないんだろうね? ツヴァイもそうだったけど。
「そうなんだー。すごいねー……」
「き、貴様……私の言う事を信じていないな!? この魔力が見えぬわけではあるまい!」
「いやまぁ、見えてはいるんだけどね……」
ツヴァイと同じくらいかな? 探知魔法での反応通りに、以前地下の研究所で見たツヴァイの可視化された魔力と、ほとんど変わらない。
あれを見た事があるから動じる事はないし、なんなら冷めた反応になってしまった。
ローブの女性は、俺が驚き戦く事を期待していたんだろう、憤慨している様子だ……いや、そもそも滲みだす魔力を増やす前から、可視化された魔力が出ていたし、見えていてこちらから近付いたんだから、今更怖がったり驚いたりはしないよね。
魔力量が多い人物がいる事は、探知魔法でもわかっていたんだし。
「くっくっく、まぁいい……私の魔法を受ければ、そのような余裕な態度も改まろうというもの。先程貴様が耐えた爆破魔法と同じだと思うなよ!」
「耐えたわけじゃないんだけど……まぁ、似たようなものかな?」
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