第727話 ツヴァイ尋問継続中
「……オーガは、魔力の質が単調でわかりやすいからだ。御しやすく、何かの拍子で事故が起斬る可能性も少ない。これ程研究に適している魔物は他にいない」
「質が単調……わからなくもないけど、それなら、ゴブリンでも良かったんじゃない? オーガだと暴れたら危ないけど、ゴブリンならなんとでもできるんじゃ……」
「あれは駄目だ。魔物のくせに魔力の質が複雑だ。おそらく、同種族の上位個体には魔法を使うのがいるせいだろう。確かに暴れた際には対処しやすいが、核から復元させるには魔力を一部同調させなければいけないのだ。ゴブリンの魔力は複雑で、第一段階の復元に手間がかかる」
ゴブリンって、オーガより複雑なのか……まぁ確かに、ヘルサルに襲って来た時は魔法を使うだけでなく、弓矢や剣を使うのもいたから、オーガより知性という意味では高そうではあるけど。
でも、オーガだと真っ直ぐ進めとか単純な指示をきかせるのがやっとだろうけど、ゴブリンだったら、命令をしてこちらに従わせたり、簡単な集団行動もできそうなんだけどな……。
おっと、俺が魔物を利用する方法を考えてたりしちゃ駄目だね……禁忌とされている研究以前に、人として道を踏み外してしまいそうだから。
この辺りの考えは、あまり人に話さないようにしておこうっと。
「というか、オーガにも魔法を使う個体はいるんだけど……エクスブロジオンオーガとかもそうだったし……」
爆発するようになって、肌が赤くなったエクスブロジオン―がは別だけど、通常の緑色の肌をしたエクスブロジオンオーガは風邪の魔法を使ってたはずだ。
それなら、ゴブリンと同じくで魔力の質が複雑になったりはしないんだろうか?
「あれは、オーガの下位個体とも言える。おそらく、鉱山内などの狭い場所でも活動できるように体が変化したのだろう。別個体と考える向きもあったな。それに、エクスブロジオンオーガの方はゴブリンと違って、同じ魔法しか使えない。おそらく、本能に刻まれた魔法を使っているだけで、頭で考えて使っていないからだろう」
うーん……違いがよくわからないけど、とりあえず魔法が使えるゴブリンは考えて使う事ができるけど、エクスブロジオンオーガの方はなんんとなく感覚だけで使っていると考えればいいのかな?
ゴブリンの方は上位個体が使うけど、オーガの方は下位個体が使うという方が需要なのかもしれない……そのあたりの細かい違いは俺にはわからないので、気にしない事にしよう。
「それで、なんでこんな場所で研究を?」
「……ここならば、人里離れているし、見つからないと考えたからだ。現に、今回こうして発見されるまでは誰か部外者が来る事はなかった」
「それに関しては、頭の痛い問題ですな……魔物もいるので、国内全てを見て回るという事は現実的には不可能です」
「まぁ、大まかに見る事はあっても、細かく全てを調べるのは難しいですよね。それこそ、冒険者にでも頼まないと時間も労力も膨大にかかりますから」
監視カメラもないからなぁ……基本的に調べたりするのは人が実際にその場所へ行って、目で見て確かめるという事しかできない以上、人のいないはずの場所をくまなく調べる事はできない。
村や街の周辺ならまだしも、離れた場所だからね。
それを利用して、誰かに見られないようにこんな大規模な地下施設を作る事ができたんだろう。
今回以外部外者が来る事はなかったという事は、ツヴァイはアメリさんがここでオーガが出て来るところを発見したというのは知らないんだろう。
「オーガが人を襲う可能性があったのでは? 実際に、この場所へ踏み込む前には、街道までオーガが何体も出て来ていたはずだけど……」
「それは……見つかる可能性も確かにあったが、研究の成果を試すためだ。街道だから、誰か人間が通る事もあるからな。研究成果を早々に出せと言われたからだが……そうか、イオスがやられたから焦っていたのだな」
「焦っていた? 早々に研究成果を出せ……か。それはつまり、お前よりも上の命令している人がどこかにいるという事だね?」
まぁ、命令している人がいるのは間違いないと思うけど、とりあえず確認だ。
「……なんで、お前にそんな事まで話さなきゃいけな……っ!」
「チチー?」
「フレイちゃん落ち着いて。まぁ、話したくないなら別にいいけど……?」
「話す、話すからそいつを近付けないでくれ!」
「はいはい。フレイちゃん、こっちー」
「チチ~」
俺の疑問に、睨むようにしていたツヴァイだけど、その態度に思うところがあったのか、フレイちゃんがズイッ! とツヴァイへと顔を寄せて首を傾げながら声を出していた。
俺以外にはなんて言っているのかわからないけど、俺にだけはフレイちゃんが「燃やすよ?」と言っているのが頭の中に響いていた。
うん、まぁ……ツヴァイの態度が気に食わなかったんだろうけど、そんな凄まなくても……と思ったけど、とりあえずフレイちゃんの脅しに乗って、落ち着くように声をかけつつツヴァイにそれとなく声をかける。
それを俺からの脅しと受け取ったツヴァイは、焦った様子で話してくれるようだ……まぁ、脅しなんだえけどね。
フレイちゃんが近くにいると話しにくいだろうから、手招きして呼んで、再び俺の隣で待機してもらう。
俺に呼ばれたら嬉しそうにする様子とか、なんとなく小動物に懐かれている感じがしてちょっと楽しい……エルサだったら表面上は面倒そうにするからなぁ。
「何か、だわ?」
「……いや、なんでもないよ」
「チチ?」
俺の考えた事を察知したのか、寝ていたはずのエルサがくっ付いている俺の頭を、強めに締め付けながら声を出したので、モフモフを撫でて誤魔化しておく。
契約とかの関係で、俺の考えが伝わったのだろうか……? 隣では不思議そうにフレイちゃんが首を傾げているのが可愛い。
おっと、今は和んでいる場合じゃなかったね。
「それで、命令を出していた人物というのは誰なんだ?」
「俺に命令できるのはただ一人……あのお方だけだ。だが、直接会う事は敵わないので、実際には別の者があの方の命令を伝えて来る。フュンフという女だが……決して顔を見せないために種族まではわからん。女だと言うのも、声から判断しているだけだ」
「フュンフ……」
言いにくい名前だね……確か、ツヴァイと並んで地球ではドイツ語の数字を表すんだと思うけど……なんだろう、ドイツ語で名前を付けるのでも流行っているのかな?
偶然かもしれないけど……。
「その……フュンフとか、あのお方っていうのは?」
「……フュンフに関しては、俺にあのお方からの命令を伝えるだけで、よく知らねぇ。本来はあのお方の側近の配下だったらしいが、気に入られたと聞いたくらいだ。あのお方に関しては……俺には話せない……」
「ふむ……そうなんだ?」
「チチー!」
フュンフという、想定で女性と思われる人物が他にいて、さらにその上……ツヴァイが従っている人物の命令を伝えていたと……さっき言っていた、焦っていたというのはその人かな?
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