第715話 隠し通路と合流する探索小隊
各部屋を確認しているのは体力の余っている兵士さん達……突入直後に武装した人たちを確保した兵士さん達が主で、あとは数人くらい援護に回っていたために疲れていない兵士さんとフィリーナだ。
前線で戦っていたモニカさんやソフィーや、突入直後から動き回っている兵士さん達なんかは、確保して集めている人間達の近くで、休憩している。
ちなみに、エルサは見る限りでオーガがいなくなった途端、俺の頭にコネクトして今はスヤスヤと寝息を立てている……結界を張ったりとか結構頑張ってくれたから、後でご褒美のキューをあげないと。
「何者だ!?」
「ん?」
「何かあったか?」
俺達が突入してきた出入口付近で休んでいたり、報告を聞いたりしていると、一番近い小部屋の方から叫び声が聞こえた。
何かあったのかと、そちらへ向かう俺とヴェンツェルさん……あ、まだ元気だからついて来るんですね。
モニカさんやソフィーはまだ元気な俺達に任せるようで、疲れ果てて地面に座り込んだままでひらひらと手を振っていた。
「どうかしましたかー?」
「あ、リク様! いえ、この者が……」
「リク様、外で探索を担当させて頂いていた隊で、小隊長を務めさせて頂いております! えーと、リク様達がいらっしゃるという事は、ここが突入した地下施設……という事でしょうか?」
声が聞こえた小部屋を覗き込み、気軽に声をかける。
何も警戒していないのは、最初に聞こえた叫び声以来争うような雰囲気を感じなかったからだ。
変な気配とかも感じなかったし、ツヴァイみたいな相手が出たわけではなく、拘束された研究者が抵抗でもしてたのかな? くらいに思っていた。
俺の声に気付いた、部屋にいた兵士さんは自分の正面にいる人物達を指し示す。
そちらには……またさらに俺に気付いて、気を付けをしながら発現する兵士さんと、ほかにも数人の鎧を着た人達……。
うん、見覚えがあるから、間違いなく施設周辺に隠し通路がないか調べていた兵士さん達だね。
「はい、そうですよ。貴方は外からここへ?」
「はっ! 地上部を探索していたところ、草むらに隠されるようにして、人が通れそうな穴がありました。ただちにマルクス様へ報告後、中へと入り調べていたら、ここへ辿り着いた次第です!」
「そうですか……ツヴァイの事もあるから、いざという時に逃げる以外にも、出入り口にも使用してそうだね……うん、ありがとうございます」
「いえ、もったいないお言葉!」
やっぱり、ツヴァイが入って来た道以外にも、外へ通じる通路はあるみたいだ。
ツヴァイ以外にも、武装していた人なんかは研究者を監視する役目だろうから、その人達が使っていたんだろう。
研究者が勝手に外へ出ないよう、本来使われるべき出入り口には外側から閉じて許可制にし、自分達は隠し通路を使って外との出入りをしていたんだね……わざわざ鎖で厳重に封印されている扉を、わざわざ開け閉めするのは目立つしめんどうだろうから。
「見つけた通路はまた後でもう一度調べるとして……とにかくここにいる人達を運び出しましょう。あっちに、捕らえた人を集めているので」
「はっ! 了解しました!」
この部屋を担当していた兵士さんと、新たに来た兵士太さん達が、改めて俺の指示に敬礼をして応え、拘束されて転がっている研究者を運び始める。
この場所はそれなりに出入り口に近いけど、ツヴァイが来た奥の部屋の次に研究者が逃げ込んだ場所らしく、人数が多いからついでに手伝ってもらう事にした。
探索担当の部隊だけど、戦闘は終わっているし、これくらいはお願いしても大丈夫だろうから。
「あっ!」
「ん?」
「GUGIGIGI……!」
研究者を運び出すため、兵士さん達と部屋を出たら、施設の中央の方から声が聞こえ、さらに何かが割れた音。
そちらに目を向けてみると、どうやら誰も触れずそのままだった試験管を兵士さんの一人が倒してしまい、中からオーガが出てきたようだ。
オーガ自体は、まだ完全に復元されていないらしく、見覚えのある大きさではなかったけど、それでもオーガはオーガ。
筋骨隆々とした見た目は変わらないし、肌の色は赤みがかっているから当然爆発もするだろう。
しかも、タイミングの悪い事に、倒した兵士さんとは別の兵士さんは背を向けている状態……ガラスの音やオーガの声には気付いているようだけど、反応が遅れている。
その兵士さんの背中に向けてオーガが腕を振り上げ、試験管を倒した兵士さんが剣を抜いて防ごうと動く……襲われかけている兵士さんの方は、慌てて振り向こうとしているけど、どれも間に合いそうにない、このままじゃ……!
「ヴェンツェルさん! フィリーナ! 結界は任せて……っ!」
「おう!」
「わかったわ!」
オーガが出てきた場所よりも離れているのに、その場を見て瞬時に判断、動き出そうとしていた二人に声をかけ、結界を発動。
横からヴェンツェルさんが大剣を振り上げながら、オーガへと駆けて行き、フィリーナが魔法の準備をするのを確認。
オーガが振り下ろした腕は、兵士さんの壁になるよう発動していた結界に阻まれ、試験管を倒した方の兵士さんの剣が、オーガの肩口を斬り裂く!
「GIGI……! GIII!」
「魔力を頼りに狙いを定めて……行くわよ……ヴェンツェル様、後詰めはよろしくお願いします! ウインドファイル!」
「任せろ! ぬおぉ!」
「GIGI!」
「ぐぅっ!」
「……大丈夫そうかな……って……え!?」
「リク!?」
少し離れているけど、フィリーナが目を細めるのが見えた瞬間、ヴェンツェルさんに後の事を任せて魔法を発動。
弓を構えて弦を引き絞るような格好から、風の矢を放ったのだと思われる。
いつも使っていた風の刃と違って、緑がかった魔力の塊が細く鋭く放たれるのを見るに、相手を斬る事より矢を突き刺したり貫通させたりという威力に特化しているようだ。
さらに、フィリーナに応えてヴェンツェルさんが駆け寄る速度を増した……オーガは、肩口を斬られながらも今度は剣を持っている兵士に狙いを定めたらしく、そちらへと腕を伸ばし、体を回転させて弾き飛ばした!
……結界は間に合わなかったけど、咄嗟に剣を捨てて籠手を着けた両手で顔への直撃を避けるように防御していたようで、さすがのオーガと言わざるを得ない膂力で弾かれて、机に背中を打ち付けたようだけど、痛みはともかく怪我はなさそうと判断。
あとはフィリーナの魔法の矢が突き刺さり、ヴェンツェルさんが止めを刺すのに合わせて、爆発する前にオーガを結界で覆ってしまえば終了だな……と思った瞬間、急にフィリーナの放った魔法の矢が俺に向かって方向を変えた!
「ちょ!」
「ひっ!」
「危ない!」
慌てて自分の前に結界の壁を作り、フィリーナの矢を防ぐ。
俺のすぐ後ろで、研究者を運んでいた兵士さんは、いきなりの事に悲鳴を上げていた。
「せぇい!」
「GIGIGIIII!」
「リク殿!」
「あ……くっ、間に合わ……」
「任せるのだわー。全くリクはいつも準備が足らないのだわー、結界!」
「……エルサ!?」
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