第694話 同行者にフィネさん追加
フィネさんが持っている斧の事はともかくだ、フランクさんからの用はどうやら、フィネさんを連れて行って欲しいとの事らしい。
一応、コルネリウスさんと一緒に、こちらで調査をしていたりフランクさんの護衛も兼ねているようだったけど、大丈夫なんだろうか?
「んー、俺は大丈夫ですけど、フランクさんの方はいいんですか? 調査の事もありますし、護衛も……」
「そちらの方は問題ありません。調査の方もほとんど終わってしまっていますし、フィネが一人抜けたとて他の冒険者がいますからな。ノイッシュ殿が張り切っておられるますから。護衛の方も、フィネだけがというわけではございませんし、リク様のおかげでルジナウムは安全になりましたからな。もちろん、油断はいたしません」
「そうですか。それなら、いいんですかね? ――ヴェンツェルさんはどう思いますか?」
「まぁ、リク殿の知り合いなら構わんだろう。一応、作戦内容などを教えて動いてもらわなければならないが、佇まいを見るに、できる者のようだからな」
「あぁ、フィネさんは冒険者でもBランクですからね」
「ほぉ、それなら何も問題ないだろう。戦闘になっても問題ないだろうし、自分で状況の判断もできそうだ」
「はい、冒険者ではありますが、作戦行動の重要さは理解していますので、指示に従って動くと約束いたします」
Bランクと知らなくても、フィネさんを見たヴェンツェルさんは只者ではないと気付いていたようだ。
これが、コルネリウスさん相手だったら別だったんだろうけど……それはともかく、冒険者だと単独か少人数で動く事が多いため、兵士に混ざっての集団行動が苦手な人も多いらしいけど、フィネさんは違う。
フランクさんの配下で集団行動の経験は豊富そうだからね。
「それじゃ、フィネさんも一緒に行きましょう。あ、でもフランクさん、コルネリウスさんはどうしたんですか? フィネさんとは一緒にいるイメージなんですけど……」
「コルネリウスは、他の冒険者と一緒に行動させております。たまには、自分の身分が関係ない者達の中で過ごさせるのも良いでしょうからな。それに……我が息子ながら、リク様やヴェンツェル殿と行動を共にさせるのは不安ですから……」
「あぁ~……あはははは……えーと、それじゃフィネさん、よろしくお願いします」
「はっ! 粉骨砕身、務めさせていただきますので、なんなりとお申し付けください!」
そこまで固くならなくても……と思うけど、コルネリウスさんの事を苦笑で流したのと同じように、こちらも苦笑してとりあえずこのままでいいかと、握手だけしておいた。
フランクさんがいる部屋を出た後は、フィネさんを連れてソフィーと合流、一緒に来ていた兵士さん達に紹介しながら、冒険者ギルドの外に運ばれて積まれていた食料を持って、街の外へと向かう……皆、両手いっぱいに荷物を持っているからゆっくりだけど、食料が予想より多い気がする。
もしかしなくても、フランクさんが色を付けてくれたというか、多めに用意してくれたのかもしれないね、ありがたい。
ちなみにフィネさんは、ここ最近何度もルジナウムを出入りしている俺を見ていて、冒険者としても貴族の配下としても、俺について来れば成長に繋がるかもしれないと考えたらしい。
ソフィーと同じで、自分に厳しく向上心が有り余っているのかもしれない。
ただ、フランクさんに進言したはいいけど、丁度俺がいない時だったので、タイミングが悪かったと考えていたようだけど、今回食料のためにルジナウムへ俺が来て、さらにフランクさんが頼んでくれたので良かったとも言っていたね……ついて行く事を許可してくれてありがとうございますと、丁寧に頭を下げられた。
一応、フィネさんは今回の作戦だけの同行になっているけど、それが成長に繋がるかはわからないし、戦力が増えたと考えればこちらもありがたいわけで……感謝までされるとちょっと困ってしまうかな。
「何度……いえ、二度目ですけど、それでもやはり慣れません……」
「おそらく、慣れたら気持ちのいい移動手段なのでしょうが、何分経験がないもので……」
「軟弱な奴らだ。私はもう慣れたぞ? ほら、立っている事だって可能だ」
「……ヴェンツェルさん、危ないので動き回るのは止めて下さいね?」
荷物や人を乗せ、エルサが飛び上がっての移動中、微かに体を震わせている兵士さん達に、自分は慣れたと主張するためにわざわざ仁王立ちをするヴェンツェルさん。
結界があるし、もし万が一落ちたとしても大丈夫だけど、できるだけ危険な行動はしないで欲しい。
エルサの方は、荷物や人がいつもより多いからか、バランスを保つために移動は遅めだ。
さすがに重量が増えたら速度やバランスの調整が難しいらしい……十翼を出して全力で飛べば大丈夫なんだろうけどね。
「リクさん、おかえりなさい。……思っていたよりも荷物が多い気がするんだけど?」
「ははは、フランクさんにお願いしたら用意してくれたのはいいんだけど、多めに集めてくれたみたいで……」
「リク―、帰ってきたのはいいけど、私も手伝うようになっているのはどういう事?」
「フィリーナ、貴女も美味しい料理が食べたいのなら、ちゃんと手伝うのよ」
「ははは、なんだかマリーさんに似てるね」
「母さんは尊敬しているけど、そこまで強く出ているつもりはなかったんだけどね……気を付けるわ」
野営地に戻り、荷物を下ろしていると食料の受け取りに料理の準備をして待っていてくれたモニカさんから声をかけられる。
ついでに、手伝いに駆り出されたらしいフィリーナが文句を言っているようだけど、モニカさんに一蹴された……なんだか、獅子亭にいる時のマリーさんを見ているようだ、さすが母娘。
「あら、貴女はフィネさん? どうしたの?」
「今回の作戦に参加させて頂きたく、リク様にお願いして同行させて頂く事になりました」
「まぁ、経験のために、って事しいよ」
「そうなのね、わかったわ。それじゃ、こっちに来て手伝って。ここにいる全員分の料理を作るわよ?」
「はい! 参考させて頂きます!」
いやフィネさん……意気込みはいいんだけど、モニカさんを手伝っても参考になる事はないと思うよ?
料理に関してとかなら、確かに参考になるかもしれないけどね……。
「おぉ! 食べ物が美味い! 遠征に来てこれ程の者が食べられるのは、奇跡だ!」
「なんだか安心する味だ……村にいる母ちゃんを思い出すなぁ……」
「おかわり、おかわりはありませんか!?」
「リク様達が用意してくれたのだ、感謝して食べるのだ! あ、こら! 鍋ごとスープを飲み干そうとするんじゃない! おかわりはあるから、落ち着いて食べろ!」
「数日ぶりのまともな食事なんですから無理ですよ! ズズズ……はぐはぐ……ブフォ! ゴホッゴホッ!!」
「あ、お前汚いな! 口の中の物が飛び散っているじゃないか!」
「す、すまん……ゴホッ、ゴホッ!」
「だかた落ち着いて食べろと言っただろうが! せっかく用意して頂いた物なのだぞ!? 無駄にせず食べろ!」
一部の兵士さんに手伝ってもらい、モニカさんとフィリーナ、フィネさんで大量の料理を作った夕食……我先にとお腹を空かせた兵士さん達が寄ってたかって、鍋に群がっていた――。
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