第678話 予定を話し合ってルジナウムへ




「赤いエクスブロジオンオーガは、結界を張るか凍らせないと爆発するからね……凍らせても、解けたら同じだし」

「まぁ、緑のとは違って魔法を使わないとわかっているから、最悪の場合は外へおびき寄せて……だな。その際、鉱夫達にも協力して盛らないといけないだろうが、まぁ、フォルガットさんと話しておこう」

「うん、よろしく頼むよ」


 赤いエクスブロジオンオーガは、爆発に魔力を使うため、緑のとは違って魔法で攻撃をする事がない。

 そのため倒さないように距離を取っておびき寄せれば、鉱山の外まで引っ張れるし、そうすれば爆発しても衝撃が問題になる事はないだろう……鉱山の入り口付近は、鉱石を運び出したり資材を置いておくために、かなり広い場所があるからね。

 あそこなら、爆発しても衝撃が鉱山へ伝わるのも大分弱まるだろうし、人や建物にも被害はでそうにない。

 ……まぁ、爆発威力が強くなっているのなら問題だけど、あれはモリーツさんの研究場以外では、まだガラス管の外に出てなかったみたいだからね。

 研究の成果が出そう……というあたりで俺達が発見したからだと思うけど。


「それじゃ明日の朝出発して、夜には帰ってくるようにするよ。今回は王都まで行くわけじゃないから、戻って来れると思う。戻って来たら、冒険者ギルドに寄って報酬を受け取って、翌日の合流に備えるだね」

「あぁ、わかった。モニカ達には、その事は?」

「多分、フランクさんが話してくれていると思う。冒険者ギルド側には、あまり伝えない方がいいみたいだから、ノイッシュさんと一緒にいるうちには話せなかったよ」

「そうか。まぁ冒険者ギルドと国は敵対はしないが、組織は別扱いだから仕方がない。……モニカやユノ辺りは、一緒にと言いそうだが……」

「調査の進捗次第だけど、その時は連れて行くよ。別に、数が増えちゃいけないわけじゃないからね。フィリーナも参加する予定だから、問題ないと思うよ」

「そうか。それでは二人が参加したいと言い出して、久々に会える事を楽しみにしておこう」

「そうだね」


 ソフィーと明日の予定を話す。

 鉱山での調査もひと段落したから、今日はいつもより少しだけのんびりとした気分。

 自分で淹れたお茶をソフィーと飲みながら、緩やかな時間を過ごす……いつもと時間的にはあまり変わらないと思うけど、気分の問題だね。


「……埃っぽいのだわ! 早くお風呂に入れるのだわー!」


 のんびりしていたというのに、エルサが騒ぎ出してまったり時間が終了。

 鉱山に入って、モフモフな毛に埃が付いている気がして気持ち悪いらしいけど、色々歩きまわって俺やソフィーも同じくだから、仕方ないか。

 俺も、エルサのモフモフが損なわれるのは嫌だしね……世話のかかるドラゴンだ……なんて事は、怒られそうだから考えるだけにしておく。

 こちらを見てジト目をしているから、もしかしたら契約を通してエルサに伝わっているかもしれないけど、それは無視。

 苦笑するソフィーを見送って、エルサをお風呂に入れて綺麗にした後、就寝した――。



――――――――――――――



 翌日、朝食を頂いた後、ブハギムノングの事はソフィーに任せて、エルサに乗って出発。

 ルジナウムに到着したのは、まだ昼というには早い時間だから……お昼を食べるまで時間があるし、先に冒険者ギルドに行って、話を聞こう。

 モニカさん達も、宿を出ているだろう頃合いだし、そちらに行けば会えるかもしれないからね。

 ……既に調査に出ている可能性もあるけど、その時はその時で、フランクさんと話をすればいい。


「すみませーん」

「……あぁ、リク様! ようこそお越し下さいました!」


 冒険者ギルドで、朝の冒険者が依頼を受ける混雑時間をズレているためか、暇そうにしている受付の人に声をかける。

 俺を見て、慌てて姿勢を正していたけど……そこまで構えなくてもいいのになぁ。


「えーっと、フランクさんはいますか?」

「はい、ギルドマスターやモニカさんと一緒に、奥の部屋で話し合いをしていますよ。ご案内します」

「お願いします」


 フランクさんはいるだろうなぁ……くらいで尋ねたけど、どうやらノイッシュさんやモニカさんも揃っているみたいだ。

 話し合いをしているという事は、調査に何か進展があったのかな? それとも、逆に進展がなさ過ぎでどうしようか考えているとか?

 とにかく、部屋に行って聞いてみればわかるか。


「失礼します。リク様がお越しになられたので、お連れ致しました」

「おぉ、リク様。ようこそ!」

「リクさん!」

「リク様か、丁度いい所に来た、と言うべきか」


 受付の人に案内されたのは、いつものフランクさんとノイッシュさんが使っている部屋ではなく、会議室のように大きめの机に、皆が座れるように椅子が配置された部屋だった。

 俺が入って来たとわかると、皆がこちらを向いて歓迎ムードになったけど……一瞬だけ、深刻そうな悩むような雰囲気だったのはなんだったんだろう?

 こちらを向く時には、霧散していたけど。


「とりあえず、ブハギムノングの方は落ち着きました。もう魔物が出ないとまでは言いきれませんが、以前のように安全に近い状態になったと思います」

「さすがリク様ですな。他の冒険者では、ここまで迅速に対処できなかったでしょう。我が領地の事、感謝いたします」


 とりあえず、ルジナウムの事を聞く前にブハギムノングでの事を簡単に報告する。

 フランクさんが治めている領地だからと、わざわざ立ち上がって頭を下げ、お礼を言われた。

 少し仰々しい気がしたけど、まぁ、それだけの事はやれたんだと考えておこう。


「それでその……こちらの、ルジナウムの調査の方は何か進展がありましたか?」

「そうですな、まずはお座り下さい。お話しておきたい事……というより見せておきたい物がございますので」

「はい」

「リクさんに意見を聞きたかったの。まぁ、すぐにわかるものでもないと思うけど、繋がっていると思われる、ブハギムノングとルジナウムでの件を、両方行き来しているのはリクさんだからね」

「俺に意見を? 確かに両方を行き来して、一応全体は把握しているけど……参考になるかわからないよ? ……えーと、それでもしかして、話したい事と言うのは、その机に置かれている球ですか?」

「そうです」


 フランクさんに促されて、空いていたモニカさんの隣に座ると、すぐに声をかけて来てくれる。

 両方の街の事を報告したりで、詳細を知っているけど……俺の知識で参考になる意見が出るかどうか……。

 そういえば、エアラハールさんとユノがいないけど、もしかしなくても街を回っているんだろうなぁ……二人共、堅苦しい会議の場とか嫌いそうだし。

 二人の事は置いておいて、座る段階で気付いた、机の真ん中に置いて皆から見られるようにしてある球の事だ。


 球は、完全な球体とまでは言えないために、転がったりはしないが、それでもこの世界で見るには珍しい球体だった……確か、球体を作るのって、結構技術がいるんじゃなかったっけ? よくわからないけど。

 ともかく、その球はそれなりの大きさで、サッカーボールよりは小さいけど、ソフトボールよりは大きいという中途半端な大きさで、片手は難しくても両手なら持てるくらいだ。

 ガラスのような光沢で、ひび割れ模様で色は白……結構な大きさだけど、これって……。



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