第672話 クォンツァイタは脆い鉱石
「そうだリク、昨日言われていた事だが……」
「昨日……クォンツァイタの事ですか?」
「あぁ。今日早速、クズ鉱石の捨て場からクォンツァイタを探させたんだが……予想以上に数が少なそうだ」
「そうなんですか? 量はとれると聞いていたので、結構な数が残っていると考えていたんですが」
難しい表情のフォルガットさんに、首を傾げる。
クズ鉱石とはいえ、採掘して出て来た物は他の売れる鉱石とは別にして、捨て場と呼ばれる場所に置かれているらしいけど、多くあるらしいから、そこに行けばクォンツァイタが有り余っていると思っていた。
けど、フォルガットさんの言い方と表情から察するに、当初の想像よりも少ないらしい……実はそんなに産出されていなかった……とかかな?
「クォンツァイタ自体は数が多いんだが、いかんせん脆くてな。それが、宝石にも使えない理由でもあるんだが……クズ鉱石の宿命というべきか、今までは意味をなさない他の土や石と同じように扱いが雑だったんだ。そのせいで、捨て場にあったクォンツァイタは割れていたり削れていたりと、とてもじゃないが使えないだろうというのが多かった」
「……元々、価値のなかった物なので、仕方ないんでしようね」
アルネから聞いた話では、最初からひび割れがあるような鉱石なため、ちょっとした衝撃で割れたりしてしまうんだろう。
そのために、宝石として綺麗にカットしたり加工する事もできないから、見た目は綺麗な鉱石であっても、これまで価値を見出せなかった。
だから、邪魔なものとしてぞんざいな扱いで捨て場に放り投げられていたんだろうけど、そのために使い物にならなくなったのが多くて、今更使おうと思っても量少なくなってしまうのか……。
それだったら、新しく採掘されるのを待った方がいいのかな?
「あ、でも……多少割れていても使えるのかもしれません……」
目的はクォンツァイタそのものを加工する事じゃなく、魔力を蓄積させる事なんだから、多少割れて小さくなっても使えるかも?
そう思って聞いたんだけど、フォルガットさんは難しい顔を崩さない。
「俺もそうは思ったんだが、割れている物のほとんどが、小石……小指の先程度の大きさくらいにまでなっていたそうだ。見に行った奴に聞いた限りでは、不純物が混ざっている事は少なそうだったんだが、さすがにその程度の大きさだとな……」
小指の先程度というと、数センチあるかどうかくらいだろうか?
アルネの話を聞く限り、大きさによって蓄積できる魔力量が違うようにも思うから、そんなに小さいと必要な魔力量を蓄積できず、役立たずになる可能性が高そうだね。
「だがまぁ、あまり大きくはないが採掘を再開させた場所からもすでに、クォンツァイタが掘り出されているのが確認されているようだ。入り口に近い場所で、既に粗方採取されているから大きく価値の高そうな物は掘り出せないようだが、とりあえずは数日で体裁を整えるくらいの量は用意できそうだ」
「そうですか……それは良かった」
「だがリク、アルネの欲しがっていたクォンツァイタはどうするのだ? 数は少なくてもできるだけ大きい物を、という事だったのだろう? だが、今の話では大きいクォンツァイタは……」
「そういえばそうだね。……どうしようかな……大きくなくても、文句は言われないだろうけど……」
とりあえず、新しく採掘したらすぐに量が用意できるらしく、フォルガットさんの話を聞いてほっとする。
だけど、ソフィーからの指摘でそう言えばと思い出した……アルネはできるだけ大きい物と言っていたし、魔力関係の研究をするには蓄積量が多そうな方がいいんだろう。
あくまでできればなので、小さめでも文句は言われないだろうけど、研究をするうえでどうなるか俺には判断できない。
どうしようかな……ちょっと無理をお願いする事になるけど、鉱夫さんに頼んで、奥の大きなクォンツァイタが出て来そうな場所で採掘をしてもらう? もちろん、俺やソフィーがエクスブロジオンオーガが邪魔しないようにするという条件で。
でも、鉱夫さん達にはそれぞれ担当があるだろうし、採掘するには計画的にやらなきゃいけないからなぁ……無計画に掘ったりしたら、山そのものが崩れて危なかったりもするからね。
「うーん……どうしようか……やっぱり、小さいのでもいいから、持って帰る事にしようかな?」
「ふむ、研究がどうなるかわからんが、ないよりはマシだろう」
「あー、安心してくれ、リク、ソフィー。数は少なかったんだがな? それでも大きめのクォンツァイタを見つける事はできた。不純物が混じっている物もあったが、それなりの大きさだ」
「本当ですか!? ……良かった、これでアルネにもいい報告ができる」
アルネだけじゃなく、姉さんにもだけどね……クォンツァイタを使ってやろうとしている事は、姉さんが一番望んでいるんだから。
捨て場で見つけてきた、大きめのクォンツァイタがあると教えてくれたフォルガットさんは、いったん奥へと向かってすぐに戻ってきた。
両手には、風呂敷に包まれている物がそれぞれ二つずつ、計四つ持っていた。
「こいつだ」
「へぇ~、これがクォンツァイタなんですね……」
「確かに綺麗だな、これが宝石に使えないのなら、掘り出しても徒労という事か」
持って来た四つの包まれたクォンツァイタを、テーブルにゆっくりと置くフォルガットさん、衝撃を与えないように気を使って見えるのは、割れたりしないようにだろう。
テーブルのクォンツァイタを包みから出してみると、紫に近いピンクや白いガラス光沢のようで綺麗な鉱石が現れた。
大きさは……ソフトボールくらいで予想よりも大きく、ソフィーが感嘆の息を漏らしているように、ひび割れている鉱石は、それが逆に美しさを醸し出しているようで、脆いと聞いているからこその儚さのような物が感じられた……ような気がする。
美的センスにあまり自信ない俺だけど、クォンツァイタは確かに綺麗な鉱石で、宝石にできないと思ったのは本当だ。
「ん? ひび割れがあるから、奥まではっきり見えるわけじゃないけど、これだけ何か違う物が混じっているような……?」
「それが、クォンツァイタに混じっている不純物……らしいな。俺も他のクォンツァイタと見比べて、そう判断したが……そもそも白いクォンツァイタは少し珍しいらしい。だから、不純物があっても一応大きさも十分だろうと持ってきた」
「これが不純物かぁ……」
四つあるうちの一つで白いクォンツァイタだけ、よく見てみると内部に黒い塊が見えた。
確か、魔力蓄積によって段階的に色が変わるって言ってたっけ……ピンクだと多少なりとも魔力を蓄積している状態で、黄色になっていたら満タン状態、白の場合は一切魔力を蓄積していないだったはずだ。
黄色はともかく、ピンクのクォンツァイタがほとんどで魔力を蓄積させている事が多いという事は、もしかして鉱山内で魔力探査を使えないのはこれのせいなのかもね……。
それはともかく、白いクォンツァイタにだけ不純物がというのは、少し気になるような……。
俺の単なる気のせいの可能性もあるけど……とにかく持って来てくれたフォルガットさんには感謝しないとね――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます