第641話 鉱夫組合に勢揃い
「リク様、街を管理する者の一人として、感謝を。そして、よろしくお願いします」
「はい、任せて下さい」
ルジナウムでの事と、ブハギムノングでの事を話し終え、詰所を出る。
まだ鉱山内には、モリーツさんが復元させて改良した赤いエクスブロジオンオーガがいるだろうし、通常の緑の肌をしたエクスブロジオンオーガだっているかもしれない。
冒険者ギルドに改めて依頼をするという事で、ガッケルさんから討伐を頼まれて、話は終わった。
緑の方なら、なんとか鉱夫さん達で対処できるだろうけど、赤い方は結界か全身を完全に凍らせないといけないため、対処は難しい。
だから、残ったエクスブロジオンオーガは鉱山内を探索して、俺とソフィーが討伐するとなった。
復元して改良していたモリーツさんがいなくなって、もう増えないだろうからなんとかなるだろう。
ちなみに、なぜ通常の緑肌のエクスブロジオンオーガもいるかという部分には、実験する中で何もせずに復元をする必要があったからだと思っている。
単純に復元させる事ができるのかどうか、とかを試していたんだと思う。
ともあれ今日のところは宿に戻って、明日また冒険者ギルドで新しく討伐依頼を受ける事にする。
ベルンタさんへの挨拶やお礼も、その時だね。
鉱夫組合にも行って、話もしておかないとなぁ……。
「やっぱり、リクに洗ってもらうのは気持ちいいのだわ~」
「そりゃ良かった」
ソフィーと夕食を食べ、宿へと戻った後はエルサをお風呂で洗う。
ルジナウムで寝ている間に、返り血なんかは綺麗にしてもらっていたようだけど、毛が絡まったりしていたから、ゆっくり解すようにして洗ってあげた。
満足そうなエルサにドライヤーもどきの魔法を使い、こてんと横に倒れて寝るのを見て、なんとなく日常が戻ってきたような感覚。
これも、お風呂に入れる時はいつもやっているから、すっかり習慣になったなぁ。
「しかし、あれだけ寝てたのに、よくすぐ寝られるなぁ……と言っている俺も、眠くなって来たんだけど。ふわぁ~……」
エルサをベッドに運んで、あくびをしながら俺も隣へ潜り込んで、目と閉じる。
二日間丸々寝ていたとしても、いつもの習慣で夜は眠くなるんだろうね。
変に目がさえて寝られなくなるよりはいいだろうと、そのまま眠気に身を任せた――。
―――――――――――――――
翌日、支度を整えて朝食を頂いた後は、説明のためにソフィーと鉱夫組合を目指す。
冒険者ギルドにも行かなきゃいけないけど、宿からは組合の方が近いから、順番にね。
「はっ、リク様! お待ちしておりました!」
「え、えぇ……どうも……」
鉱夫組合の中に入ると、何度か会った女性がいて、すぐに奥へと通された。
前に、フォルガットさん達と地図を見て、空白地帯の話をした部屋だね。
「あれ、ガッケルさん。ベルンタさんも? ――あ、フォルガットさん」
「リク様、お待ちしておりました。昨日、鉱夫組合へ話にと言われていたので、簡単に説明をさせて頂いておりました。冒険者ギルドマスターも、お呼びしておきました」
「待っておったぞ。まったく、いくら急いでいるからと言っても、まともに話もせずに行って数日音沙汰なしとは……まぁ、おおよその事情は聞いたから、仕方ないとわかっておるがの?」
「おぉ、リク。待っていたぞ。二つの街を一度に救うたぁ、さすが俺に勝っただけはあるな!」
「組合長、英雄様ですよー! 組合長に勝つとか関係なく、凄い人なんですよー!」
部屋に入ると、フォルガットさんだけでなくガッケルさんやベルンタさんが、一つのテーブルを囲んで座っていた。
昨日、詰所で話した時に俺がフォルガットさん達とも話さないと……と言ったために、気を聞かせて集めてくれたみたいだね。
ルジナウムでの事も説明してくれたみたいで、ありがたい。
案内してくれた女性が、以前と変わらず興奮している様子に苦笑しながら、俺やソフィーもフォルガットさん達と同じテーブルにつき、説明と話し合いが始まる。
「ふむ……ルジナウムの方でそんな事がなぁ。何かがあって、住民がこちらに来るとは聞いたが、すぐに撤回されたしな。大した事ないのかと思っていた」
「そんなわけないじゃろ……領主自らの住民避難と、受け入れのための指示じゃぞ? 大きな問題が起こらないとそんな事はあり得んからの。リクが急いでいた事や、ソフィーから聞いた話。さらにすぐに次の伝令が来て撤回されたのじゃから、リクが何かしたのだとわかっておったがの」
「お二人には、住民の受け入れをするため、手伝ってもらっていましたから。……さすがに、避難して来る者達全てを宿に入れられるわけではありません。場合によっては、鉱夫や私の部下を付けて、鉱山内にいてもらう事も考えていました。外で寝泊まりするよりかはマシでしょうし、エクスブロジオンオーガの脅威は、かなり低くなったとソフィー殿から聞いていましたからな」
ルジナウムに魔物が押し要せようとしていて、それと戦っていたために戻るのが遅くなった事を、改めて説明。
その時、ガッケルさんが説明していなかった魔物の種類とかも話したら、フォルガットさんやベルンタさんは驚いていた。
ベルンタさんは冒険者ギルドのマスターだから、当然キュクロップスやキマイラを知っていたけど、フォルガットさんも知っているとは……有名な魔物なのかとも思ったけど、組合長にまでなるとそれくらいの知識がないといけないらしい。
多分、ベルンタさんが教えていたんだろうけどね。
避難民の受け入れに関しては、鉱山を使うのも考えられていたようだ。
確かに、モリーツさんがいなくなったから、新しいエクスブロジオンオーガが作られる事はないし、数も減っている。
元々入り口付近にはほとんどいなかったから、あまり奥まで行かなければ雨露も防げるから外よりマシなんだろう。
……ちょっと埃っぽくて湿っぽいけどね。
住んでいた街を追われて来た人達を、外で寝させるわけにもいかないからね。
エクスブロジオンオーガと絶対遭遇しないとは言い切れないから、ブハギムノング側としても、苦渋の選択だったんだろうけど。
鉱夫さんや兵士さん達がいれば、もしエクスブロジオンオーガが来ても、追い払う……は難しくとも避難民に被害が及ぶような事は避けられるだろうし。
なんにしても、この街の人達や避難してきた人達が困る事がなかったようで、何よりだ。
頑張った甲斐があったなぁ。
「それにしてもだ……ベルンタ爺さん、モリーツの事だけじゃなく、イオスもだという事は……?」
「そうじゃの。冒険者には当然紛れ込んでおるじゃろう。幸い、この街にはほぼいない状態じゃが、他の街にはいるじゃろうの。そして、場合によったら兵士にも……」
「そうですね……自分の部下を疑う事はしたくはありませんが、可能性はあるでしょう。まぁ、リク様やソフィー殿が聞いた話では、この街にはもうリク様達があった者達しか、いなかったようですが……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます