第429話 ガラスを掘り出して調べたい



「地面を掘り返してみましょう。リクさんが埋めたガラスを見て、関係があるのか見てみたいわ」

「そうね。それが一番ね。リクの事だから、信じられないくらい深く埋めたんでしょうし……私達じゃ掘り返せないと思うわ。リク、お願いね?」

「えっと……やらなきゃ駄目?」

「「駄目」」


 モニカさんとフィリーナの意見で、俺が地面を掘り返してガラスを掘り出す事になった。

 それにしても、フィリーナは俺の事をよく見てる、と言えるのかな?

 確かにあの時、ガラスを埋めた穴は、深過ぎて底が見えなかった。

 農場にするという話があったから、耕したりしてる時に発見されないようにだったんだけどね。


 二人の提案に、せっかく埋めたんだから、掘り返すのはなぁ……と思って一応聞いてみるけど、同時に拒否された。

 むぅ……マギアプソプションとの戦闘といい、こき使われてるような気がする。

 まぁ、魔力溜まりの原因は俺だし、そのせいでマギアプソプションが集まって来るし、ガラスを埋めたのも俺で……全部俺が原因というかきっかけだから、仕方ないのかもしれないけどね。

 過去の自分の尻ぬぐいをしてる気分だね。

 いや、やり過ぎた俺が悪いんだけどね……。


「はぁ……仕方ないか。あ、でも。ガラスを掘り返すのはいいんだけど、魔力溜まりで魔法を使っても大丈夫かな?」

「そうねぇ……その場所は、魔力溜まりの中にあるの?」

「んーと……魔力溜まりの中どころか、中心っぽいね。マギアプソプションと戦った場所のすぐそばだったと思う」


 溜め息一つ、地面を掘り返す事にする。

 けど、掘り返すと言っても、道具を使って掘り返すわけじゃなく、あの時は魔法を使った。

 通常では掘れないくらいの深さにしたから、魔法を使わずに掘るなんて事はしたくない……どれだけ時間と労力がかかってしまうのか。

 でも、魔力溜まりの中では魔法禁止だ。

 変に威力が高すぎたり、弱すぎたりしちゃいけないからね。


 フィリーナの言葉に、周囲を見渡して位置を確認。

 見晴らしのいい場所で特に目印はなく、畑になってる部分も多いため、本当かどうかはわからないけど、感覚としては魔力溜まりの中心部分のように思えた。

 考えながら、フィリーナに場所の説明をすると、ソフィーやモニカさんも頷いていた。

 良かった、場所は間違えてなかったらしい。


「魔力溜まりの中心に、リクが埋めたガラス……増々、何か関係があるように思えるわね。でもそうね……魔力溜まり、それも中心でなんてリクが魔法を使ったら、暴発する可能性すらあるわ。リクの魔法が暴発……考えたくはないわね」

「ヘルサルが消滅する事すら、考えられるな……」

「最悪、ここら一帯焼け野原かしら?」

「いや、そこまでは……さすがに……」


 フィリーナの言う通り、魔力溜まりの中心になっている場所にガラスが埋まっていると考えると、何か関係があるんじゃないかと思えてくるね。

 それはそうと、俺の魔法が暴発……どうなるのかはわからないけど、危険な事は間違いないと思う。

 でもさすがに、ソフィーやモニカさんが想像してるような事はないはずだ……ない、よね?

 ちょっと自信がないけど、とりあえず否定はしておく。


「魔力溜まりで魔法を使うと危険ならだわ、魔力溜まりから離れて使えばいいのだわ」

「エルサ? 大丈夫なのか?」


 魔力溜まりがあるせいで、魔法が使えず地面を掘り返せない。

 どうした物かと考えていると、頭にくっ付いてぐったりしてたエルサが声を出した。

 さっきより、かなり気分が良くなったような声だけど、大丈夫なのだろうか?


「大分楽になったのだわ。リクの魔法が暴発なんてしたら、私まで巻き込まれかねないのだわ。それは避けるのだわ」

「けど、離れて使うと言ってもなぁ……?」

「簡単なのだわ。魔法は魔力を使って発動した時点で、魔法として完成しているのだわ。離れて目標に向かう魔法を使えば、魔力溜まりの影響を受けない……かもしれないのだわ」

「かもしれないなんだ……」

「やった事がないのだから、保証はできないのだわ。けど、魔力溜まりの中で魔法を使うより、安全なのは間違いないのだわ」


 魔法は発動した時点で完成している……か。

 それなら、例えば魔力溜まりから離れて火の玉を出したとして、それを魔力溜まりの範囲内へ投げ込んでも、そのまま爆発するかもしれないという事か。

 エルサも絶対の自信があるわけではなさそうだけど、その案は現状では一番の名案のように思う。

 さすがに、本当に爆発させたりはしないけど……せっかくの畑が駄目になるしね。


「確かに、離れていれば魔力溜まりの影響を受ける可能性は、かなり下がるわね」

「けど、離れた場所からどうやって地面を掘ったりするの? 爆発させたりしたら、もしもの事があるから……駄目よ?」


 フィリーナがエルサの案を肯定し、モニカさんがどうするのか首を傾げる。

 俺と同じように爆発させる事を考えたらしいけど、それは心の中で却下したから大丈夫です。


「リク、前はどうやって穴を掘ったのだわ?」

「前は……確か、土を動かすような魔法のイメージで、穴を掘るというより土が移動して穴ができると言う感じだったかな?」


 頭の上から問いかけるエルサに、前回使った魔法のイメージを思い出しながら、説明する。

 ロータの父親……ヌートさんのお墓を作った時に近いかな。

 ガラスを埋める時に、土を動かすイメージをしていたから、あの時はスムーズにできた。

 まぁ、近寄ってきてた野盗を巻き込むために、爆発もさせたけどね。


「土を動かす……という事は、土へ魔力を通したのだわ?」

「確かあの時は、地面に触れながら魔法を使ったな。そうして、触れている場所から魔法で土を動かしたイメージだ」

「……だったら、ちょっと難しいかもしれないのだわ」

「どうして?」

「魔力溜まりから離れた場所だわ。例えば、ここから魔法を使うとしてだわ? 土からリクの魔法が伝わって、直線で進んだとしても……ここから全部穴になってしまうのだわ」

「それは……さすがに……」

「だね……」


 土から土へ魔法が伝わるという事なんだけど、目標の場所だけ穴を開けるのではなく、使った場所から穴ができる事になる……という事だろう。

 多分、魔法が伝わる事でそうなってしまうんだろうけど、だったらイメージを強化して離れた場所に穴を開けるようにすればいいんじゃ……と考えて、頭の中で否定した。

 距離があるし、何処に穴を開ければいいのか、ここからはっきりと目で見えていないから、イメージしづらいうえ、そこまで細かい魔法を俺が使えるとは思えない。

 ただでさえ、イメージ不足や魔力が多いやらで、失敗が多いのに……。


「穴だらけになったら、折角畑が作られてるのに、台無しになるわ。一部だけとはいえ、それでもね……」


 フィリーナが、魔力溜まりの中心部の方へ視線を向けながら言う。

 今いる所は畑の間にある、人が通るための道だけど、当然穴を開ける場所まではいくつかの畑がある。

 そもそも、マギアプソプションと戦った場所も、畑だしね。

 畑がいくつか潰れて、ならしていた道もなくなってしまう。


 区画の整理とかもされてるようだし、俺がそれを壊すのは……ヤンさんに怒られそうだ。

 ……クラウスさんは、大丈夫かもしれないけど、トニさんも怖い。

 この案は却下だね……どうしたものか……。



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