第421話 赤信号さんの乱入
乱入して来たそばから叫んだのは、赤信号さん……もといルギネさんだ。
その後ろには、他の信号……リリーフラワーのメンバーが揃ってる。
「えっと……?」
「KISIIIII!!」
「はい、ちょっとうるさいよー?」
「KISIIIAAAA!!」
剣を振るのを止めて、走り込んで来たリリーフラワーの人達を見る。
俺が止まった事をチャンスと見たのか、後ろから一体のマギアプソプションが体と顔を大きく振って、硬質化した角で攻撃して来たけど、右に体をずらして避け、振り向きざまに剣で体を両断。
断末魔を上げて動かなくなったマギアプソプションを余所に、もう一度ルギネさん達の方へ視線を向けた。
「……強い魔物ではないが、それでも軽々と……さすがはAランクという所だな」
「英雄というのは本当なのねぇ。若いのに凄いわぁ」
「ふん、それでもお姉さまの方が凄いんです! ……夜の方も……」
「マギアプソプションが焦げた肉のように……気持ち悪いから違うわね」
俺がマギアプソプションをあっさり倒した事で、足を止めて驚愕している様子のルギネさん達。
とりあえず、ルギネさんとの夜の方なんて聞いてないからね、黄信号……グリンデさん。
「獲物が……とか言ってたけど、どうしてここに?」
「はっ! ……私達は、冒険者ギルドから依頼を受けて、マギアプソプションの討伐に来たのだ! 私達が討伐する魔物なのだから、横取りはよしてもらおうか!」
「……横取りって……」
「おい、ルギネ。何を言っている。私達も同じく討伐の依頼を受けているんだ。横取りなんかではないぞ?」
俺が言葉をかけると、自分達がなんのためにここまで来たのかを思い出したのか、ハッとなったルギネさんが表情を引き締めて、依頼を受けた事を教えてくれた。
うーん、そうは言っても……俺達も依頼を受けてるし、ヤンさんから見つけたら討伐してくれって言われてるしなぁ……。
なんて考えていたら、ルギネさん達に気付いたソフィーが、フィリーナの所からこちらへ来て説明してくれた。
フィリーナやモニカさんは、ルギネさん達の事は気にせず、地面を見て土の状態を確認しているようだ。
……ユノ、剣を地面に突き刺して遊んでたら、剣が駄目になるかもしれないから、止めた方がいいと思うよ?
「むぅ……しかし、私達も依頼を受けている。それを全て倒されたとあれば、リリーフラワーの名折れ! ……もうずいぶんと討伐したようだし、ここは私達に任せてもらおうか……?」
「えっと、まぁ……それはいいんだけど……後ろの人達は嫌そうですよ?」
俺が斬って倒したマギアプソプションの残骸を見つつ、ルギネさんがここからは任せてくれと言ってる。
俺だって、巨大ミミズの気持ち悪いマギアプソプションを相手にするのは遠慮したいくらいだから、任せられるなら任せたい。
モニカさんやソフィーも俺にお任せみたいだし……。
ルギネさんの顔は、マギアプソプションの気持ち悪さを気にせずやる気に満ちてる。
けれども、その後ろにいる他の信号機……リリーフラワーのメンバーは、嫌そうな表情をしてる。
「……おい、お前達?」
「ルギネぇ……やっぱり気持ち悪いわよぉ?」
「ひぇ……半分になってもピクピクしてます……これ、死んでるんですよね?」
「触りたくないから、近づかない。これなら焦げた肉を齧っていた方がマシ」
「あぁ、ちなみにミーム。お前は魔法を使って戦うが……詳細は省くが、今ここは魔法使用が禁止の状態だ。暴発したりするのが怖いなら、止めておいた方が無難だな」
「……ルギネ、私やる事がなくなった」
「くぅ……」
やる気満々だったルギネさんが後ろを振り返り、他のメンバーへ声をかけると、皆やる気のなさそうな声でルギネさんを止める。
ルギネさん以外やる気のないメンバー……これでよく依頼を受けたなぁと思うけど、多分リーダーであるルギネさんが無理矢理受けたんだろうな。
そういう所は、押しが強そうだし。
さらにソフィーが、やる気のないミームさんに追い打ちをかけるようにやる気を削ぐ忠告。
フィリーナの言う事が正しければ、今ここで魔法を使うと、思ったよりも威力が出過ぎたり弱かったりと、難しい状態らしいから、確かにミームさんはやる事がないか……というかやっぱり、ミームさんは魔法を使う人なんだね。
あと、グリンデさん……短剣で俺が斬ったマギアプソプションの下半身を、ツンツンするのは止めよう。
体が半分に斬られても、しばらくピクピクと脈動してるけど、気持ち悪いなら近付かなきゃいいのに……怖いもの知らずなのかな?
ユノと気が合いそうだ……そっちの趣味にはさせたくないけど。
魔物の近くにいるというのに、気持ち悪がって近付かなかったり、やる気を見せないメンバーにがっくりしたルギネさん。
その気持ちは、よくわかる。
さっき、モニカさんやソフィーに送り出された俺と一緒だからなぁ……。
まぁ、一応こちらは武器を出して戦う準備をして、討ち漏らしたマギアプソプションくらいは相手にしようとしてたから、まだマシか。
「お前達! それでも冒険者か! 相手が気持ち悪かろうと、依頼を受けた討伐対象の魔物である限り、戦うんだ!」
「そうは言われてもねぇ……ほら、リクさんを見ると、戦いたくなくなるわよぉ? ほら、あの革の鎧……」
「うわぁ……変な色の液体が付いてます……」
「焦げた肉より変な色……あれは嫌」
「うっ……!」
「あははは……これは仕方ないですよ……」
「リク……少し匂うか?」
メンバーを奮起させるため、叱咤するルギネさんだけど、アンリさん達は俺の来ている革の鎧を示して、嫌そうな顔。
女性に嫌がられると言うのは、精神的にちょっと苦しいけど、今の俺の状態はそうなっても仕方ない。
マギアプソプションは体が柔らかく、軽々と斬り裂けるのはいいんだけど、両断する時にどうしても血のような物をまき散らす。
それを返り血のように、全て避け切る事もできずに見に付けてる鎧に付着したってわけ。
けど、俺も気持ち悪いので、顔なんかの、何も見に付けていない部分には付かないように気を付けてる。
だって……マギアプソプションの血って、緑色なんだ……。
俺を改めて見たルギネさんは、鎧に付着した緑色の液体を見て、さすがにうろたえた。
まぁ、男性のような振る舞いをしていても、根は女性……こんな気持ち悪い液体を浴びたりはしたくないよね。
とりあえず、俺に任せてただけのソフィーは、後で文句の一つでも言っておこうと思う。
……マギアプソプションの血って、変な匂いがするんだなぁ。
「えぇい、もういい! 私だけでもマギアプソプションを討伐するぞ!」
「あ、ルギネ!」
「お姉さま!?」
「私は役立たず。離れて焦げた肉を齧る……」
気持ちの悪い液体を見て、うろたえていたルギネさんだけど、すぐに気を取り直して、一人でマギアプソプションの群れへと駆けて行った。
俺が数体倒して、少し数は減ってるとは言え、大丈夫かなぁ?
アンリさんとグリンデさんは、止めようと叫ぶが、ルギネさんを追いかけたりはしない……うん、リリーフラワーはそう言う趣味の集まりでも、結束が固いとは言えない……のかな?
ミームさんは、フィリーナ達の方へ行って一緒に地面を見ながら、本当に焦げた肉のような干し肉を出して、齧り始めたし……マイペースだなぁ……。
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