第389話 レナとエルフへの興味
「パレードの後の事はリクも知ってるでしょ? 私達も街に出られないから、ほとんどここにいるか、宿にいるかしかできないわ」
「エルフで目立つからなぁ。宿に飽きたらここへ来て、陛下の暇潰し相手になるくらいだな。もちろん、ここへ来る時は人目の避けてだがな」
街を普通に歩けないのなら、そうなるのも仕方ないか。
姉さんの暇潰し相手に……というのは、予想通りではあったけど。
頼めば俺達と同じように、馬車に乗って王都の外へ出る事もできただろうけど、外に出たところで何をするんだ……という話でもあるしね。
目的がないと、頼んだりはしないか。
休養という意味では良かったのかもしれないけど、やる事がないから退屈だったのだろうというのは、話すフィリーナ達のうんざりしたような顔を見れば、よくわかる。
姉さんの暇潰し相手が……とかじゃないよね?
「だから、今度何処かへ行く時は、私達もついて行くからね?」
「うん、それは大丈夫。まだ帰って来たばかりで、何も決まってないけど……今度王都の外へ行く時は、ちゃんと連れて行くよ」
フィリーナの言葉に、しっかり頷いて約束する。
何もばければ、数日はのんびりする気でいる、ヴェンツェルさんの師匠さんとの事もあるしね。
ともかく、外へ行く事があったらちゃんと連れて行こう。
街にも出れない、する事と言えば姉さんの暇潰し……というくらいじゃ、さすがにかわいそうだしなぁ。
「リク様、お話してもよろしいですか?」
「ん? うん、大丈夫だよ」
フィリーナ達と話していると、ヴェンツェルさんが来てから少しおとなしくなっていたレナが、ようやく気を取り直したようで、俺を見上げながら聞いてくる。
筋骨隆々のオジサンとか、子供にはあまり好かれないよね。
レナが俺に話し掛けた事をきっかけに、メイさんも張り付いていた天井から降りて来た。
ヴェンツェルさんは警戒する相手じゃないから、普通にしてて欲しかった……。
メイさんのお尻にくっ付いていたエルサは、何故かそのままだ。
柔らかくて気持ちいいんだろうか……なんて少々邪な考えが沸いて来るが、エルサの考える事だしな、特に意味はなさそうだ。
メイさんの方も気にしていないようだし、そのままにしておこう。
「えっと……フィリーナ様と、アルネ様でしたっけ?」
「えぇ、そうですよ。レナーテ様。あ、私に様は付けなくてもいいですよ、大層な身分でもありませんので」
「俺も同じくです。レナーテ様」
「あ……フィリーナさんと、アルネさんですね。私も、レナと呼んで下さい。エルフのお二人と普通に話せるなんて、嬉しいです!」
「ふふふ、じゃあ……レナちゃんね?」
「レナ、か。貴族の子女が相手だが、本人がそう言うなら、そうしよう」
俺が頷いたのを見て、フィリーナ達へ話しかけるレナ。
昨日からそうだが、エルフの二人を見るレナの表情は、興味があるようで爛々と輝いているように見える。
貴族家の女の子だから、フィリーナ達はレナの事を様付けで呼んでたけど、お互い砕けた話し方にするようだ。
まぁ、この場で堅苦しい話し方と言うのも、あまり必要ないよね。
「えっと……それで、失礼かもしれないのですが、一つ聞いてもいいですか?」
「何々? 可愛い女の子の聞きたい事なら、なんでも答えちゃうわよ?」
「落ち着けフィリーナ、その言い方だと妙な趣味に間違われかねない。それでレナ、何が聞きたいんだ? 小さな女の子の質問には、できるだけ答えよう」
「アルネも変わらないじゃない……」
レナが質問をしたそうに聞くと、身を乗り出して答えるフィリーナ。
それに注意をしているアルネだけど、どちらも聞き方によっては怪しく思えてしまう。
強いて言うなら、女性である分フィリーナの方が安全そうなくらいか……。
なんにせよ、勘違いされる可能性のある言い方は止めて欲しい……俺の後ろでメイさんが、殺気立ってるから。
「もし失礼でしたらごめんなさい。お二人は、何故そんなに綺麗な顔をしているのですか? エルフだから、と言うのはわかりますけど……」
「えっと……何でと言われてもね……」
「うむ……これは少々困ったな……」
レナの疑問は、エルフの二人が人間ではほとんど見る事ができない程、美形で端正な顔をしている事に対してだった。
うーん……言われてみれば、確かに気になる事ではあるね。
エルフと言えばこういうもの……という先入観があるから、こういう物と思って受け入れてた。
レナはここにいる二人しかしらないけど、集落にいたエルフ達は皆それぞれ美形だったからなぁ……もちろん、ヴェンツェルさんに近い筋肉を持つエヴァルトさんも。
「どうして、それが気になったの?」
「私も、お二人のように綺麗になって、リク様に褒められたいのです!」
「俺?」
「ふーん、成る程ねぇ……」
フィリーナが質問で返すと、レナが知りたい理由を話した。
俺に褒められたいから、と言うのが何故かわからないけど、レナは今でも十分可愛いと思うけどなぁ。
エルフのように、綺麗……とまでは言えないけど、それはこれからの成長に期待だしね。
母親のレギーナさんを見る限り、きっと綺麗な女性になる事は間違いないと思う。
レナからの返答に、フィリーナはニヤニヤして俺を見る。
そして何故か、俺の後ろでメイさんがガッツポーズをする気配……。
いや、メイさん……何でいつまでも俺の後ろに? 隙あらば気配を殺して命を……なんて考えてませんよね?
「小さくても、やっぱり女の子なのねぇ。気になる男の子に綺麗って言われたい……うんうん、いいじゃない!」
「ふむ……だが、私達が教えられる事は、ほとんどないと思うが……」
「そうなのですか? 何か特別な事をして、そんなに綺麗な顔になっているんじゃないんですか?」
「うーん、こればっかりはねぇ……生まれつきとしか言えないわ」
「そうだな。エルフの間でも、美醜の違いはあるが……種族柄なのか、そちらにはあまり関心ないのが常だな」
「まぁ、私のような女性エルフは、多少気を付けたりもするけど……それでも、ほとんど何もしないわね」
「そうなんですか……」
エルフはある種、一部の女性の敵なのかもしれない。
いや、憧れ的な意味も含めてだけど。
日頃頑張って、お肌のケアや化粧など、様々な事に試行錯誤している女性達からすると、何も気にせず化粧すらしない。
そのうえ肌は綺麗に見えるし……世の女性達に敵視されないか、少し心配だ。
エルフって、ある種人間の理想に近いのかもね。
美形で長寿か……。
まぁ、美しいと思うかどうかは、人によって違うかもしれないけども。
「俺達男性エルフは、ほとんど全員が気にする事はないな」
「え?」
「ん? どうした?」
アルネもフィリーナの話に頷きながら話す。
世の美容男子が聞いたら、なんという反応をするんだろう……。
俺もあまりそういう事は気にしないけど、身だしなみを整えるくらいの事はしてる。
姉さんが、そういう事にうるさかったのが原因だけど。
それはともかく、アルネの話で何故か、レナが驚いた顔をして首を傾げた。
どうしたんだろう?
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