第218話 勝手に依頼を受けて怒られるリク
「あ、そうだ。その帰りに二つ程依頼を受けておいたよ。ちょうど良さそうなのがあったからね」
「……依頼……だと?」
「……リクさんが依頼を……?」
帰りに依頼を受けていた事を思い出し、依頼書をモニカさんとソフィーに見せるように取り出した。
二人は訝し気にしながらその依頼書を見る。
……何でそんなに訝し気なんだろうか?
「ほら、ワイバーンはこの前いっぱい襲って来たから、それを回収したら良いと思うんだ」
「……リク……確かにワイバーンはそれで良いかもしれない……移動もエルサがいれば楽だろう……けどな……」
「リクさん……こっちにはキマイラって書いてあるんだけど?」
「あぁ、そっちね。そっちは王都の西に出たキマイラを討伐する依頼らしいんだ。確か3匹だっけ? 通行の邪魔になるから早く討伐して欲しいらしいよ」
「「……はぁ……」」
依頼書を見る二人に、説明をする。
ワイバーンは以前飛ばした場所へ、エルサに乗って移動したら特に苦労はしないだろう。
まぁ、皮を剥ぎ取るのが少し手間かもしれないけどね。
でも二人はそっちじゃなく、キマイラというのを気にしているようだ。
依頼の説明をする俺に向かって、二人は同時に溜め息を吐いた……何故!?
「リクさん……キマイラはそこらの魔物と違うのよ?」
「リクは良いかもしれないが、私達は二人共まだCランクだ……キマイラを相手にするには力不足過ぎる」
「えっと……ユノもいるし、エルサもいるから大丈夫かなーっと……」
「はぁ……やっぱりリクさんに依頼を選んでもらったら大変な事になるわね」
「そうだな……そもそもリク、依頼に関してはモニカが確認すると言っていただろう?」
「あ……」
二人共、キマイラをCランクで相手にする事を気にしているようだ。
溜め息を吐く二人を見ながら、ソフィーに言われて思い出した。
昨夜、モニカさんが依頼を確認するとなった時、俺が選ぶと自分基準やAランク基準になってしまうから……と。
「そういえば、言われてたね……」
「忘れてたんだな……」
「……キマイラ……私達でなんとかなるかしら……?」
「断りたいが……もう受けてしまっているしな……しかもパーティとして」
ソフィーが依頼書の中で、俺がサインした場所を示しながら言う。
確かにそこには、俺の名前だけでなく、皆の名前やパーティとして受ける事が書いてあった。
「一度受けた依頼を断るのはな……出来なくはないが、推奨はされない。ランク評価に影響するからな」
「依頼達成率にも響くわね。……普通は自分のランクに見合った依頼を受けるから、そこまで気にしないんだけど、リクさんが規格外だから……」
ランク昇格のためには、まず一番大事な事は依頼達成率だ。
依頼を途中で放棄したり、失敗したりすること無く達成した事のデータになるんだけど、これが高い事が高評価となる。
高位ランク依頼の達成率が最も評価されるけど、当然達成が難しい事なので、通常は自分に見合ったランクの依頼をこなして、ランクを上げて行く事になる。
失敗したり放棄する事で、達成率は下がるため、無理な依頼を受諾しないためのシステムだ……といっていたのは……確かヤンさんだったっけ。
「えーと……駄目?」
「いや、駄目じゃないが……リクがいれば達成不可能な依頼じゃないだろうしな」
「そうね……でも、これだと私達が成長しないでしょ? いつまでもリクさんにばかり頼ってちゃいけないと思うの」
「……俺は皆を頼りにしてるんだけど……」
「そういう事じゃないんだがな……」
「はぁ……仕方ないわね。この依頼は受けてしまったんだし、もう覚悟するしかないわ」
「ゴメンナサイ」
顔をしかめてる二人に、悪い事をしたと思う。
俺は二人を頼りにしているし、頼もしい仲間だと考えているけど、二人はそれとは別に自分達の成長という事を考えているようだ。
確かにキマイラ討伐の依頼だと、ユノやエルサが活躍しそうだから、成長という事を考えたらこの依頼は適さないかもしれないな……。
申し訳ないと思い、二人に謝る俺。
「仕方ないか……キマイラを見るだけでも、多少は何か学べる物があるかもしれないしな。……依頼の確認をモニカに任せて正解だった」
「そうね……役に立てるとは思えないけど、何かを学べるようにしなきゃね。……リクさん、これからは相談もなしに依頼を受けたりしないでね? せっかく昨夜はリーダーとして頑張ってると思ったのに……」
「スミマセンデシタ」
二人の言葉に、俺は謝るばかりだ。
昨日は相談して色々な事を決めていければ……なんて考えていたのに、確かにこの依頼は俺が勝手に決めて来てしまった。
依頼をこなすのは俺だけじゃなく、皆でなんだから、ちゃんと相談しないといけないの当たり前だね。
……これからは気を付けようと思う。
「はぁ……リクの依頼はともかく、モニカの方はどうだったんだ?」
「やっぱり王都ね。ヘルサルとは違って色んな依頼があったわ」
「Cランクの依頼はあったか?」
「それなりにあったわね。CランクからBランクあたりの依頼がちょうど良いと思うのだけど……」
「そうだな、難し過ぎる依頼もあるから、吟味する必要はあるだろうが、そのくらいで考えると良いだろうな」
俺を放っておいて、二人で依頼の相談を始めた。
それを見ながら、俺は小さくなって反省するばかりだ。
「リク、元気だしなさい。失敗は誰にでもあるわよ?」
「まぁ、それはわかるけど……」
「むしろ、リクでも失敗するのだと、私達は安心したがな」
「安心って……」
小さくなってる俺に、フィリーナとアルネが声を掛けて来て励ましてくれる。
けどアルネ、それは励ます言葉じゃないと思うんだけど……。
ちなみに姉さんは、夕食をエルサやユノと頂きながら、俺を見て笑っている。
そんなに俺が失敗したのが面白いのかなぁ……?
「女二人から責められるりっくん……ワイバーンと戦ってた勇ましさからは考えられないわねぇ」
「リクはもう少し自分の事を理解した方が良いのだわ」
「自分と周りの違いを理解してないの」
姉さんとエルサとユノ、それぞれ好き勝手言ってるが……エルサとユノにだけは言われたくないと思う。
特にユノは、俺以上に他と自分との違いを理解してないような気がするんだよなぁ……。
何でも無い事のように魔物を倒して、皆を驚愕させる事もあったしね。
「リク、その依頼だけど……私達も付いて行っては駄目かしら?」
「フィリーナ達も?」
「リク達と一緒にいると、学べる事が多いからな」
「それは良いんだけど……」
「もちろん、協力出来る事なら協力するわ。それに、冒険者の依頼でしょ? 報酬は出るだろうけど、私達にはいらないから」
フィリーナとアルネは、俺達が行く依頼に付いて来たいようだ。
学べる事が多いとは言うけど、エルフである二人といる事で、俺達の方も学ぶ事が多く出て来るから、むしろありがたい。
しかもフィリーナは、依頼達成報酬もいらないと言う。
いや……報酬に関しては、俺はあまり気にしてないから、協力してくれると言うなら分配して良いと思うんだけどね。
……使いきれないお金に困っている状態だし……。
ギルドに預けてあるお金……どう使おうか……。
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