第217話 女性陣はデザートに興味津々
「さて、これでもまだ少し時間が余ったなぁ。どうしようか、ユノ?」
「……キマイラくらい簡単なの」
「まだ気にしてるのか? あの人もユノを心配して行ってくれたんだから、あまり気にするなよ?」
頬をぷくーっと膨らませているユノを慰めつつ、ギルドから離れて歩き出す。
ユノの機嫌を直すにはどうしたら良いかな……なんて考えながら歩いていた時に思いついた。
「そうだ、ユノ。前にマックスさんん達と行った食べ物屋にでも行くか?」
「食べ物なの!? ……でも、夕食の時間じゃないの」
食べ物に食いつくように反応したユノだけど、まだ夕食の時間じゃない事を気にしている様子だ。
お菓子を食べたら夕飯が入らないと注意されている子供みたいだ……見た目は子供なのは確かだけど。
「はは、気にしなくても良いよ。というか、食事というよりも、デザートを食べに行こうと思うんだ」
「デザートなの!? 甘いの?」
「どうだろうなぁ……甘いと良いな」
前に行った時、軽くメニューを確認したら、デザートらしい物もあったのを覚えてる。
どんな物が出て来るかは、出て来るまでわからないけど、あの店はマックスさんもうならせる味の店だから、外れは無いと思う。
それに、沢山食べるユノだから、今何かを食べて夕食が入らなくなるなんて事もないだろうしな。
もしもの時は、城に帰るまでに遠回りをして歩いて帰れば、多少はお腹も減るだろう。
そう考えて、ユノと笑いながらマックスさんに紹介されたお店へ向かった。
……食べ物で機嫌が直るユノを見て、おかしくて笑ってしまったのを見咎められて、また軽くむくれられながらだけどね。
「少し遅くなったな。ちょっとだけ早めに歩こう」
「わかったの!」
デザートを食べてご機嫌のユノと一緒に、城へ向かって歩く。
お店で出たデザートは、アイスを使ったパフェに似た物だった。
この世界にもアイスがあるのかと思ったけど、魔法があるんだから不思議でもないかと納得しておいた。
……姉さんが作らせた可能性もあるしね……。
夕日もそろそろ沈みかけ、夕方というよりは夜になりかけてる時間だから、モニカさんやソフィーを待たせてしまってるかもしれないなぁ。
「ただいまー」
「ただいまなのー」
「お帰りなさいませ、リク様。モニカ様達がいらっしゃっております」
「お帰り、リクさん」
「遅かったな、リク」
「おかえりー、リク」
城に入り、部屋へと戻ると予想通りモニカさんとソフィーが待っていた。
……ベッドの方で寝ているエルサを抱きしめながらモフモフにご満悦な様子の姉さんは放っておこう。
何故かフィリーナとアルネもいるけど……これも気にしない事にしよう。
「ちょっとユノと寄り道してたら遅くなってね」
「美味しかったの!」
「……何を食べたの?」
「デザートをね……夕食に差支えが無い程度に……」
「デザートですって!?」
帰るのが遅れた理由を話すと、ユノが元気よくデザートを食べた事を報告した。
それは良いんだけど、何故かエルサをモフモフしていた姉さんが超反応した。
「……姉さん、何でそんな反応を……?」
「デザートでしょ? 卑怯だわりっくん。私も食べたかったわぁ」
「王都でデザートと言うと……父さん達が教えてくれた店で?」
「そうだね、あの店で食べたよ」
甘い物に目が無い姉さんの反応は放っておいて、モニカさんの質問に答える。
モニカさんも、あの店にデザートがあるのは確認していたようだ。
「デザートか……それは私も食べたかったな……」
「私も食べたいわ」
「皆、もうすぐ夕食でしょ? また今度でいいんじゃない?」
「「「「夕食とデザートは別なの!」」」」
美味しいデザートと聞いて、羨ましそうにする女性陣。
夕食だからまた今度と言うと、皆が口を揃えて叫ぶ。
……まぁ、甘いものは別腹とかいう言葉もあるくらいだしね……こうなるのも仕方ないのかもしれないけど……。
「リク様、夕食の用意は如何致しましょうか?」
「食べられるから大丈夫です。お願いします」
「畏まりました」
夕食の事を聞いて来るヒルダさんに用意をお願いしながら、ソファーに座る。
夕食を待つまでの間、羨ましがる女性陣に対し、アルネと一緒に落ち着かせるのが大変だった。
……ヒルダさんが夕食の準備中でいないため、注意してくれる人がいない姉さんが一番最後まで食べたがっていた。
女王様がそれで良いのかと思うけど、いつかお忍びとかで行けたら良いな。
「お待たせ致しました」
「ありがとうございます」
ヒルダさんが用意してくれた夕食を食べながら、別々に行動した成果を話す。
今日も姉さんも含めて皆で夕食だ……エルサはヒルダさんが戻って来た瞬間に起きた……相変わらずだな。
「それじゃあ、私から報告しよう」
「うん、お願いするよ」
まずはソフィーからの報告。
冒険者ギルドを回って知り合いの冒険者を探して、情報を聞くという役目だったけど、結構大変だったみたいだ。
自由に動く冒険者は、必ずギルドにいるとは限らない。
依頼を遂行するため、どこかへ行っている事もあれば、酒場で酒を飲んでたりという事もあったみたいだね。
「ギルドで知り合いがどこにいるかの情報を聞いて移動、の繰り返しだったな」
「大変だったのでは?」
「まぁ、それなりにな。だが、その分王都の地理にも詳しくなれたからな。そっちの意味でも成果があったぞ」
「聞けた情報に関しては?」
王都を移動して、地理を把握できたというのは大きいと思う。
俺やモニカさんはマックスさん達に案内されてだったけど、やっぱり地理を知っている方が慣れるのが早いからね。
「ほとんどが、帝国のギルドに関する愚痴ばかりだな。依頼が少ないから生活もまともに出来ない者もいるようだ。軍が代わりをしているから仕方ないとも言えるんだが……」
「大体予想していた事だね」
アテトリア王国で活動する冒険者では、それくらいしか情報は得られなかったみたいだね。
まぁ、ギルドに関する詳しい情報なんて、そこらの冒険者が簡単に得られるわけじゃないから、仕方ない。
……俺が簡単に色んな人からいろんな情報が入って来るのは、運が良かったと思っておこう。
「それで、リクの方はどうだったんだ?」
「マティルデさんに聞きに行ったんでしょう?」
「うん。話は色々聞けたよ」
マティルデさんから聞いた情報……帝国にある冒険者ギルドが全てではないにしろ、何か怪しい動きをしている事、帝国では冒険者への風当たりが強い事、ならず者の集団になってしまっている部分もある事なんかを話した。
さすがに、マティルデさんが個人的に予想した裏ギルドとかの事は話さなかったけど。
予想だからという事もあるけど、あまり人に言わないで欲しそうだったからね。
ある程度は姉さんにも国への回答という事で、伝わるだろう内容にしておいた。
まぁ、それ以外の事もあるけど、どうせ伝わる内容から推測できそうな事だしね。
「成る程……そこまで帝国側の冒険者は状況が悪いのか」
「ならず者……冒険者は犯罪者だなんて……」
「ふむ……となると、王都にあるギルドからの情報では、帝国に関する情報には期待できそうにないわね」
「そうだね。帝国側のギルドは、色々と情報を隠しているようだからね」
ソフィーは納得顔、モニカさんは犯罪者が冒険者になる事に驚愕し、姉さんは俺が伝えた事を考えているようだ。
ギルドの中心ではないけど、この国のギルドで一番大きいギルドのマスターであるマティルデさんでもわからない事が多いんだ、実際に確かな情報を得ようとするなら帝国に行かないといけないのかもしれない。
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