第121話 魔物討伐にヤンさん合流
「リクさんは冒険者組合でも信用が高いようですね」
「エヴァルトさん、でしたね。ええ。リクさんはヘルサルの街を守った英雄ですからね。魔物の集団くらいなんともないでしょう」
エヴェルトさんの言葉にヤンさんが返すけど、そこまで信頼される程かな。
俺にだって魔物の集団に対処出来ない事もあると思うんだけどなぁ……。
「さてリクさん、こちらに来て集落の様子も見ましたが、やはり既に?」
「やはりと言われる理由は考えないようにしますが……一応魔物達はほとんど討伐しました」
俺がそう言うと、ヤンさんを始めその場にいる冒険者の男性と兵士さんがそれぞれ「おぉ」と感心したような声を上げた。
「さすがですね……ではこの集落はもう安全に?」
「いえ、まだ森の中に魔物達が残っています」
「その辺りは俺が説明しますよ」
横からエヴァルトさんが割り込んで、説明が始まった。
俺がこの集落に来た時から今まで。
夜襲があった事、魔物が増えた理由、俺達とエルサが魔物を討伐した事、エルフの集落への被害が少ないうえ、俺が魔法で治癒した事でエルフの被害が減少した事等。
ヤンさん達は始終感心したようにエヴァルトさんの話を聞いていた。
エヴァルトさんの話を俺も聞いてる形だけど、客観的に見ると結構な活躍をしてたんだね俺達。
「という事でしてな。今は森の中に散らばっている魔物の捜索と討伐をお願いしてる所なのです」
「成る程、状況はわかりました。それにしてもさすがはリクさんですね」
しきりに俺達の事を褒める内容を挟みながら、エヴァルトさんの説明が終わる。
ヤンさんもさすがとか言ってるけど、結構面映ゆいね。
「それではリクさん、これは冒険者ギルドからの通達です」
「はい」
冒険者ギルドからの通達ってなんだろう……返事をしたものの、何を言われるのかまったくわからない。
さすがにこの集落に来た事を咎められることは無いだろうけどね。
「今回のエルフの集落救出は臨時依頼として認められる事になりました。これは、エルフの集落の重要性と少人数で救った事による成果という事ですね。ちゃんと報酬が出るので安心して下さい」
「……いいんですか?」
俺は元々冒険者の依頼とは関係無しにこの集落に来た。
報酬は期待してなかったからね。
「むしろ、今回のリクさんの活動を認めない方が我々冒険者組合の信頼が疑われそうですね。一つの集落を救っておいて何も評価しないわけにはいきません。まぁ今回は我々が把握していない問題を先にリクさんが解決したので、そこまでの事は無いと思いますが……私としてもリクさんが正当に評価されるのを望みますので」
まぁ俺達が今回やった事って一人や二人を魔物から助けたとかじゃなく、数百人規模の集落でしかも国としても冒険者組合としても重要なエルフを救ったんだから、そういう事になってしまうのかもしれない。
「それに伴い、今聞いたエヴァルトさんからの魔物の残党処理を終える事で依頼達成としましょう。当然、報酬は用意いたします。……まぁ、ヘルサルの街に戻ってからになると思いますが……」
「それで大丈夫です。依頼じゃなくてもやっていた事ですからね」
報酬に関しては別に今すぐ欲しいとは思わない。
十分なお金を前回のヘルサル防衛でもらってしまったし、この集落にいる間は泊まるところから食事まで、全てエルフ達に用意してもらってるから全くお金がかかってないからね。
今回お金がかかったのって、ここに来る時買った野営用の道具と食料、それと今使ってる剣くらいだからなぁ。
元手がかからないのは良い事かもしれないけど、また使い道に困るお金が増えてしまった。
「ヤン殿、その依頼報酬とやらですが、私達エルフの集落から上乗せするの事は可能でしょうか?」
「え? エヴァルトさん?」
「可能です。集落からの依頼要請と報酬を追加する事でリクさん達には別途報酬が支払われる事になります」
これ以上報酬が増えても……と考えてる横で、エヴァルトさんとヤンさんが話しを決めてしまった。
どうやらエヴェルトさんは集落を救ってくれた恩をしっかりと返したいらしい。
これだけでは返せないが少しでも、と言われたけどそんなに気にしなくても平和に暮らしてくれれば良いんだけどね。
詳しい話しはまた後という事で、今度はヤンさんと一緒にいた兵士さんの話。
「私はヘルサルの街でクラウス様直属の部下となります。とは言え、日頃は街の防衛を担当しているんですがね」
「クラウスさんの……」
あのちょっとテンションがおかしな方向に行ってる気がする人か。
「今回のエルフの集落の件ですが、クラウス様から王都に伝令が行っております。ですがその帰りを待っていたり王都からの応援を待っていては間に合わないだろうという事で、私達が来ました。ヤン殿とクラウス様が協議をして、街とギルドの合同でこちらにとなりました」
兵士さんはクラウスさんから派遣されたという事らしいね。
確かに王都からの返事を待っている時間が惜しいというのはわかる。
俺達がここに来るとはいえ、どういう状況かわからないし手遅れにならないようにという配慮だと思う。
その後、主にエヴァルトさんとヤンさん、兵士さんの間で話が進められ、しばらくこの集落に滞在する事になった。
……途中から俺、いらなかったんじゃないかな?
「では、よろしくお願いします」
「はい、微力を尽くします」
「ほとんどリクさんが討伐した後ですからね。楽な仕事だと思いますよ」
この集落にいるエルフ達の数には到底及ばない数だけど、兵士5人、冒険者4人とヤンさんの合計10人は俺達と同じく森の魔物探索と討伐をする事に決まった。
兵士さんの方は主に集落周辺の警戒と防衛をするようだけどね。
ヘルサルの街で慣れてるからだろうというのと、エルフに近接戦闘が出来る人が少ないため、前衛を務められる兵士がいるのは助かるとの事だった。
ソフィーさんから教えられたエルフ達が剣を使って戦えるようになるのにももう少し時間がかかりそうだしね。
「さて、それではいきましょうか?」
「……ほんとについて来るんですか?」
「ええ。副ギルドマスターとして、リクさんの活動をしっかり見ておかないといけないですからね」
話が終わって、俺達が森に入ろうとするのに一緒に来ると言ったヤンさん。
何だか楽しそうだけど、ほんとに俺の活動を見るのが目的なんだろうか?
「父さんが言ってたわ。ヤンさんは魔物討伐をするのが生きがいなところがあるって。副ギルドマスターになって前線から退いたのが不思議なくらいだって……」
「はっはっは、マックスさんには敵いませんねぇ」
モニカさんに言われた事が図星だったのか、ヤンさんは笑いながら誤魔化してる。
戦闘狂? ……いや、そこまでの人なら副ギルドマスターにならずにまだ冒険者として活動してただろうなぁ……。
「でもヤンさん、連れて来た冒険者の人達は良いんですか?」
「あちらはベテランの冒険者ですからね。私が見ていなくても大丈夫でしょう。無理はしないように伝えてありますし、ベテランだけあって私のような組織側の人間が見ているとやりにくいでしょうから」
「そういうものですか」
「はい」
相変わらず楽しそうにしているヤンさん。
ベテランの冒険者なら森に入っても大丈夫だろうと思う。
エルフが数人案内を担当するとも言ってから、迷う事も無いだろうし。
あちらの心配をするよりも、こちらの事だ。
ヤンさんがいるとは言え、ここしばらくやっている事は変わらない。
俺は森の中に入っていつものように探査の魔法を使って魔物捜索を開始した。
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