第100話 魔物が西から進行して来た経緯の調査
相談後の朝食はエヴァルトさんも一緒だったんだけど、その時、怪我をしたエルフ達について聞いた。
まぁ、怪我をしたエルフにまた治癒魔法をと思ったからなんだけど、かすり傷くらいの怪我ばかりで治癒魔法を使うまでも無いとの事。
というより、あの程度の怪我で俺に魔法を使わせるのが申し訳ないと、エヴァルトさんが遠慮したようだ。
俺は別に良かったんだけどなぁ。
まぁ、今日は森の方へ行ってサマナースケルトンを探す事にするかな。
俺達は昼食用の携帯食を作ってもらって、フィリーナの案内で集落の入り口から草原までの道を移動する。
本当は集落から直接森に行けばいいんだろうけど、魔物達が何故森からじゃなくて草原の方から襲って来たのかを調べるためだ。
集落の南にある森、さらにその奥にある洞窟から魔物が湧いているはずだ。
魔物達が人間やエルフのような纏まった作戦行動のような動きをするとは思えない。
いや、する魔物もいるかもしれないけど、オーガやオークの集団にそれは出来ないと思われる。
何かの作戦とかならわかるけど、そう言った事の出来ないオーガやオーク達が森の中から襲って来た方が早いのに、草原の方から迂回して襲って来るのはおかしい。
サマナースケルトンを探しながら、魔物達が迂回した理由も調べるために昨日エルサに乗って飛んで来た草原まで歩いた。
「何も無いわね」
「そうだな……」
「エルサ様が蹴飛ばした魔物達の死体が転がってたわね」
「ああ。あの巨体で蹴られるとああなるんだな……」
モニカさんとソフィーさんは、草原まで歩いて来る道すがら、何故魔物達が迂回したのかを調べようとしてたけど、実際には何も無かった。
フィリーナとアルネはエルサが蹴飛ばした魔物達を見て何事か話してたけど、気持ちはわかる。
何せ、エルサに蹴られた魔物は、足が当たったと思われる部分が大きくへこむ、もしくは穴が開いているのが見えたからだ。
剣や魔法で倒した魔物達の死体も大差はないのだけど、武器や魔法を使わずに足だけであれをやったエルサに恐怖を感じてるんだろうな。
そのエルサは朝食の後、俺の頭でまた寝ている。
満腹になったから眠くなったんだと思うけど、暢気だな相変わらず。
ユノの方は、朝食と聞いて飛び起き、いつものようにたらふく食べた後は元気いっぱいだ。
今も見渡す限り花や草が足元で生い茂ってる草原を走り回ってる。
もうユノが神様に見えないな……単なる子供にしか……まぁ、妹という事にしてるからそれでいいか。
「ここまで来たけど、魔物が転がってるだけだったなぁ」
「そうね、リクさん。特に魔物達がこちらから襲撃して来た理由になる物は見付からなかったわ」
「ああ。サマナースケルトンと見られる骨があちこちに散らばってはいたが……それだけだな」
俺はモニカさんとソフィーさんに声を掛けて確認する。
二人共、さっき話してたように何も見つけられなかったようだ。
やっぱり、森の中に入ってみないとわからないかもなぁ。
「フィリーナ、ここから森までに何かあるか?」
「いいえ、ただ草原があるだけで、何もないわよ」
フィリーナに聞いてみたけど、何も無いようだね。
魔物達が森からここまで来る理由も特に無い……と。
「じゃあ、ここから森に行って探索してみよう。そっちに行けば何か見つかるかも知れない」
「そうね」
「そうだな」
「わかったわ」
「ああ」
俺達は方向を変えて、森に向かって歩き出す。
ほんと、この道順だと森から集落までわざわざ迂回して無駄な行動に見えるんだよね。
何でここまで来てから集落に向かったんだろう?
あ、移動する前に。
「おーいユノー。移動するぞー」
「わかったのー」
草原を走り回ってたユノと合流して、森に向かう俺達。
草原から2時間、ようやく森の入り口に辿り着いた。
入口と言っても、道があるわけでも無く、ただ木々の切れ目……森の端に到着しただけだけどね。
「とりあえず、ここで一旦休憩して昼食にするか」
「そうね」
「腹ごしらえをしてから、森で本格的に探索だな」
「お昼なのー」
「キューを食べるのだわー」
俺達は森の端の木陰に入り、集落で用意してもらった携帯食を広げる。
携帯食と言っても、持ち運びに便利な物というだけで、干し肉とかじゃない。
遠くまで行って日数がかかる探索の予定じゃないからね。
木の器に入ったサラダや量は少ないが肉もある。
水筒にはスープまであって、外で食べる物としては良い物だろう。
俺達が食事をする用意をしている間、フィリーナとアルネはずっと森の方を見て何やら考えている……どうしたんだろう?
「フィリーナ、アルネ、どうしたんだ?」
「リク……少しおかしいの」
「おかしい……何がおかしいんだ?」
フィリーナは森を見ながらそう言うけど、俺から森を見た限りだと何もおかしいことは無いね。
センテの街近くにあるエルサと出会った森よりは木々が密集してそうなくらいしかわからない。
けど、二人はエルフだ。
森に関しては俺より詳しいだろうし、そもそもここはエルフ達が住んでる森に近い場所、何か感じる物があるのかもしれないな。
「それがな……ここから見る範囲で森の木々達に何も無いのが気になってな」
「何も無い……良い事じゃないのか?」
「それ自体は良い事なんだけど、思い出してリク。ウッドイーターがこの森にはいるのよ」
ウッドイーター……森等の木をその腕力で引き抜いて食べる魔物だ。
俺はフィリーナの言葉に、一度今いる場所から見える範囲の森を見た。
まだここは入り口だし、鬱蒼と生い茂る木々達で奥までは見えないけど、見える範囲で木々は何もなく無事に立ってる。
当然ながら、地面から木を引き抜いたような跡も無い。
「ウッドイーターがいるのならどこかしら木が引き抜かれていてもおかしくは無いんだがな」
「そうね……集落に近い場所までウッドイーターが確認されたから、その辺りには木が引き抜かれた跡が残ってるわ」
「こっちにはウッドイーターは来てないのか」
俺達が今いる森の端は、集落西の入り口からさらに西の草原に行き、そこから真っ直ぐ南下して辿り着いた場所だ。
森の西側にはウッドイーターは来ていないという事になる。
「ウッドイーターは無差別に木を捕食する魔物だ。大量にいる事が確認されているから、数匹くらいはぐれてこちらに来ていそうだと予想してたんだ」
「それが、ここに来て見ると何も形跡がない……と」
「ええ。これは、魔物達がこちらから来た事にも繋がるのかもしれないわ……見て」
「これは……足跡……?」
「そう思うわ。この大きいのがオーガ、こちらの小さいのはコボルトでしょうね。両方今朝襲って来た魔物達の中にいた種類だわ」
フィリーナが指を刺した先には、地面に足跡と思われる小さなくぼみがあった。
人の足より明らかに大きいのがオーガで、小さくて犬の足跡っぽいのがコボルト……かな。
「来る途中の草原にも、この森から続くように植物が踏み倒されていたのを確認してるわ」
「あぁ、それなら私も見たな」
フィリーナさんの言葉に、昼食の用意をしていたソフィーさんも同意した。
俺は全然気づかなかった……魔物が森の外から襲って来た理由を探りに来たのに、これくらいを見逃すようじゃ駄目だなぁ……。
モニカさんも俺と同様なのか、今更ながらに通って来た道と森にある地面を見比べて足跡を確認してる。
「とにかく、森の中に入ったら注意深く探ってみないといけないな」
「そうね。それじゃ、まずは昼食取りましょうか」
「そうだな」
「ええ、そうしましょう」
「昼食ー」
「早くキューを出すのだわ」
アルネもフィリーナも気持ちを切り替えたのか、俺達が昼食に持って来た物を広げている場所へ移動する。
森や地面を見ていた俺達も、それに続いて昼食の開始だ。
エルサにはちゃんとキューを出してやらないとな。
それから約1時間後、俺達は持って来た携帯食を食べ終え、森の中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます