恋バナをしたくなるポップチューンな快作

突然、胸元にダイナマイトが埋め込まれていて、それが地球の命運を決める、という突飛な設定なのだけれど、物語は日常を描いていく。
そして、その不条理を受け入れてそのまま進んでいく主人公「環」のキャラクターがとても良い。こちらまで元気が出てくるし、周りの登場人物も、彼女に元気をもらっている感じがする。

1話1話に魅力的なフレーズが、それもごく自然に入っていて、次はどんなフレーズが出てくるんだろうというのも、次を読みたくなる要素のひとつ。全体的にポップな語り口も良いし、画がすぐに頭に浮かんでくる文体も楽しい。

環にとってのイラストに、全カクヨム作家というか「モノづくりをする」人たちの立場や葛藤が代弁されている感じがして、そういう点でも励まされたし、元気をもらった。

よく考えたら、ダイナマイトがなくても成立するんじゃないか?という話だけれども、そのくだりがあることによって、環により感情移入できるし、ものすごい突飛な設定にも「この世界ならありえるんじゃないか」という説得力を持たせている。

そして、なにより恋をしたくなる、というか恋バナをしたくなった。
疾走感溢れる爽やかな快作です。

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