第54話:ウインドイノセントボーイ
「これでいいかしら?」
晶がしたり顔でこちらへ帰ってくる。
「ねーちゃん!すっすげぇ!一体どんな魔法であいつ倒したんだ?!」
「ぼーやにはまだ早いわ♪」
大抵の魔法使いは晶には勝てないであろうことを悟った。
同時に味方であることに心底安堵した。
「ま、まぁ、とりあえず帰ろか・・・」
「そうですね・・・。危険な争いではなかったようですし、魔法の練習にもなりましたからね。杏莉殿が心配しないうちに戻りましょうか」
「じゃ~あ、ワタシも帰るわね♪そうそう、明日けーちゃんは事務所に居るの?」
「ああ、いるぜ。なにか用か?」
「うん♪昨日言った依頼の相談があるの♡」
「わかった、昼過ぎに来てくれ」
「わかったわ♪じゃあまた明日ね♡」
そういって晶は夜の闇の中に消えていった。
晶の依頼、か。魔法使いが抱える謎、果たしてどのようなモノなんだろうか?
「あ、あの~にーちゃん!」
その場に残っていた少年が俺に話しかけてくる。
「ん?どうした?」
「あの、あの!オレを弟子にしてください!」
「・・・はぁ?」
「オレ、オレ!にーちゃんみたいにもっと強くなりたいんだ!だからオレをにーちゃんの弟子にしてほしいんだ!!」
「え、やだ」
「え!?そ、そんなー!し、ししょーって呼ぶから!お願いします、お願いします!ししょー!」
「いや師匠とか、呼び方の問題じゃなくてだな」
「お願いだよー!しっしょー!!」
この流れはつい最近味わった気がする。このまま断り続けても
「あー、もう、うるせーなぁ・・・かってにしろ・・・」
「や、やったぜ!あっそうだ!名前まだ言ってなかった!オレは、
「俺は岩﨑慧だ、まぁ・・・よろしくな」
「やはり主殿は人を引き付けるモノを御持ちのようですね」
陸が目を瞑り、口元に笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「どーだかなぁ・・・まぁ帰るか」
「晶ってねーちゃんは明日ししょーの家にいくんでしょ?オレも遊びにいっていい?」
「遊びじゃねえんだがな、まあ、いいんじゃね?」
「調査の間、私が風助殿の修行の相手を致しましょうか?」
「そうだな、それが陸にとってもいいかもしれないな」
「おー、陸にーちゃんが相手かー!オッス!!お願いします!」
「こちらこそよろしく御願いします、風助殿」
「それじゃ、また明日な」
「うん、また明日!じゃあね!ししょー!」
そういって少年は名前の如く風のように去っていった。
「明日から色々忙しくなりそうだな」
「ええ、でも楽しそうですね」
「・・・そうだな、悪くはないかもな」
そこまで話すと陸は猫の姿へと戻った。
今宵の出会いが今後、俺にとってどのような結末を与えるのだろうか?
それはきっと、誰にも解らない。
例え神と呼ばれる存在が実在したとしても、その者にさえも解りはしない。
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