第43話:アブラプトアクセプト
「いや、女性ではあるが・・・」
「・・・てく」
「は?」
「ついてく!!」
「は?!」
「ワタシのけーちゃんを奪う不届き者は許さないんだから!」
「ま、まて!いつ俺はお前のモノになったんだ!」
「今さっきよ!」
もう駄目だ。御終いだ。
「まぁ、あれだ、俺は帰るから付いてくるなら好きにしてくれ・・・」
「やった♪どろぼう猫をコテンパンにしてあげるんだから♡」
「頼むからそれはやめてくれ・・・」
そう言って宙に浮かぶと晶がぴったりと着いてくる。
振りほどくのも面倒なのでそのまま事務所に向かった。
「ただいま・・・」
「慧さん、おかえりなさい・・・え、え~と・・・そちらの方は?」
帰るや否や、杏莉さんに質問されてしまう。
「ああ、えっとな・・・」
「初めまして!神代晶です!晶って呼んでね♪」
「は、初めまして、一ノ瀬杏莉です。あの、もしかして、慧さんの恋人さんですか?」
「ちが、むぐっ!」
晶に思いきり口をふさがれる。
「そうなのそうなの!けーちゃんはワタシの彼氏なの!」
「け、慧さんってやっぱりお付き合いしている方が居たんですね・・・」
勝手に話が進んでいく。勘弁してくれ。晶の手を放して話に割り込む。
「付き合ってねぇし!晶はさっき偶然知り合った俺たちと同じ魔法使いだよ」
「俺たち、って杏莉ちゃんも魔法使いなの?」
「ああ、あともう一人・・・いるんだが、陸、挨拶してやってくれ」
するとソファに座ってこちらを見ていた陸が近づいてくる。
「あら、可愛い子ね♪」
「初めまして、一ノ瀬陸と申します。宜しくお願いします」
「え?!は、初めまして、神代晶ともうします・・・晶と呼んでくださいまし・・・」
陸を撫でようとしていた手を引っ込めてこちらに耳打ちしてくる。
「け、けーちゃん!猫がしゃべったわよ!」
「ああ、陸は魔法使いの猫じゃなくて猫の魔法使いなんだよ」
「ま、魔法使いって人だけじゃなかったのね・・・」
「そういうことだ、つまりこの場には3人と1匹の魔法使いが居るわけだな」
「それより、杏莉ちゃんとは付き合ってないの?すごく良い子そうだけど」
「ああ、すごく良い子だけど付き合ってねぇよ」
「そうなのね、うふふっ♪」
晶は不敵な笑みを浮かべている。嫌な予感しかしない。
すると杏莉さんをビシッと指さして高らかに宣言した。
「杏莉ちゃん!ワタシとけーちゃんの権利をかけて料理勝負よっ!勝ったほうがけーちゃんを好きにできる権利をもらえるわ♡」
「おい!ちょっと待て!、俺の意志はどこにいった!?勝手に決めてんじゃぁねぇぞ!」
「あら?いいじゃない?どっちが勝っても美女の相手ができるんですもの」
「そういう問題じゃなくてだなぁ。あ、杏莉さん?」
ふと杏莉さんの方を振り向くとあたふたと混乱している。
「あ、あの、その・・・」
そんな杏莉さんに近づいていき耳打ちする。
「と、とりあえず杏莉さんが勝てば俺は救われる。頼む、勝ってくれ」
「は、はい」
余りにも唐突で突拍子もない料理対決が、今始まろうとしていた。
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