第21話
「それで、あなた達はお客様相手に何をそんなに盛り上がっていたの」
「それはですね」
そのまま近くの椅子に座るVと学園長。
「今度の大会に向けて秘策を探してるんです!」
「秘策?」
「あの、そもそも大会って?」
学園長と生徒の会話につい口を出してしまうV。
「弓の的当てで大会があるんだと」
代わりに答えたのはドーリー。
「的当てって、あれですか、遠くの的に当てて点数を競うやつ」
Vがイメージするのは一般人が「弓の大会」といわれて思い浮かべる物。
そのほかに思いつくものと言えば、貴族や異民族がやる馬に乗って走りながら射貫く競技。どちらにしろVは正式な名前を知らない。
帝国において弓の需要は「遊び」「競技」「実用」の三つに分けられる。
まず、田舎の猟師や騎士団、傭兵、冒険者、外国の軍隊まで幅広い人間が獣やモンスター、人間を射ることに使う「実用」
もともと弓を実用するための訓練やその成果をみる練習会から発展し独立していった「競技」
普段は商人や農民をやっている人間も、週末には倉庫にしまってある弓を持ち出して帝国各地で行われる大会に参加して楽しむというほど広がっており、学生専用の競技会や女性専用の競技会なども行われている。
最後に親が競技会で使う弓を持ち出して庭の木を射る貴族の子供や、親の道具を勝手に持ち出し山の中で弓と矢を自作する田舎の農民の子など「遊び」
もちろん大人も遊びで使うことがある。子供も大人も、最後は家の壁に誤射したり弓や矢、あと持ち出した道具をダメにして説教されて終わるか、人の額に矢を突き刺して騎士団の世話になるというのが相場。
「いや、的当てでも変わったやつだ。弓と矢を持ってフィールドを駆け回って指定された場所から設置されてる的を狙う」
「へぇ、そんな競技があるんですね。初めて聞きました」
「軍隊の斥候なんぞがやる訓練だよ。競技としてやるなんて初めて聞いたけど」
「今回が第一回なんです。学生大会で成功したら広めていこうってことで力を入れていて」
金髪の学生が口をはさむ。
「ですから先輩と私が優勝できる余地があるんです」
もう一人の赤毛の後輩がも参加。
「えっと、君達二人ででるのかい?」
「はい。わが校の代表として参加させてもらいます」
「代表っていえば聞こえは良いけれど、この学校で弓を扱ってるのはあなた達だけなのが実際の所でしょ」
金髪の先輩が胸を張っていった所に学園長の無慈悲な突っ込み。
「今まで碌な成績も出してないじゃない」
「ですから今回は勝ちに行くんです。ここで勝てば来年、再来年と弓を扱う生徒が増えるかもしれないじゃないですか」
「かもなんだ」
Vは苦笑。会話しながら食事をしている。
「それで、優勝の勝算は?」
「それは、まぁ、その」
「あまく見積もれば7割は勝てます!ですからあと三割を埋める秘策を探してるんですよ!」
「あまく見積もって7割じゃ勝ち目ないって考えたほうがいいな」
赤毛の後輩の言葉にドーリはそう言って笑う。
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