114話「Re:リベンジ」

*グロ注意回




 死んだはずの人間が、いくつも現れた。

 そして数十人出てきた死人どもの中から俺に怨嗟がこもった声で初めに怒鳴ってきたのが……。


 ――元の世界でいちばん俺を害して不快な気分にさせた、元クラスメイトの最低蛆下衆糞野郎、大西雄介だ。

 見た目は生きていた頃と違って、ゾンビとして復活したばかりの頃の俺と同じ肌の色をしている。


 「そういえば復讐し終えた後、このゴミカスどもや他の連中の死骸って焼却しないまま放置してたんだっけ?

 けど俺みたいにあの瘴気まみれのところにいなきゃ復活できないはずだし...うーん?」


 声に出して疑問点を言ってみる。大西が、誰がゴミカスだって、とか何か怒鳴ってきてるがシカトする。テメーの相手はこの疑問が解決してからだ、だからしつこく煽ってくんなカス。あームカついてきた、後で思う存分に苦しめてやろう...!

 

 そう決心した時、俺の真横に半透明の人か何かが現れた。よく見るとさっき見たベロニカっていう女魔人族だった。これってホログラムか何かか?


 『まんまとこの空間に閉じ込められてくれてありがとう、イレギュラーゾンビ。懐かしい顔ぶれと再会できた気分はどう?』

 「ああ、最低に胸糞な気分だよ。んで、これってどういうこと?テメーの特殊な固有技能か何か?見た感じ、俺と似た存在に感じられるな?」


 ベロニカの煽りに応じることなく率直に疑問をぶつける。ホログラム越しでいるからか、ベロニカは余裕満ちた顔で自慢げにこの謎の現象を説明してくれる。


 『彼らは私の召喚魔術で復活させた死人、あなたがさっき殺してくれた屍族と似た存在ね。これは死んだ生物を屍族として復活させられるオリジナルの召喚魔術......≪黄泉召喚≫と呼んでるわ。復活させる対象は主に知性ある生物に絞ってるわ。その方がとっても有効に使えるからね...』

 「有効に?」

 『ええ、この魔術の特徴だけど...攻撃対象の者に強い憎しみ・殺意を抱いている人たちの魂を黄泉...死後の世界から呼び出して、屍族としてこの世に召喚させるのよ。さらに彼らがその感情を強く抱いている程、絶大な力が付与されることになっている。それがこの魔術の大きな特徴よ。

 自室にあるザイート様から得たあなたの情報が記載された資料をもとに、あなたと関わってきた生物...主に人族の魂を探してこうして召喚したのだけど...そしたら面白いことが起きたわ...!あなたはたくさん同族を殺してきたのね?復讐で殺したらしいけれど、凄い数ね?殺された彼らは、さぞあなたを憎み、呪いたい...殺したいと思っているでしょうね?』

 

 なるほどなぁ、この召喚魔術の詳細が分かってきた。つまりこれは、転生系の召喚魔術だ。といってもこの世界で死んだ・殺された奴らを生前とは別の種族...俺と同じ屍族として復活させるもの。

 しかもそいつらの攻撃対象は、とても憎くて殺したく思っている奴...ここでは俺にあたる。

 憎しみなどのどす黒い感情の強さに比例して絶大な力が授けられるとのこと。強く憎んでいればいる程、術者の駒を強くさせられる召喚魔術...ってところか!


 『相手は全員あなたを強く憎んで生前以上に強くなった戦士たち...そうねぇ、彼らの様子を見る限り実力は災害レベルをも凌駕しているわね?ざっと、進化する前の同胞4~5人分の戦力はあるんじゃないかしら?フフフ...。

 しかも死ぬこともない、永遠に止まることもない、私の忠実な不死身駒たち!!あなたが殺してきた数だけ私の戦力が大幅に上がるというわけよ!残念だったわね?あなたにとってこの術は最悪の相性と言って良いわ...!

 そしてその空間は私の幻術でつくりあげた亜空間。どこにも逃げ場は無いわぁ。あなたはそこで殺された連中に嬲られてバラバラにされて無様に這いつくばるのよ!?のこのこ私たちの本拠地に入ったことを後悔しなさい!』


 あははは!と高笑いするベロニカの声を聞き流しながら、目の前にいるかつて殺した連中の顔ぶれを確認する。

 シカトしてる俺に尚も咎めて喚いている大西。


 「お前のせいで死んだんだぁ...!殺す!!」

 「何でお前がそうやって平気で生きているんだ!?俺たちはこんなにもお前に死んでほしいって思ってるのに...赦せない、消してやる!!」


 山本純一と片上敦基に...


 「甲斐田ぁ、お前の顔面を何回も潰して内臓ぐちゃぐちゃにして、何回でも痛めつけてやるよぉ?ひゃははははははははぁ!!」

 「感謝します魔人族様ァ!こうして甲斐田に復讐できるのだからぁ。お前にやられた苦痛を何倍もにして返してやらぁ!!」

 「生前以上に力が溢れてくる...!ははははははは!!これならお前なんか簡単につぶしてやれるぞぉ!復讐してやるぅ!!」


 須藤賢也、里中優斗、早川たかし......


 「下等な異世界人がよくも余をあんな無惨に殺してくれたな!?王子の余を苦しめことを後悔させながら貴様を殺しまくってくれるわぁ!!」

 「貴様がいなければ我の国王としての栄光なる生を歩めたというのに...!全て貴様の性だ!!わしにここまでの憎悪を抱かせた罪を、絶え間ない苦痛を以て償えええええ!!」


 さらにマルス糞王子とカドゥラ老害ゴミ国王...。



 「「「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す...!!」」」

 「「「消す消す消す消す消す消す消す消す消す...!!」」」

 「「「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね...!!」」」

 「「「「「.........!!......!!...!!」」」」」



 その他にもこの世界で殺してきた何人ものゴミカスどもが、俺に恨み言を吐きながら殺意のこもった目で睨み近づいてくる。この空間にいる奴ら全員が、俺に殺す殺す憎い憎い死ね死ねコーラスを唱えて、俺の罪を糾弾してきた。

 その光景に、俺は.........



 「ふ、ふふふ...。く、くくくくく...!あっははははははははははははははははははははははっ......!!」



 笑わずには、いられなかった。もう大爆笑だ。もう本当に、可笑しくて堪らなかった!


 『な...何が可笑しいの?たくさんの憎悪と殺意のプレッシャーに当てられて気でも狂ったの?』


 俺の様子にベロニカが引き気味に尋ねてきたので、笑いをどうにか抑えて答えてやらないとな。因みにベロニカのホログラムはいつの間にか消えていて、声だけが響いている状態だ。


 「あ~~~。いやぁ礼を言うよベロニカさん?敵であるテメーから、まさかこんな素敵なプレゼントを提供してくれるとは...!」

 『は...?あなた何を言ってるの!?この状況が分からない?災害レベル以上の力を持ってあなたを憎んでいる彼らと、密閉空間で戦うのよ!?この戦力差を見て何で――』

 「分かってねーのか、まだよぉ?俺がこんな雑魚カスどもで潰せると?いやそんなことよりも、本当にありがとうな?お陰で、またこいつらに...復讐ができる!!」

 『な……!?』


 こいつら全員が、自分を殺した俺を憎んで殺したいと思っている。復讐に焦がれている。

 それは俺も同じ!!生前のこいつらはあまりにも弱過ぎたせいで、かなり手加減して痛めつけて苦しめなければならなかったのだ。もの凄い難ゲー仕様だったよ。相手はスペランカー同然だったのだから。


 それがどうだ?今回のこいつらは死んでいる身分、俺とあまり変わらない存在。殺しても終わりじゃない、何度でもぶっ殺せる!思う存分力を解放して、こいつらに更なる復讐が実行できる!あの時以上の愉快な殺戮ショーが実現できる!!


 「逃げられると思うなぁ!?この密閉空間でぇ!!ズタボロの糞雑巾になりやがれぇ!!」


 目の前にいる大西が、両手剣を片手で振り上げて、亜音速で斬りかかってくる。


 「逃げられない?ああそうだよな。こんな密閉闘技場の中に、どこにも逃げ場なんてねーなぁ.........



 テメーらの、逃げ場がな」




 パキィン...! ゴキャ......


 破砕音。砕けたのは大西の剣。そして俺の目に映ったのは、


 「がぁ、ぱ......??」


 大西のゴミクズ野郎の、クソキモい顔面だ。


 『......え?』


 ベロニカの間が抜けた声が響く中、俺は先程放った正拳突きのモーションから蹴り技を繰り出す。嵐属性を纏った蹴りは、大西の五体をスパッとバラバラに斬り裂いた。


 「あ”っ、あ”あ”......!!痛あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」


 無様に断末魔の叫びを上げて倒れるのを、俺は愉快気に見下した。というか、無茶苦茶痛がってるな?俺と違って痛覚遮断できないみたいだな?

 ......それは僥倖!!

 ニヤァ...と嗜虐的な笑みを浮かべて、肉片と化した大西の体を踏みつけて次の獲物へ向かった。俺の目に映っている次のゴミクズは、糞王子野郎だ。


 「上等だぁ!?暗黒魔法―――」


 迫りくる俺にマルスは暗黒魔法で迎撃する。以前見た巨大な口腔よりさらに巨大で禍々しいそれを出現させて、さらに魔力光線をも放った。

 が、やっぱりというか、想像を下回る威力に幻滅しながら光属性を纏った拳を振るって容易く突破した。

 そしてマルスの胸倉を掴み上げてその場で加減無しで叩きつけた...マッハ数十の速度で!


 パァン!ともの凄い破裂音が響いて、奴の気持ち悪い中身が飛び散っていく中、まだ意識があるらしいキモく滑稽な糞王子の顔面パーツに火をつける。


 「い、たい...あ”あ”あ”あ”あ”痛い!熱い!苦しい!!呼吸がぁ!!貴様ぁ!余に対してまたしてもこんな...!?」


 まだ元気に叫ぶ力がある様だったから、炎の温度を上げたらあっさり灰になった。こいつもさっきと同じ、痛がって苦しんでいた。しかも生命力が高く、死んだ後もまた蘇ってくれる。



 「ああ...!良い、素晴らしい、気持ちいい!!復讐するのに、ムカつく奴気に入らない奴殺したい奴ら相手に、手加減しないで暴力振るえるのって最高に良い気分だぁ!!あはははははははは!!これだよ!こういうのを求めてたんだよ俺はぁ!テメーらが頑丈になって何度も復活してくれるお陰で俺は何度もこの力を発揮できる...。おら来いよ?もっと俺に復讐させろぉ!!」



 狂気に嗤う俺を見た連中は一瞬怯むも、すぐに怒りの形相を浮かべて数人グループでかかってきた。俺を憎む者同士、共闘することに抵抗は無いらしい。それぞれ武器を振るい、魔法を放って俺に元気よく向かってきた。

 俺は嗤いながらその全てを真っ向から叩き潰して、連中を悉く殺して回った。


 「ビギャアァ!!?」

 山本の頭を掴んで水と重力の複合魔法で生じた超水圧で潰して脳漿ぶちまけさせるなどスプラッタ殺害を披露して――


 「ぎゃあ!!骨が、内臓がはぁ!!」

 須藤の全身に超音速の拳打・蹴りを叩き込んでミンチにして――


 「うわああああああああ!?俺の脳が出てきて...!?」

 いつだったか、ギルドで俺を害したクソモブ冒険者の首を思い切り絞めて、頭が破裂して脳漿など中身を盛大にぶちかまして――


 ありとあらゆる技・魔法を駆使して連中を存分に殴り蹴り、燃やして潰して、刺して斬って刻んで、そして殺した。

 

 『む、無駄よ...!殺しても少し経ってからまた復活する。しかもその際、彼らの負の感情はさらに強くなり、それに比例して力も増していく。殺せば殺す程、自分の首を絞めることになるわよ!?』


 真上からベロニカのやや引きつった声が再度響く。そうか...益々俺を憎んでくれるのか...!確かに復活した奴ら全員が、能力値がさらに上がっている。より強い殺意を向けてきた。

 殺す度に力をつけて憎悪の念を強めてかかってくれる。本当に愉しませてくれる...!


 「だったら、俺はそれをも上回る憎悪と力を以て、テメーらを蹂躙してやろう!!そら行くぞぉ!!」



 至福の復讐タイムはまだまだ終わらせない......絶対に!


 俺の復讐は 終わらねぇ!!!

  

 


 





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