4 覚醒 その6

「コングラッチュレーション!!素晴らしい、なんて言葉じゃ形容出来ない位の事を君たちはやってのけた!!」

 起き抜けにこのハイテンションはキツい。

「ナイ、少し五月蝿い。悠さんの傷に障ります」

 闇は先に起きていたようだ。先程目覚めて視界に最初に映ったのは彼女の心配そうな顔だったからだ。

「傷と言えば、闇は大丈夫なのか?」

 闇を見る。

「大丈夫ですよ。やわな人間とは違う身体の作りをしているので」

 サムズアップである。

「いや、正直無理にでもテンション上げないとやってられないですよ。ユーナ君の事もありますからね」

 そうだ、間違えとは言え自分の代わりに亡くなってしまった彼女がいる事実は変えられようもない。

「いや、悠君に非はありません。全責任は私にあります。まさか旧神の根回しがあったとは…」

「そうです。私達は勝ち、無事帰り、彼女の遺体を持ち帰れた。僥倖と言わず何と言うのでしょう?」

「ああ、でも喜んでばかりは言えないな…」

 失う事も戦というもの。分かっていたとはいえ、やはりキツい。

「ではここは一先ず、そこで聞き耳を立てている不届き者の皆さんと一緒にケーキでも食べましょう。名付けて、モンブラン~ドリームキャッチャー風飴細工を添えて~、です!」

「ありゃ、バレてたか。招かれたならそれに従うのみさ。さぁ、アリスも」

「し、心配して来てみれば案外平気そうじゃない」

 扉を開けながらラインハルト、ロキ、アリス、それと見知らぬ中肉中背の眼光の鋭い男が入って来る。

「心配させてしまったなら、ごめん、と、ありがとう」

「心配してなんかないわ」

「アリス?嘘は感心しません。きっかり二時間おきに、うぐっ…」

「セバスこそ嘘つかないでほしいわ」

 水月に見事なまでの正拳突き…

「茶番は終わりましたか?ではユーリィ君!」

 キュラキュラとモンブランが運ばれてくる。

 明らかに等分に分けても糖分過多で当分卒倒しそうな量である。

「あっ、今上手いこと考えましたか?」

「…心を読むな」

「邪神の邪心故に」

 着物の似合う慎ましい胸を張る闇。

「あっ、今余計なこと考えましたか?」

「……」

 目線が刺さる。ベクトルが見える。

「何でそっちでも茶番を…。さあさ、ケーキが冷める前に」

「神父様、十分に冷えております…」

「言葉の綾ですよ」

「流石、神父様。言葉巧みでいらっしゃる」

「またぁ、褒めても何も出ませんよ?」

 この主従もこれである。

「ロキ、収拾がつかない…」

「いやぁ、ライニーの栗は持っていくからね」

「こっちは、勝手に食べ始めるし…」

 こんなに賑やかなのはいつぶりだろうか?

 ぷっ、と思わず笑いがこみ上げる。

 そうだ。今は、今この時だけは、生きている事を幸いとして、食べよう。

「「「いただきます(うぃふぁわきぃまふ)」」」


「祝日あって助かった。家でもにゃってる」

 飲めや食えや、ケーキオンリーだが、の賑わいは冷め、団長室。

「そうですね。落ち着く環境で休むのが一番です」

 パチンと指を鳴らすと扉が現れる。

「あっ、そうだ。ナイ」

 悠は思い出したかのように告げる。

「何ですか?」

「もう決めた。僕は、この教団に入る。そしてこの戦いを止める為に戦う。単純明快、救う為の戦いだ」

「そうですか!!今夜はお赤飯です!そして俺達の戦いはこれからだ的なサムシングなわけですね?」

「?まぁそんな感じだ。じゃあ今日はこの辺にしておくよ。じゃあな、ナイ神父」

 扉を閉まりゆく。

 ふと、ナイは気づいた。

 アレ?今まさか神父まで付けた?と。

 

「朝です、起きましょう。起床です」

「んあ?今日は父さんもいないから寝かせてくれ…」

「折角、朝食を作って差し上げたのに!?」

「お前がか!?」

 確かに良い匂いが漂ってきている。

「まあ、食材に悪いから仕方ない」

「うんうん、ん?私には!?」

「朝から五月蝿い」

 チョップで制止する。

 ダイニングに着くと素朴ながら美味しそうなメンツが揃っている。

 悠好みの和食で構成されている。

「意外に美味しい」

「意外は余計です」

 食べていると、正面に座った闇が俯いていく。

 気になって喉を通りにくくなってきたので尋ねる事にする。

「どうしたんだ?」

「あの…、ですね?」

 闇にしては歯切れが悪い。

「あの戦いの時、えーと、す、好きだと言ったじゃない、ですか」

 この言葉に互いに真っ赤になり、闇は更に俯き、悠は味噌汁にむせる。

「あ、あー、あれな…」

「悠さん、戦いが終わったら返事してくれるって言ってくれたじゃないですか?」

 忘れてた。

「あれか…」

「ど、どうでしょう?不束者ですが…」

 時計の秒針の音が大きく聞こえる程の静寂。

「あー、そうそう戦いが終わったら、だったな」

「…?」

「僕、入団したから、まだ戦いは続くだろ?てことで終わってないから」

 苦し紛れの言い訳。

 正直経験のない悠にはここは逃げるが勝ち…

「何ですか…、何ですかそれぇぇえええええ!!!!!!!」

 町内に響き渡りそうな大声が上がり、屋根にいた二羽のカラスが朝焼けに薄く架かる虹へ羽ばたいて行った。

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人と邪神の絶対存在(アティエル)1 【タイトル思案推敲中】 真木 紫鶴 @chusen

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