4 覚醒 その1

「いよいよ一狩り行こうぜ、ですね!」

「何で『狩る』前提なんだよ…和解だろ?」

「そーでした、そーでした」

 明日、他の神性、アトラク=ナクアに会う。

 正直不安でしかない。

 最近、教室で宿題を終わらせているのだが、久しく友人と遊んでいない気がする。こいつ等とは、遊んでいる、というか遊ばれている気がするのだが…。

 和解と言えども怖さや緊張もある。ので早く床に就きたいのだが、

「何か食べに行きましょう!!」

「唐突だな…」

「いやぁ、私ってグルメじゃないですか?」

「知らないよ。僕のご飯じゃ不服か?というか食費、請求しようか?」

「邪心のグルメ…。これは孤独の方か、妖神の方か…。食費はごめんなさい」

「そこは、パッと出せよ…」

「不服か?の問いにはノーです。美味しいご飯、いつもありがとうございます」

「お粗末様です。って、なんだよ改まって…」

 少し照れて頬を掻く悠。

「イエスッ!!テレ顔ゲッツ!!」

「調子に乗るな!何だったかな?外食か、久しく行ってないな…。父さんのご飯は帰ったら作るとして…」

「おっ?乗り気ですか?」

「まあ、たまには良いかなって。というか問題点がある」

「何ですか?」

「お前、普通の人には見えないんだろ?僕が寂しい独り言男になるじゃないか?」

「その点は、ノープロブレム。完全に人間になれば良いのです」

「人の姿として顕現するってことか?」

「半分当たりで、半分惜しいです。人の姿になるのではなく。体組織一つ単位で人間になるのです。以前のショゴスの件然り、なんかこの星の理に則れば、人間にも視認出来たり出来るのです」

「出た。超屁理屈理論」

「そこまで言うなら…。ほいっ!」

「なんにも変わんないぞ?って、どこへ行く気だ?」

 悠宅を急に飛び出すと、最近吸収合併やら何やらの影響で、潰れる事が決定している夏舞町なつまいちょう唯一のコンビニ方向へ走って行く。

 追いかけるも八卦、無視するも八卦…。

 悠は玄関で待ってみた。

 あっ、戻ってきた。

「何で追いかけて来ないんですか!?」

「和服で五十メートルをあの速度で走る人間はそうそういないぞ…」

「そうですか?いや、ほら」

 手にはビニール袋が握られている。

「悠さんは、山か里どっちに住みたいですか?」

 ガザガザと袋を漁る闇。

「戦争が起きるから止めなさい。後食べに行くんだろ?お菓子は没収だ」

「そんなー」

「で、どこに行くんだ?」

 買い物出来るなら、さっき言った事は本当だとようやく認める悠。

「いやぁ、私的には夜は焼肉ですが、高校生の懐事情じゃあね…」

「よし、お前食費な?ナイに請求したらいいか?」

「嘘ですよぉ。逆に悠さんは何がいいですか?」

 狼狽すらせずに悠に聞き返す闇。

「僕か?ここら辺何にもないからなぁ…」

「教団経由なら直ぐですよ」

「ほら、直ぐにこういう使い方する…」

「それで、お決まりになりましたか?」

「じゃああの店だ」


「何で、うちの高校の制服なんだよ…」

「いやあ、雰囲気出るかなと思いまして」

「何のだよ…」

 ここは夏舞町の隣町。とある店。

「何でチェーン店なんですか?」

「貧乏性がでてしまった…。でも、コイツのおかげで食費あからさまに増えてるし…」

「おおう、イタリアンを謳いながらこの肉の暴力。たまらねぇぜ」

「家はたまたま父さんの稼ぎが良かったからいいものの…。絶対ナイに払わせるからな」

「ここはドリア、パスタ、ピッツァ、炭水化物のジェットストリームアタックだ!ですかね?」

「お前はどれだよ?というか、騒がないでもらえる?」

「私はイカスミパスタですかね」

 意に介さず自分の注文を述べる闇。

「普通だな。でも僕を一緒に連れてきたのは間違えだったな。野菜もしっかり食べてもらう。特にトマトだ。お前避けてるだろ?」

「な、何のことです?」

「僕は王道のドリアにしておこう」

 注文が通り、皿が運ばれてくる。

「「いただきます」」

 悠は、真っ先に取り分け皿にサラダを移す。

「本当に取り分けてくるとは…。ええい、ままよ!」

「家にこんな風にチーズに焼き目を入れられるオーブンが…。まあ土台無理な話か」

 互いに自分との格闘に入っていることに恐らく気づいてはいない両者。

「トマトさえ乗り越えればこっちのもの、パスタだろうとすするのが大和撫子!」

 ずぞぞと、まるで蕎麦かラーメンかのようにすする闇。

 すするが出来るのならフォークでの食べ方をしっているだろうに…。

「パスタで音を立てて食べるのは嫌いだな」

 闇は顔を上げると、今度はしっかりとフォークに巻き付け食べ始める。

「そう言えば、もう良いんですか?母親の事」

「痛いとこ突いてくるな…。まあ殆ど現状に満足しているし、父さんにだって文句言われてないし、アレは聞き間違えだって可能性もあるし」

「アレってなんです?」

「小さい頃心の声みたいな声が聞こえた気がしたんだよ。小学校上がる前だったし、今は何ともないし」

「テレパス的な、ですか?」

「まあそんな感じだ。だから今は普通に暮らしてる。だから母さんもいいかなって」

「じゃあ入団したら何を願うんです?」

「それは未定」

 カチャカチャと食器達のダンスは終幕へ向かう頃。

「ところで、悠さんは好きな料理とかありますか?」

「何だ?藪から棒に。うん?和食かな?」

「その心は?」

「手の抜けない辺りや、料理や食べる人に対して配慮が必要になる所かな?」

「意外と主婦、いや、主夫目線…」

「いや、将来の夢が王様とか言う人よりマシだと思うのだが」

「女性でまかない付きの仕事ないですかね?」

「今の景気で、この町じゃあな…?脱ニートか?」

「いえ、言葉の綾ですよ」

「拍子抜けだな」

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