幕間

 光の射さない暗黒の洞穴。

 そこがワタシの棲家。生まれてこの方、糸を張り巡らせては張り巡らせて途方もない時間を費やしてきた。周りの思想ややり方は知らん。ワタシは巣さえ完成出来れば周りなど知ったこっちゃないのだ。

 だが最近かの戦も激化している。ワタシの所にも催促の話が来ているのだ。一つなら返事を先延ばしにしておけば放っておける。面倒臭い事に二つ。

 で、どちらに就くかだ。

 一つはワタシが生まれる前から存在している狡猾なるモノ。

 奴らは腹黒い、その一点に尽きる。

 もう一つも生前から存在している。自らを善と称して反対するものを次々幽閉するモノ達。

 かく言うワタシも奴らに幽閉されているのだが。

「で、お前が来たということはそういうことだろう?片角」

 洞窟内に響いていた羽音が止むとそこには光の刺さぬこの闇に紛れているものが一つ。

「我が主も貴方の牛歩にしびれを切らしておいでです」

「やはりな」

 しばし熟考。いや話を持ち掛けられたのはここ数年どころの騒ぎではない。千年、万年単位だ。その間ずっと考えていた。

「そちらに就けばワタシは変わらずこうしていられるのだな?」

「ええ、しかしそれなりの意志表示をしてもらわなければ」

 やはりだ。面倒臭い。ワタシの話を聞いていたのかコイツは。

「分かったよ。後で持参する、それでいいだろう」

「では今度こそお待ちしております故」

 片角と呼ばれたモノの羽ばたく音さえ届かなくなるほど時間が経過した後、ふうっと深く息を吐き出す。

 この面倒臭さを打開するにはやはり…

 この広大な地下に広がる深淵の大渓谷の主であり、巣を張り続けるモノ。

 ヒトは彼の神性をアトラク=ナクアと呼ぶ。


権威ある顔「さぁ、どうなりますかね?」

蠱惑的な顔「我欲が小さそうで大きいのね」

仏頂面な顔「いいのか?ヤツの所にはあのジイさんの手下も通っている…」

慈愛ある顔「まぁ死なないでしょうけども」

見据えた顔「シヌ確率はほぼほぼ皆無ダ」

鉄面皮な顔「同じく」

権威ある顔「そこではないのですよ」

見据えた顔「ああ、アノ可能性の話カ」

鉄面皮な顔「ここでの開花率は極めて低いと判断する」

蠱惑的な顔「可愛い子だものね。ゆっくりでいいんじゃない?」

仏頂面な顔「だが、かの神性の目覚めは近い…」

権威ある顔「だから可及的速やかに」

慈愛ある顔「ですが急いては事を仕損じるです」

権威ある顔「ぐぬぬ…。ですが!」

全員「ここで開花が、一番好ましい!!」

権威ある顔「では、今日の千貌会議ニャルラト・コンファレンスはこれにて閉廷で!」

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