巨乳ガチャに失敗して、Aカップ貧乳になっちゃったけど、がんばります

坂井令和(れいな)

第1話 これで大好きなあの人に……

 ——わたしの目の前にあった。


 もしかして、これでわたしも憧れのナイスバディになれる!? 有無を言わせずお金を投入したところで――夢から覚めた。



 ちぇっ、夢か。

 念のために胸を触って確認したが、ぺったんこであった。


 大声では言えないが、わたしは 貧乳である。


 でも、まだ高校一年なんでこれからでしょ。


 階下から母がわたしを呼んだ。「英華、早く用意しなさい、遅刻するわよー!」


 

 遅刻ギリギリである。わたしは全速力で走った。


 ――街角からイケメンが現れ、ぶつかる……なんて展開はもちろんない。

 代わりに出てきたのは、友人の千絵である。


「英華、待ってー。早いよー」

「千絵、遅刻するよ」


「だって、走ると胸が痛いんだもん」


 ズキ、と友人の千絵の言葉が胸に響いた。さりげなく、巨乳自慢って(イライラ)。


 千絵はFカップである。まだ成長過程だというのが更にむかつく。走ってる今、彼女の胸はすごいことになっている。


 彼女と隣同士で歩くと、わたしが余計にまな板に見える!



 

 一限目の授業は世界史だった。急いで用意したから教科書を忘れた。

 仕方くなく、隣席の幼馴染の男に見せてもらうことにする。


「チビヒロ、教科書見せて」


「人に頼む態度がなったねーな、貧乳は」


「貧乳言うな、ころすぞ」


「お前が先にチビヒロって言ったんだろ」

「事実でしょ」

「貧乳も事実だろ」


 くー。このチビを見返すためにわたしは巨乳にならないといけないの! お願い、神様。



 見せてもらった教科書のページには、土偶の写真が載っている。乳房や臀部を強調していて、いやらしい。土偶ですら巨乳だというのに、くそくそくそ。


 

 ♪キーンコーンカーンコーン

 よし、帰宅だぁ。


「ってゆーか、なんでチビヒロがついてくるわけ」

「方向、同じだろ、貧乳」


 腐れ縁というやつである。家が隣で、両親が仲いい。これがイケメン長身男子だったらよかったのだが、冴えない低身長の男なのだ。


 一緒に帰っている途中(一緒というと誤解されるが、方向が同じだけ)、わたしの視線はコンビに注がれた。


 雑誌コーナーで立ち読みしている生徒が――校内一のイケメン王子がいる(ドキューン)。どんなマンガ読んでいるのだろうと興味が沸いたので、こっそりと店内に入った。


 わたしはシャイガールなのでまだ話しかけたことないが、とても彼のことが気になっている。連載中のマンガがいいところで終わっちゃったときくらい気になってるの(いみふな例え)。


「ってかさ」わたしは後ろからついてくる幼馴染に言った。「なんでチビヒロまでコンビニに入ってくるのよ」


「貧乳が盗みでもしそうなくらいにこっそり入るからさ」


「そんなことするわけないでしょ! あそこにイケメン王子がいるじゃない。何の雑誌、読んでるんだろう」


「貧乳は、イケメン王子に興味があるのか?」

「そりゃ、長身イケメンだもん」



 覗くと、水着グラビアに見入っていた。

 ゲッ、スケベじゃん!


 彼は、巨乳童顔グラビアアイドルをなめるように見ている。水着から溢れんばかりの胸に釘付けになっているようだった。


 まさか巨乳好きなの? わたしは、恐れながら、 Aカップである。あのグラビアアイドルのブラサイズは……アルファベットをどのくらい辿ればいいのだろう。


「あの、でもわたし……あのグラビアアイドルに似てるって言われたことあるんだ。童顔なところが似てるでしょ」わたしは隣にいるチビヒロに同意を求めた。


「どこが?」チビヒロはわたしの胸に視線を落とし、憐みの表情をする。「あのグラビアアイドルの特徴って胸だろ」



 わたしは、胸(貧乳)に誓った。わたしは巨乳になる! そしたら、全高一のモテ男もわたしに振り向くに違いない。



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