第12話 結果は言うまでもない

 もう少しで、この話も終わりますね……未完で()

 何度も言ってくどいかもしれませんが、そしたら現在なろうやそこら辺で投稿しているリメイク版? を挙げて行こうかなと。


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 残念ながら、一度食らった攻撃は二度とは効かない、というのが俺の戦闘スタイルだ。

 正確には、食らってやらない、だろうか。ともかく、『暴風拡散ウィンドボム』をもう一度食らうつもりは無い。


 俺に出し惜しみは通用しないと見たリーゼロッテは、惜しみなく魔法を使い始めた。


 最上級魔法というのは熟練の魔法師でも詠唱破棄がやっとだが、リーゼロッテも一節以上の詠唱が必要となる。得意属性か否か、というところだろう。『堕点風流ダウンバースト』は一言の詠唱と魔法名で済んでいたが、それ以外の属性はそうはいかないはずだ。


 その時間を稼ぐのが、レオンとソティ、という役割であるのだが……既にチームとして上手く機能している。


 その際、ソティは魔剣を召喚し、レオンはその見た目にぎょっと目を見開いていた。その隙に攻撃を、なんていう意地悪なことはしなかったが、そのぐらい目の端でとどめる程度に抑えておけよ。


 ただ、魔剣を召喚したソティは、中々に手強い。


 何度も何度も剣を弾くが、ソティはそれらを全て受け流している。

 

 剛より柔……いや、技巧というべきか。

 俺と似たような戦い方のため、ある意味戦いにくい。


 パラメータの都合上、速度はどうしてもソティに劣ってしまうからだ。


 「そらっ!!」

 「っと……」


 それに加えて、レオンの攻撃だ。大振りであるが故に攻撃回数は少ないが、ソティの鋭く連続した攻撃とは違い、完全に受け流すには時間を要す。

 そんなことをしていればソティに追撃を加えられかねないため、必然的に避けるか、防いだ上でソティの行動を何かしらで阻害しなければいけないのだ。


 阻害には魔法を使うのだが、一応魔法は魔法名を唱えなければならない制限をかけている。瞬時に行わなければならないために、少し厳しいだろう。


 残る選択肢は回避。毎度の如く動作を迫られるということだ。

 

 ソティの剣を弾き、レオンの大剣はしゃがんで回避してから、レオンの胴を薙ぐ。


 「グッ!?」

 「今のは避けなきゃ」


 [魔刀]によって魔力を纏わせた剣は、しかし今は切れ味は皆無になっており、レオンの胴体に傷ができたわけじゃない。


 代わりに、鈍器のようになっているため、痛みは内側にじわじわと広がるのだが。


 「そろそろ俺も反撃解禁だから」

 「あ、あいっかわらずの余裕っぷりだっつーの……」


 そりゃ、俺はこれでも一応勇者ですから。

 

 まぁ他の勇者なら同じことができる、という意味ではないのだが。


 レオンの脇から抜けた俺を、痛みに耐えて再度振られた大剣が襲う。


 それを跳躍で回避し、振り返りながら剣をレオンの頭上に振り下ろす───。


 「………!」


 ───のを、ソティが途中で割り込んできて食い止める。身体能力も剣術も、何気にソティはチームで一番高い。

 それ以外となるとほとんどからっきし(分かりやすいのはコミュニケーション)ではあるが、少なくとも力ですら、レオンと同程度にはあるのではないかと。


 一度俺は後退するが、ピッタリとソティが張り付いてくる。下からすくい上げるような攻撃を、鼻先ギリギリで回避し、容赦なく放たれる蹴りは衝撃をしっかりと受け流して対応。


 ───思ったより蹴りの威力が強くて痺れそう。受け流しは完璧とはいかなかったようだ。

 流石にソティの身体能力を前にすると、俺の現在の、3桁台のパラメータでは完封は厳しい。


 とはいえ、遅れを取るほどじゃない。


 「……!?」


 手応えありとみて続けて放たれた左側の蹴りを、俺は受け流すのではなく、屈みながら接近することで回避し、肉薄した所で逆袈裟斬りを見舞う。


 急いで間に魔剣を割り込ませようとするソティだが、その時には脇から胸にかけて俺の剣がソティをなぞり、肩から抜けていっていた。


 力加減をしてしまったのは、言うまでもなく相手がソティだからだろう。


 「こっちも一撃」

 「………」


 どことなくしょんぼりとするソティだが、十分やったと思うぞ。時間稼ぎは問題ない。


 「───轟け『大雷轟ギガボルト』!」


 その瞬間、満を持してリーゼロッテの詠唱が完了した。


 『大雷轟ギガボルト』。局所的な威力は他の魔法の追随を許さず、速度に関しても、見てから避けるのは間に合わない。 


 だが、最上級魔法には流石にこの魔法で対抗しても良いだろう。

 俺は右手を上に翳していた。


 「『次元の壁ディメンションウォール』」


 今度こそ発動した『次元の壁ディメンションウォール』は、上空から轟音を鳴らして降り注ぐ『大雷轟ギガボルト』を受け止める。


 パラメータが下がっていようと、魔法は魔力操作と魔力量でいくらでも効果を底上げできる。だからこそ、最上級魔法すら防ぐことができるのだ。

 ちなみに魔力に関してはいつもパラメータ制限をかけていないのだが、まぁ制限をかけても魔力の回復量は誤魔化せないので、あまり変わらない気もする。


 『大雷轟ギガボルト』が『次元の壁ディメンションウォール』越しに消滅する。


 しかし、俺は視線を下に向けた。


 地面から『光耀の鎖』が迫ってきていたのだ。


 「これは………」

 「『絶対零度アブソリュートゼロ』!」


 次の瞬間には俺は鎖に手足を取られ、その上で地面が凍り、俺の足元を覆う。

 その氷は、到底力で壊すことなど敵わない最強の氷。


 範囲を極小に絞った『絶対零度アブソリュートゼロ』……リーゼロッテの詠唱時間が少し長かったのは、二重詠唱デュアルキャストを行っていたからか。範囲を絞っているから近くにいるソティらを巻き込むことは無い。


 『大雷轟ギガボルト』は単なる囮だった、ということだ。


 俺に対する最後の一撃は、二度の最上級魔法により極度の魔力消費で疲れたリーゼロッテではなく、すぐに動けるレオンとソティだろう。


 そして、ソティは一応遠距離攻撃を持っていて、俺が予想したように、リーゼロッテの魔法のコンボが決まった時には、ソティはゆらりと俺の方に右手を向けていた。


 「『───』」


 また、無音なのか音があったのかは分からない。ソティの口が何かを紡ぐように動くと、その手の先にうねる様な魔力が集まる。

 やはり闇属性っぽいが、闇々過ぎないだろうか。闇々というか、禍々しいというか、流石魔剣。


 それにしても、殺す気なのだろうか? それとも信頼だろうか? どちらにせよ、食らったら痛そう。

 反対側から迫っていたレオンがギョッとして回避行動をとるほどだ。間に俺がいたとしても、貫通しそうに思えたのだろう。


 脅威度的には『大雷轟ギガボルト』よりも『神の縛鎖グレイプニル』よりも、『絶対零度アブソリュートゼロ』よりも断然上だ。最上級魔法という枠が公式での最高ランクの格付であるが、もう一段階上があったらそっちに振り分けられそうな魔法だ。


 迫ってくる闇の奔流を前に、俺は久しぶりにこの魔法を発動する。


 「『審判の右手』」


 それはさながら、大口を開けたクジラのように。

 魔法の発動と同時に出現した門は、ソティが放った魔法を根こそぎ内側へと飲み干した。


 残った魔力の残滓が、キラキラと紫に光る。その頃には、俺は『転移テレポート』で拘束から抜け出していた。


 本命の攻撃だっただけに、今ので戦闘の空気は消え去る。


 「………貴方、本当に何でもありね」

 「まぁね」


 呆れたようなリーゼロッテの言葉に、俺は肩を竦め答えるに留めた。


 

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