第8章 対抗試合編
第1話 選手決めから
第8章、どうぞです。
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午後の実習。しかし今日は教室。少しだけ遅れた俺達だが、どうやら今日は普段とは違うらしい。
なお、ミリア先生が何を察したか、『静かに! 興味本位で聞くのは止めなさい!』という一喝をしてくれたために、長い時間拘束されることは無かった……誤解、とは一概に言えない。
「さて、いよいよ今年も、あの時期がやってきたわよ」
そんなミリア先生が、気を取り直して教卓(?)の前に立ち、ドンっ! と手を着いた。
「そうすか先生……あの時期ですか」
「えぇ、そうよ」
「とうとう、来てしまったんですね」
「一年というのはあっという間ね。そう───クラス対抗試合よ!」
そう言ってホワイトボードを叩くミリア先生。そこには既に、クラス対抗試合に関することだろう文字がびっしりと書かれていた。
そういえば、俺がここに入った時にも言ってたな。今年は拓磨と俺がいるからクラス対抗試合に勝てるだの、いつもは1組に優勝を持ってかれてるだの。
その拓磨達は、どうやら現在ルサイアに向かっているようで、今日はここにはいない。
何故急に向かったのかは知らないが、ミリア先生が朝に言っていたのだ。拓磨のことだ、余程のことがない限り、俺に無言でということは無いはずだが……。
……大丈夫、だよな。俺は一先ず意識を現実世界に戻すことにする。
「さて、一応新しい子はいるし、クラス対抗試合について説明するわよ。特に勇者なんかは出番も多いから、よく聞きなさいね。タクマ君達が居ないのは残念だけど……」
勇者組に対し言うミリア先生。結構空気的な存在だが、勇者はもちろん普通の奴らより強い。
俺とあまり関わりがないのは、勇者は勇者で固まることが多く、俺がどちらかと言うと、この世界の住人たちの方に混ざっているからだ。
少しは交流をした方がいいとは思うが……焦ることはないだろう。
ミリア先生はクラス対抗試合について説明を続けた。
「クラス対抗試合……それは、毎年この時期に行われる、様々な特権を賭けた、文字通り戦争よ」
うん、なんか説明の入り方が物々しいな。
「特別クラスを含めた全6クラスで行われるこの戦争は、3つの種類からなっているの。
1つ目は、団体競技戦。純粋な能力を競う『短距離走』や『重量挙げ』、知識を競う『即答クイズ』、生産技術を競う『早打ち』等々……そういったクラスの総合力が試されるものよ。全員参加で、各種目の合計点から順位を決めるの」
体育祭とはまた違うが、系統的には似たようなものだろうか。
生産は少し不安だが、恐らくそれ以外ならほぼ完璧にこなせるはず。即答クイズなんかは名前から察するに俺の十八番だろう。
「2つ目は、闘技戦。3人か5人のチームを組むチーム戦と、
これも是非とも出たいな。多分結構楽しめるのではないか。
また『過負荷の指輪』の出番が来そうだ。あの、能力を抑えて鍛えている感じが恋しいというか、正直そのぐらいしないと大抵は瞬殺してしまいそうというか。
「最後、3つ目は、魔物戦。理事長が用意した魔物とどこまで戦えるかを競う種目ね。あ、最後まで勝つのを考えちゃダメよ? 理事長、勝てば勝つほどどんどん用意してくるだけだから」
なんだそりゃ。つまり理事長が動けなくなるまで魔物を倒し続けなきゃ終わりはないのか。それ、最早理事長と戦ってるんじゃないか?
「そして、この3つで最も多く得点を稼いだクラスが晴れて優勝。前にも少し言ったけど、優勝した暁には、国立図書館の第一次禁書指定されている書物の閲覧許可や、一人あたり金貨数十枚の賞金に加えて、特に頑張った選手には
正直最後はどうでもいいが、なるほど、豪華な内容だ。特に食指を動かされるようなものはなかったが、こういうのは貰うことに意味がある。
「今年は各クラスに勇者が居るから番狂わせがあるかもしれないけど、こっちにも勇者は居るし、タクマ君達は出られないけど、代わりにイブ君が居るから、十分優勝は狙えるわ!」
そしてサラリと戦力に数えられている俺。まだ来たばかりなんだけどなぁ……グリムガルをああもあっさり倒してしまえばそうなるか。
「と、いうことで、今日からはクラス対抗試合に向けて、授業内容が変わるわ。訓練の時間が多く割り当てられるから、みんな怠けないようにね」
「先生、団体競技戦の種目への割り当ては?」
「もちろん今から行うわ。ちゃんとここに書いてあるでしょ?」
なるほど、ホワイトボードにびっしりと書かれていたのは、競技への割り振りのものか。
ミリア先生はホワイトボードを見せつつ、『うーんと』と人差し指を下顎に当てるという、年に似合わぬ仕草をする。
ところで、この世界は基本的に教師が主導なようで、学級委員的な存在はいないようだ。ミリア先生主体で、始めていく。
ホワイトボードに書かれているのは、団体競技戦とやらの各種競技名。
「はいはーい、色々とこっからまた説明してくのは面倒くさいから、今から各種目の説明が書かれた紙を回していくわ。その中から自分が出来そうなものを選んでちょうだい。取り敢えずは他の人と被ってもいいから、好きに選んで」
そして、ミリア先生はよく見る羊皮紙ではなく、普通のコピー用紙のような紙を配り始める。文字までコビーしたかのように同じなのだが、もしやこの世界はコピー機の代わりになるようなものがあるのだろうか。
そこには随分と読みやすい字で、各種目の説明が簡潔に書かれていた。それらを頭に叩き込むのに、瞬きの時間も必要ない。
『短距離走』ランダムに指定された距離をいち早く走り抜く種目。魔法の使用は禁止。
『重量挙げ』より重い物を持ち上げる種目。魔法の使用は禁止。
『即答クイズ』出題された問題の答えを、いち早く『エアボイス』で担当の審判に伝える種目。答えを間違えた場合、次の問題時に5秒のハンデが付けられる。
『障害物競走』幾つもの障害を乗り越え、最も早くゴールすることを競う種目。選手同士の直接的な妨害は禁止だが、自身を強化したり、間接的な妨害は可能。
『アポートフラッグ』ランダムに出現するフラッグを、ライバルより先にアポートで取る種目。選手同士の妨害や、アポート以外の魔法の使用は禁止。
『テレポートチェイス』テレポートで逃げ回る"兎"を捕まえる種目。全員が敵同士であり味方。テレポート以外の魔法は使用可能。
『フライバード』
『本物を探せ! ドッペルゲンガー』光魔法によってある特定の人物の姿に偽造した複数のスタッフの中から、光魔法で姿を偽造していない本物を探す種目。ただし、スタッフへの接触は禁止。
『早打ち』モデルとなった武器を、早く、かつ正確に打つ鍛冶技術が必要な種目。時間、再現度、武器としての性能などから総合評価を測る。
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『パイルイントロダクション』様々な方法で観客を楽しませる種目。順位は無いが、観客を楽しませれば楽しませるだけ、上限のないポイントが入っていく。
中には日本でも見た事のあるような競技が混ざっているが、ファンタジー世界ならではの競技もあるようだ。
さて、恐らくどれに出ても……いや、障害物競走以外ならどれに出ても問題なくこなせるだろう。障害物競走は、障害物の内容が分からないからなんとも言えない。
しかし、確かにどれも求められる能力が違うな。『即答クイズ』では、魔法の発動速度以外に、問題に答えることができるかどうかも問われるし、『早打ち』は生産技術、『パイルイントロダクション』とやはら想像性と意外性なども必要になってくる。
となると、各々が自身の適性に合わせた競技に出場しなければ、勝ちは難しいことになるが……まだここに来たばっかりの俺では、クラスメイトの得意不得意など全く知らない。選手決めに関してはノータッチしかないだろうな。
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