第58話 無事に
さて、最近また前書きが無かったですが、お久しぶりです。
ここら辺はもうソティメインになっておりますね……まぁ私的にも凄い好きなキャラではありますし、魔力補給ってすごい大義名分ですからね()
──────────────────────────────
理事長の笑みが嫌になってきた俺は、視線で先を促した。
「フフフ。さて……今ので魔法の威力と射程は分かりましたし、属性の方はどうします?」
あぁ、今の魔法でも通るのか。本当に強ければいいんだなこの学校は。理事長の独断であろうが。
ソティの方を見て意見を聞くが、ソティは
……ま、無闇矢鱈に魔法を使用させたくはないしな。
「では、属性確認はパスということで。次は戦闘実技ですが……」
スッと理事長は、袖口からナイフを手元に取りだした。それを持って、ソティへと近づく。
「イブ君のように問答無用で戦うというのでもいいですが、アレは異例が過ぎますからね……今回は通常通りの試験を行います」
「通常通りの試験ですか。具体的には?」
「まずこの訓練場のフィールドから出ない、訓練場を壊さないなんかを前提として、私と戦ってもらいます。ソティ君は好きに攻撃していいです。ただし私からは攻撃しません。防御やカウンターぐらいはしますがね」
「…………」コクリ
ナイフを手の中でクルクルと回しながら言うと戦闘狂感が増すんですが……それを気にせずソティは頷く。
「では……」
パンと手を打った理事長は、次の瞬間にはフィールドの反対側に移動していた。とは言っても、ただ高速で動いただけだ。
しっかりと目で追えていたのはソティも同じようで、それを悟った理事長が少し苦笑い気味。
「……ええと、まぁ、早速始めましょうか」
理事長は少し気まずげに眉を下げた後、すぐに気を取り直して、そんなことを笑顔と共に言った。
それを境に、ソティが雰囲気を一気に鋭くさせ、戦闘が開始した。
ところで、ソティの身体能力はとても高く、理事長にも単純な動きの速さなら負けてはいない。
だが、戦闘技術に関しては劣ってしまうことが否めない。
ソティはその素早い動きを使い、様々な方向から攻撃を仕掛ける。しかし、それら全てを、まるで未来を見ているかのように、理事長は軽々と避け、防御する。
行動の先読み……戦闘に慣れた者ほど感覚は鋭くなって、より精度の高い先読みを発揮する。それは直感で知るものと、思考によって知るものの両方があるが、理事長は意外にも前者のもののように見えた。
こういう行動をしたからこう、という思考ではなく、何の脈絡もない、『次はこう来る』という予知能力にも似た直感……ソティには無いそれを、理事長は持っている。
しかし、それはソティが負けることと同義ではない。ソティとてただただ変化の無い攻撃をし続けることはないだろう。
大きく振りかぶった一撃。理事長がナイフで防ごうとしたところで、突然、ソティの手の中の魔剣が
「…………!」
理事長のナイフは何にもぶつかることなく空を切り、ソティは理事長の懐に潜り込んだ状態で再度手の中に魔剣を召喚し、振り抜く。
完全に意表を着いた攻撃………その攻撃を、理事長はギリギリのところで回避した。
着ているローブに、僅かに切れ込みだけが入る。
「おっとっと……まさか服に当たるとは。一応、全ての攻撃を避けるつもりだったんですがね」
「………」
後方にバク転をしながら距離をとった理事長は、参ったとばかりに零した。複数のナイフをジャグリングしながら、それを一瞬でどこかに消すというマジックショー付きで。
油断なく構えるソティに対して、肩の力を抜いた自然体で接する。
「ですが、勝負はまだ始まったばかりです。ソティ君が我が校に入学するに値するか……しっかりと確かめさせてもらいましょう」
ピッと再度袖口からナイフを出しつつ、理事長は好戦的な笑みを浮かべた。
◆◇◆
「服に当たったのが3回……十分ですね」
「………、…………」
パンパンと服をはたきつつ、理事長は涼しい顔で頷く。ローブに入った切れ込みは合計三つで、最後についた切れ込みが、最も大きい。
対するソティは、少しだけ息を切らしていて、ゆっくりと魔剣を消した。そのまま『ふぅ……』と小さく息を吐く。
まぁ、理事長は強い。ソティがダメージを与えられないのも仕方ないというものだ。
「服に当てられただけ上出来だ。そう落ち込むなよ」
「…………」
ボフン、と倒れ込んできて、上目遣い。頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めるソティは、少し猫のように思える。
毎回思うんだが、頭を撫でられるとそんなに気持ちいいのだろうか。こそばゆさか? 恥ずかしさなのか?
俺だったらむしろ子供扱いされてあまり宜しくない。
「ところで理事長、ソティはどうですか?」
「戦闘技術は驚くほど伸び代がある、魔法に関しても未知数ですが強力……少々他生徒と比べ特殊な部分はありますが、入学基準は優に超える能力です」
「その特殊の部分に関して、どうお考えですか?」
取り敢えず試験の結果を聞く俺。ソティも結果に興味があるのか、俺の隣で理事長を見上げている。
評価は良好。ただし、やはり理事長も、ソティが普通ではないことを見抜いている。
「そうですね……本来は特別クラスに配属したいところですが、それではむしろ問題を誘発しそうな気がしますので……イブ君が常に傍につくことを条件に、入学を許可しましょう」
「……配慮、ありがとうございます」
「…………」
ソティが、目を輝かせている。入学が許可されたことを喜んでいるようだ。
ただ……いや、まぁうん、良いけど。つまり俺とソティが常にそばにいることは公認となった訳なんだよな。
「…………?」
俺の視線に気づいたソティが、コテンと首を傾げた。
………何も言うまい。この子に悪気があるわけじゃない。取り敢えず、まずは片時も離れないというところをどうにかしないといけないんだが、これで学校内では離れられなくなってしまった、と言うだけのことだ。
「あぁそうそうイブ君、少し話は変わりますがよろしいですか?」
「ん、なんです?」
もう用は済んだ、ということにはならず、理事長はそういえばと俺に話しかけてきた。
「この前の魔物の件です。君は当事者でしたよね?」
「えぇまぁ……なにか対応があるんですか?」
「いえ、分かることも少ないですからね。ただグリムガルは私が捕獲した魔物ですから、その魔物が問題を起こしたとなると、少しだけ私やミリア先生にお咎めが来るかもと言うだけです」
「それは……何だかすいません」
「いえいえ、イブ君のせいではありませんよ。それに、今回は君が対応してくれたお陰で被害は出ませんでしたからね。むしろ被害が出ていたら、流石に国からの叱責は免れませんでしたよ」
そういうものか……理事長は笑って言うが、釈然としない感じはある。
ただまぁ、俺が対応したというのは何気最善だった、ということだろうか。自惚れでは無いが、あの魔物の厄介さは『
「さて……ですが逆に言えば、それくらいのものです。もう少し調べるものがあればよかったんですけどね……取り敢えず、ソティ君の入学手続きは迅速に済ませるので、今日はそのままイブ君が連れてください」
「そうですか……お手間をお掛けします」
「いえいえ、これが理事長の務めです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます