第18話 慎重な貴族
えー、読み返してる人、もしくは私の作品を新しく読んでいる人は前の方の前書きで知ってると思いますが……昨日、いや、今日? 昨夜? ともかく、例の蛇足タップリの幕間を公開停止致しました。
運営さんに怒られちゃいまして……(´>ω∂`)
それに伴って、頑張って書いてた金光編も公開できず……うぅ、割と悲しい。無駄な努力をしてしまった。
はい。なので、もし読みたい人、もしくは読めてなかった人がいれば、TwitterのDMやなろうのメッセージで一言くれればコピペしてお渡しします。ルビとかまでは流石に振れないですが……。
これは、私が十八歳になって、ノクターンとかで投稿できるようになるまで、公開はお預けですね(--;)
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人は突然の出来事に対応するには、どうしても一瞬のタイムラグが発生してしまうものだ。
とはいえ、俺には関係の無い話なのだが。
駆け出した俺を咎める声はない。周囲の人間に"駆け出した"と認識されるほど、俺の速度は遅くない。
それは、今まさに目の前で衝突しようとしている2つの集団も同じことだ。俺の姿を認めることは、まず出来なかっただろう。
剣を振りかぶった腰巾着Aと、それに対応しようとする茶髪イケメン。俺はそれらの間へと入り込み、その剣を指で掴み取る。
「なっ!?」
「ッ!?」
そこで、ようやく2人が反応した。いつの間にかそこに居た俺に、イケメンは伸ばしかけた腕を止め、腰巾着Aは硬直する。
後からやってきた風圧が俺の白い髪を揺らし、何となく強者的演出ができているのではないかと。
さて、この後は………。
「───誰だ?」
最もな質問を投げかけてきたのは、マルコだ。なんだかこいつ、本当に小物という感じがしない、中々の豪胆さを持っているのだが。
目を細めて問う姿は、どちらかというと厄介な敵に見える。こいつだけなぁ、ベタじゃないんだよな。
その顔からは警戒が受け取れ、小物臭漂う周囲の腰巾着とは訳が違う。
少し丸い体が、この場合むしろ威圧感を漂わせているぞ。もう少しゲスキャラ感を出したり、イキってくれ。そうすればこっちも困惑が少ない。
いやまぁ、無理だろうが。
とはいえ、さてさて、どういうキャラでいくべきか。
見た目と合わせるなら、丁寧系だろうか?
どうせ後で素に戻るのだから、そこまで気にしなくてもいいんだけどな。
それでも、相手に危機感を抱かせたいとなると、やはり丁寧かつ大胆に行くべきか。
「ちょ、ご主人様!?」
遠くからルナの声が聞こえ、マルコの質問に答える前に、2人が駆け寄ってくる。
その様子に、マルコが眉を顰める。警戒が色濃くなるのが見て取れた。
「突然出て行かないでよ!」
「あぁ、ゴメンゴメン。というか、2人が出てくる必要はなかったけど」
「だって急に出てくからぁ! というか、剣! 剣っ!?」
はいはい、健気なことで。撫での一つでもしてあげたいが、今は流石にアレだろう。
周囲からも目立っているし。
俺が素手で、というか指で掴む剣を見てあわわと驚くルナと、顔面蒼白のミレディを宥めるのに、少し破顔しつつ力を割く。
「おい、俺は誰だと聞いたんだが」
「あぁ、すいません。と言われても、名乗る程のものでもない、ただの野次馬なんですが」
「今の動き、そして奴隷持ち。高位の冒険者か何かか?」
俺の事など聞いちゃいない。勝手に推測していくマルコ。
まぁ間違っているんですが。探索者よりは冒険者の方が多いしな、そっちの結論に至るのは当たり前だが。
冷静すぎるんだよ。とりあえずマルコは厄介そうだと思うことにしよう。
「貴様、何をするっ!」
「ん? あ、これでいいですか?」
「ぬぁっ!?」
すると、ようやく硬直から抜け出した腰巾着Aが叫ぶ。こっちは小物感丸出しだから、俺もやりやすいというかなんというか。主人の言葉を遮っちゃいけないぞ。
敢えて少し力を加えながら剣を離すと、腰巾着Aはそのまま後ろへと尻もちをつく。
観衆の中でこれは、無様なものだなぁ。
そんな意味を込めて嘲笑も向ける。相手は俺と同年代のようだし、別に構わないだろう。
「きき、貴様っ!!」
「よせラルゴ」
動き出そうとしたラルゴとかいう腰巾着にマルコが声をかけ、周りの腰巾着が落ち着くように視線を向ける。
しかし、俺に向けられる敵意は揺るがない。
「ふぅ……この国は、貴重な人材である勇者に手を出しても問題ないんですか?」
「さてな、どう思う?」
「そっちが怪我をして告発するつもりだったってところですかね。勇者に勝てるはずがないですし」
「………」
当たりかな。鋭い眼光が俺を射抜くが、その程度で俺のポーカーフェイスを崩せると思うなよ?
腰巾着達の練度では、この4人には勝てない。マルコもそれは分かっていたはずだ。
少しだけ腰巾着ズがマルコの方を見る。勝てないとわかっていたのに攻撃を許可したのか、とでも咎めるような視線だが、自力で気づく努力をしような。
背後でイケメン勇者が口を開こうとして、頭良い勇者に止められている。ここは俺に任せておこうという算段だろう。
多分普段もそうやるだろうな。
「だとしたら、どうするんだ?」
「目に余る行為なら、確実に信用させられる条件を整えた上で、お父上に話させてもらいますよ」
「……一民間人が父上と話せるわけがない」
「一民間人なら、そうですね。
「………」
一方的に相手を知っているというのは、警戒を与えるのに丁度いい。
言うまでもなく鑑定で名前を確認したのだが、貴族の息子の名前や容姿を民間人が一々把握している可能性は低い。
マルコが普段からここを歩き回っている可能性は少ない。周囲の目にマルコを知っている視線がほとんどないからだ。そうでなくとも、奴の魔力情報を解析すれば分かるが、そこまでするつもりもない。
俺と初対面である以上、俺がマルコを知っているというのは、予めマルコについて調べていたと普通は考える。
先の俺の動きやルナ達のご主人様呼びの件も合わせると、俺がなんの力もない一般人であると思えないだろう。
そして、俺が予想するマルコの頭の回転なら、そこまで考え着くはずで。
「……お前ら、行くぞ」
「マルコ様!? この無礼者を野放しにするのですか!?」
「黙れラルゴ。力で勝てない以上、これ以上ここでやっても単なる無駄だ」
「っ……」
そう言うと、さっさとマルコは立ち去っていく。人垣がさっと割れ、一度こちらに振り返って俺を睨むと、怠そうな足取りのまま消えていった。
ポーカーフェイスや頭脳戦においては、そうそう負ける訳にも行かない。こちとら二カ国分の知識を頭に入れているのだから。
少しだけ、しょうもない勝負に勝った優越感に浸りながら、俺は背後へと振り返った。
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