#08-09: 涙を流す権利は、あなたにもあるでしょう?

 涙をぬぐいながらコア連結室を出て、艦橋ブリッジへと向かう。ヴェーラ麾下の艦隊は全滅した。戦闘は終わっていた。もはや私にできることは何もなかった。


「上級中尉、から通信が」

「メラルティン大佐?」


 ダウェル艦長に頷いて、私は通信を開く。今まさに私たちの上を通過していった巨大な赤い戦闘機エキドナは、まぎれもなくヤーグベルテ最強のパイロット、カティ・メラルティン大佐の乗機だった。


『ソリストはいるかい?』

「はい、大佐」

『見てたよ』


 ヴェーラとの一部始終を。とすると、、遠くに向かって手を振ったのは、もしかして——。


『ご苦労だったな。あいつはアタシの妹分みたいなヤツでね。……すごく優しい子だったんだ。だから……』


 メラルティン大佐はヘルメットを外した。その紺色の瞳が潤んでいるようにみえた。


『アタシとの約束を反故にしやがって。クソッ』


 やり場のない怒りと、喪失感と。そういったものを私はダイレクトに受けた。受け止めなきゃと思った。


『つらい仕事を任せてしまってすまなかった。あとは……アタシの代わりに泣いてやってくれ。女帝が泣いてもサマにならないからな』


 言うが早いか、メラルティン大佐は通信を切ってしまった。


「そうします、大佐」


 私は噴き出るように流れてくる涙を袖で拭きながら、応えた。きっと誰にも聞き取れなかっただろうってくらい、声は震えてしまっていた。


「アルマと二人で、泣きます」


 膝から力が抜けて、私は座り込んでしまった。ダウェル艦長が助けてくれたが、私はそのまま大声で泣いてしまった。何もかもがつらかった。厳しかった。苦しかった。明日のことなんて考えられない。ただ、今はもう、泣くことしかできなかった。こんな風に冷静な私がいて、その事実が私をますますつらくさせた。

 

「みんなみんな、大事な友人で、先輩で、憧れで。私、そんな人たちを何人、殺しちゃったんだろう!」


 私は叫んでいた。泣き叫んでいた。


 ダウェル艦長は何も言わずに私の肩を抱いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

セイレネス・ロンド/セルフィッシュ・スタンド #MSB01 一式鍵 @estzet

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ