第14話 兄と妹

「ご注文はお決まりですか?」

 店員さんがやってきた。

「涼子さん、アレルギーとか苦手なものとかありますか?」

 まりさんの問いに首を横に振る。

「じゃぁ、コース3つ!これと、これとこれ!」

 まりさんがコース料理を3つ注文した。それぞれメインとパスタとピザとデザートで選べるものは全部バラバラで。

「歓迎会なんだし、ぱぁーっと、食べたいもの好きなだけ食べましょう!シェアすればいいよね!」

 誰かと食事をシェアして食べるのはどれくらいぶりだろう。

 なんだか、うけいれられたみたいな気がして、嬉しい。

 食事が届き、取り皿ももらって少しずつ分けて食べることになった。

 どれも、おいしい。

「お兄ちゃんね、ちょっと事情があって中学卒業してすぐに日本を離れて、30になるちょっと前に日本に戻ってきたんだ。だからちょっとばかり、常識に欠けるところろかあるんだけど、悪気はないから許してやって」

 パクパクと食事を堪能しながらまりさんがいろいろなことを話してくれる。

「海外留学か何かですか?すごいですね」

「あー、いや、そういうのともちょっと違うかな」

 社長が苦笑いした。

 じゃぁ、なんだろう。親の仕事についていった?でもまりさんの口ぶりだとまりさんは日本にいたんだよね。親が離婚してバラバラとか……。

 なんだかこれ以上突っ込んで聞くかないほうがよさそうかな?

「そうそう、明日から土日休みで来てもらうということでいいですか?9時18時勤務で」

「え?このタイミングで?お兄ちゃん、面接のときにちゃんとそういう勤務内容とか説明してないの?ちょ、大丈夫?涼子さん、何か困ったこととかおかしなことがあったら私に言って?お兄ちゃんに言いにくいことでも、私に言ってくれれば何とかするから!セクハラとかパワハラとか、お兄ちゃんぶん殴ってやるからね?」

 ふふふ。頼もしい。

「あ、あの、涼子さん、勤務条件で何か確認しておきたいこと、ありますか?」

 社長が慌てて口を開いた。

「じゃぁ、一つ確認したいことがあるんですけれど」

「は、はい、なんでしょうっ!」

 社長が背筋をぴんっと伸ばした。

「会社には駐車場ありますよね?車で通勤しても構いませんか?」

 社長の目がきらきらと輝きだす。

「涼子さん、車も運転できるんですね!すごいですっ!」

 え?あの、別に、そこ、そんなにすごいって言われるようなことでは……。

「お兄ちゃん、私も免許持ってるからね?」

「まりのは、ペーパーだろ?涼子さんは車通勤できるくらい運転ができるんだぞ、すごいじゃないかっ!」

 なんだろうこれ。

 女のくせに運転するなんてっていうアレともちょっと違う気はするけど、反応が過剰……。

「ペーパーでも、運転しようと思えば運転できるんですからね!お兄ちゃんなんて免許持ってないじゃんっ」

 まりさんの言葉に、社長が悲しそうな顔をする。

「し、仕方がないだろう。僕、高校も出てないし、18歳のころは日本にいなかったから自動車学校にも行けなかったんだから……」

 は?

 社長の言葉が何かおかしい。

「時間とお金があれば、今からでも免許取ればいいんじゃないですか?」

 私の言葉に社長が首を傾げた。



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社長の謎の片鱗……もう、ご覧いただいている皆様は薄々お気づきだとは……。

お読みいただきありがとうございます。

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