第6話 面接 2

 目の前に立つ青年は、思っていたギラギラしたセクハラパワハラしそうな俺様タイプの社長とは全く違った。

 むしろパワハラされそうなタイプの社畜臭のする感じ。

 健康的に日に焼けた肌なんだけれど、顔色は少し悪く、目の下のクマがひどい。髪の毛はカットしてもらっているだけといった感じ。流行関係ない大きな眼鏡。少しぽやーんとした印象の凡庸な容姿の男性だ。30前後……同じ年くらいの若い社長だ。

 良くも悪くも中肉中背。太っても痩せてもなく、身長は低くも高くもない。そして、身に着けているのはサイズが微妙にあってないスーツ。

 スーツなのに、うっかり足元はスニーカー。……うっかりじゃなくて、こういうセンスの可能性もある。ちらりと、アンティークテーブルと回転イスの組み合わせを見る。

 向かい合わせに並べられた事務机で面接が始まった。

「えっと、うちの会社は、商品を仕入れて、商品を売る会社です」

 と、まぁ小学生でももうちょっとましな話ができるんじゃないだろうかということから面接は始まった。

 商事会社なので、まぁそうでしょうねと思ったけれど、口に出さない。

「いろいろとね、こういう商品がほしいって注文があって、それを探して仕入れてって仕事してるんだけど、だんだん取引相手の要求が大きくなってきて、ちょっと一人じゃこなしきれなくなって」

 本当にぎりぎりなのだろう。社長の顔は疲れているし、話している内容もちょっとなんか余裕がないというか。頭が働いてないというか。

 大丈夫だろうか。……ブラック企業の香りが……。

「えっと、1か月試用期間ってことで、働いてみていやならやめてもいいので、えーっと……」

 え?試用期間って、会社が辞めさせやすい期間ってことだよね?労働者が辞めやすい期間って意味じゃなかったような……。

「あ、いや、なんならそのあと、試用期間伸ばして3か月とか、えっと、お試しで働いてくれてもいいんだけど……」

 なんだろう。使い捨てされるのかな?試用期間って協調するあたり怪しいぞ?まぁでも給料さえもらえれば短期派遣かなにかと考えればいいのかな?

「あの、試用期間もちゃんと給料は正規の給料出します。それから、うちは残業は一切させません。いや、むしろ残業はお願いだからしないで帰ってください。残業は困るんです、なんせ、残業されると、いろいろと……」

 そこまで言って、社長は頭を下げた。……残業をそこまで拒否するって、残業代を出せないから困るって話?

 えーっと、ここに就職するのはやめたほうがよさそうな……。

「え?ちょっと、何?」

 いや、頭を下げたのではない。意識を失い、ごつんと机に頭をぶつけた。

 いびきが聞こえる。

「あの、大丈夫ですか?」

「5分だけ……むにゃ……なんかすごく、今、気持ちよく眠れそう……むにゃむにゃ……リンゴはもう食べられない……」

「ね、寝てる……。寝言まで……」

 面接中に、社長は寝てしまった。よほど疲れていたのだろう。

「このまま、かえっても大丈夫だろうか?」

 ジリリリリリーン。

 カチャリ。

 うっ、しまった。

 手に持った受話器を耳に当て頭が真っ白になる。

 つい、前職の癖で。電話が鳴ったら3コールまでに取る。……条件反射で電話が鳴ると受話器に手を伸ばしちゃうのは仕方ないっ。

 いやいや、仕方がないとかじゃないよ。どうすんの?つつーと、冷や汗が流れ落ちる

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