第2話 エピローグ~仕事やめました~

 それから、たまっていた有給を取り、最後の日に、会社へと足を向けた。

 部屋の入り口に立つ。部屋からはいろいろな声が聞こえ漏れてきた。

 ずいぶんと騒々しい。私がいないだけで、活気があるのだろうか。

「また、お客様を怒らせたのか?いったいどういう対応をしたんだね?は?マニュアルに沿って対応したが、客が怒り出した?マニュアルに頼りすぎるからそうなるんだ」

 私の作ったマニュアルにミスがあったのでしょうか。そういうときは経営理念を思い出して対応していただかないと。

「おい、この見積書、数字がおかしいって怒られたぞ」

「え?私は渡されたものをそのまま入力しましたけど?」

「そのままって、そりゃ確かに渡したものにミスしたのは俺かもしれないが、明らかにおかしいのくらい入力してて気が付くだろう。なんで教えてくれなかったんだ!」

 あら?明らかにおかしいというのはどれくらいの数字なのでしょう。さすがに入社3年目の子なら毎日見積書を入力していれば、いつもと違うっていうのは気が付くようになりますよね?

「怒って電話が入っています。後で提案されなかったサービスのことで、なぜ初めに教えてくれなかったんだと、どう対応したらいいですか?」

 もしかして、めんどくさいからとしなかった提案なんでしょうか。別のお客様からうちはこうしてもらったとか話を聞けばそういうサービスもあるってわかりますからね。

「おい、だれかPCの使い方を教えてくれ。エクセルのマクロってやつ、新しくこういうのやりたいんだが」

 ああ、前に課長に教えたもの、役立ったんですね。だから、ほかのもマクロ組んで作業することにしたんですね。

「もういや!毎日毎日残業ばっかり!」

「わからないことがあるたびにボーっとしてるからでしょ!誰かに聞きなさいよ」

「誰に聞けばいいのよっ!みんな忙しいからって後回しにするじゃないですかっ!」

 ああ、なんだか飲み会のときにあれほど仲がよかった社員たちが口喧嘩をしている。

 いつまでもドアの外で聞き耳を立てているわけにもいかない。退社のあいさつをして、荷物をまとめないと。

 ノックをして部屋に入る。

「あ、先輩!先輩、教えてください」

 後輩に一人がにっこり笑った。

 教えたがり病の私に気を使ったのだろうか。教えてほしいだなんて。

「先輩が急に長期の休みを取るから大変だったんですよ」

 私がいると雰囲気が悪くなるんでしょう?気を使わなくてもいいんです。

「課長、今までありがとうございました」

 荷物をまとめて課長と皆に退職のあいさつをして部屋を出ていく。

 さぁ、新しい仕事を探さなければ。

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