悪童版元・偽計社
因富士泰
偽計社文庫
これまで我が国における「奇書」三大出版社の内、二社に関連した書籍を紹介しました。最後となった偽計社にまつわる書籍は、1987年~1998年まで同社の社長を務めた因富士泰氏による解説書です。
著者によると、1990年代の社内記録の中に、毎年、出版に関して「いたずら」をしかけていたという記述が見られるそうです。
具体的にはどのような「いたずら」なのか。
これは現代でも同じですが、各出版社は年間、月間、季節ごとといったスパンで、めいめいの出版予定を公表しています。ネット隆盛の現在であればHP上で、それ以前は無料の広報誌などに掲載する形で、今後、どのような書籍を発行するかを予告していました。この予告はあくまで予定であり、作家が締め切りを落とすなど諸般の事情により発行が先延ばしになるという事例が往々にして発生します。
偽計社の「いたずら」とはこの出版予定に、永遠に発行される予定のないラインナップを加えることでした。
『「月が綺麗ですね」と夏目漱石』
『四十七都道府県独立マニュアル』
『ふぇちしずむ』
この三作は、刊行予定が公表されはしたもののいつまで経っても販売されることはなく、いつしか出版予定からも消え去っていました。世の中には偽計社の出版物を全て購入しているマニアもいたそうで、彼らはその段階になったようやく「いたずら」に気付いたとのこと。
現代なら出版社の信用問題に発展しそうな所業ですが、当時は「偽計社ならそういうこともやりかねないだろう」と読者にも受け入れられたそうです。
悪ノリした偽計社ファンの中には、出版されてもいない上記図書のレビューを記した同人誌を発行した者もいたそうです。それらのレビューは回りまわってWEB上にも転載されているとのこと。
どこかのブログ等で上記資料の書評を見かけたら、それは完全な捏造ですのでご注意下さい。
(このレビューは妄想に基づくものです)
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