四十七都道府県独立マニュアル

皇 清隆(著)


偽計社文庫


 

  『琉球独立論』という書物があります。(著:松島秦勝 講談社文庫) 

  沖縄が現在置かれている状況を踏まえ、日本という枠組みの中から脱却、つまり「独立」を志した場合、どのような取り組みによって実現可能となるものなのかを検討した思考実験の書です。

  こうした「独立論」は日本の四十七都道府県の中で、基本的に沖縄くらいでしか唱えられないものです。米軍基地問題、民族的な帰属認識、地政学の側面からある意味特異な位置づけにある行政区画だからこそ、日本という枠組みから自由になりたいという発想が生まれ、その声に応えようとする考察も現われるのでしょう。


 しかしながら、沖縄のような背景を持たない都道府県であっても、独立を志向する可能性はあり得るだろうし、そういう思考実験をしてもいいのではないか――そのような発想から編まれたのが本書です。ようするに、東京の、大阪の、京都の、三重の、山形の……それぞれの住民達が、「独立したい」と希求した場合にどのような方法があるものか、都道府県ごとにパターン分けして真面目に考察しています。独立を志向する場合、そもそも住民のコンセンサスが得られなければ話にならないので、「住民投票で過半数以上の支持を得られた」という前提から始めているのはご愛嬌。


 なお、諸条件を考慮した上で、各都道府県には「独立実現可能性ランク」というものが設定されています。ランク最低の47位は東京。政治・行政・金融の中心地であるがゆえに、いくら独立を願っても国家も他地域も承認しないだろうというのが理由です。逆にランク一位、最も独立が容易とされるのが京都。ただしこの独立というのは、「世界有数の観光都市であることを利用して金融・行政・政治は従来通り日本国の枠組みに従った上で、名目上の『独立』を得る」というもので、手放しで喜べるものではなかったりします。


 巻末には、各都道府県出身の政財界の有力者リストが添付されています。独立運動を実行に移すのであれば、これらの大物の助力を得ることは不可欠と言えるでしょう。  


(このレビューは妄想に基づくものです)

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