最「硬」小説選手権

 ハント・マユー(著)


 大西総家(訳)


 ミュンヒハウゼン文庫



 最近はそれほどでもないが、十数年前はとにかく一冊の分量が多い文庫・ノベルスが流行していた。京●夏彦作品などが代表格で、あまりの分厚さに、重さで殺人が可能なのではないか、と揶揄する声もあったくらいだ。


 殺人ではないが、小説の分厚さ、破壊力を競う企画がアメリカで開催されていた。本書はその全貌を記した作品である。

 2001年から2015年の間、コロラド州・スカーフィールドで開かれていた「最『硬』小説選手権」がそれである。商業ルートで出版された小説であれば出版国を問わず参加可能で、運営側が用意した泥の塊、氷柱・しっくいの壁などを一冊の本を使ってどれだけ破壊できるかを競うバカ企画だ。ここまでやりたい放題するなら、別に小説だけではなくノンフィクションを加えてもいいような気がしないでもないが、ここでジャンルを絞るのがこだわりというやつかもしれない。


 ちなみに日本で出版された小説では、2006年大会で森博嗣の『有限と微小のパン』(ノベルス版)が優勝している。同作品が日本で最長の小説、というわけでもないのだが、装丁や紙質によるコンディションが関係してくるのかもしれない。


 なお本大会は、2015年大会を機に休止となった。この年、優勝したノルウェーの警察小説『瞬きと罪悪』は表紙と裏表紙にチタン合金をあしらった装丁で、大会のために無意味な装飾を施したのではないかと内外で批判を浴びている。


 


(このレビューはすべて妄想に基づいたものです)

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