第五十四話 くじ屋で美少女は子猫になる
散歩はここまでにして、一旦マシロタウンまで戻って来た。
まだ、学校に行くまでは一時間以上ある。それまでにこのマシロタウンになるべく心残りを残さないようにしたいと思ったのだ。
いずれここを出るためにである。俺らは少々、この町で有名になり過ぎてしまった。
その時、ルナがピコとツインテールを跳ねさせた。
彼女の目の先には、にわとりがいた。おっきいにわとりで表通りに面するカウンターに立っている。しかもサングラスなんてかけていて、彼あるいは彼女がCPということがわかった。
店の看板には、古臭いデザインで『くじ屋・こけっこーナンバーワン』と書いてあった。
「くじ屋だってにぃに、いこ〜!」
ルナは俺の左手を引っ張って、くじ屋の方にぐいぐい引っ張る。おいおいと俺は連れられて、スピカもため息をついて着いてきた。
「いらっしゃ〜い。コトリカのくじ屋へようこそなり!」
「おはよ、コトリカさん! 男の子なのね?」
「あっしが男か女かなんてどうでもいいっしょ〜? そんなのひよこの時に忘れちまったよ!」
このサングラスのにわとり、かなりメタい発言をしてくるぞ。やはり、ふたおらのCPは特徴的なキャラが多かった。
「一回800Zだ。どうだい、やってくかい?」
「わたしたちはこの間の委員長さんとの対決でかなりお金に余裕がありますからね? にぃに、やってみませんか?」
ふだんはお金にうるさいスピカも珍しくやる気だ。確かに、俺は50000Z以上あるし、スピカとルナも20000Z近くあった。
「一回だけっ、ねえ一回だけ〜」
ルナが俺の袖をぐいぐい引っ張っておねだりしてくる。別に止める理由もなかったので、俺は了承した。
「ま、いいんじゃない?」
「やた〜!」
ルナは800Zをコトリカに渡して、ガラガラを回した。
中から、銀色の玉が出てくる。
「大当たり〜!」
早朝なのに、周りがどよよっとした。ほんと、ルナの豪運はどうなっとんのじゃ! さっきのやさしいぐりむにるそーどの直後なのにまた当てちまったぞ!
「二等B賞、《マシロタウンの猫飯NYAウェイトレス衣装》をプレゼントしま〜す!」
「わあ〜☆」
コトリカから、猫耳メイドの着ていた黄色ワンピースを渡されて、ルナはおめめにお星様を浮かべた。
嬉しくなりすぎて、金ついんてをひらひらさせて俺の腰にギュッと抱きついて、きらきらのおめめで上目に喋る。
「にぃに、着てみていい?」
「うん、いいよ」
ここでルナが着替えることになり、どこからともなく16人に増えたストーカーどもがゴクリと喉を鳴らした。しかし、ルナが視界でウィンドウを開いて『くるりん☆』とかわいい効果音で回ったら、そこには《マシロタウンの猫飯NYAウェイトレス衣装》に着替えたルナが立っていた。
金髪ツインテールに黄色のふりふりワンピース、それに黒い猫耳と尻尾もついていて、本物のちっちゃい子猫ちゃんのようだ。
「「「「うぉおおおおお」」」」
またルナ派が増えてしまうぞ。ストーカーどもは一気にしゃとりまくった。絶対、SNSにUPされまくってまた閲覧数を稼ぎまくんぞ。
「にゃ〜っ」
ルナはそのあざとい姿のまま再び俺に抱きついて、お腹に頭をぐりぐりしてくる。俺はぽんぽん彼女の頭を撫でてやった。
「む〜っ」
おや、スピカが片頬を膨らませて不機嫌になった。
銀髪ロングをさらさらして、銀の天使はコトリカの前に立つと一気にお金をじゃらじゃら渡してしまった。
「10回ですっ!」
ドドン! いつもは几帳面なスピカの謎の戦いが始まってしまった。
to be continued...
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