第四十八話 大親友のちっこい狼女との共闘


《デスノウラビット HP18/23》


 正直、このモンスターかなりきつい。

 体格が小さいから小回りが利く。しかも、HPがまだ少ない俺らでは攻撃の一発一発がやたら重い。


「うぅ、私体力6しかないからすごく怖いよ」


 そんな委員長の肩に俺は手をポンと置いた。


「せっかく一緒にプレイしてんだしさ? いつも通り気楽に行こうぜ?」

「うんっ! にぃにくん優しい」


 そこでデスノウラビットが一気にこちらに向かい突進してきた。

 俺と委員長は左右に跳び直線上から逃れる。しかし、デスノウラビットは矛先を変えて委員長の方に突っ込んでいった。委員長は慌ててローリングして回避、ダダダっと逃げ回る。


「わわわっ、にぃにくん助けて〜!」


 スピカやルナといい、俺に救いの手を差し伸べてほしい女の子は案外多いらしい。


「待ってろ!」

「あう!」


 デスノウラビットのツノの衝撃波が委員長の背中に直撃した。空圧が円の形で広がり、彼女はビリリとした刺激を与えられて前のめりに倒れる。ダメージが表示された。


《デスノウラビットの攻撃! 委員長が3ダメージ!》

《委員長 3/13》


 絶体絶命だ!

 俺は委員長とデスノウラビットの境界に割り込む。

 一気にデスノウラビットはツノによる連続攻撃を放ってきた。

 落ち着け、俺……ここはVRMMOの世界、現実とは違いアバターの性能は通常の人間の身体機能よりもずっと高く設定されている。

 意識を集中、放たれた光の矛先へ氷の剣を滑らせて弾く。それをいくつも繰り返す。


「え、?」


 委員長が何やら呟いた。言葉から察するに、たぶん盾などを使わずに攻撃専用の武器でガードする技術のことだろう。奇跡的に成功した。


「もしかして才能あんのか、俺!」


 敵の攻撃が終わった瞬間に俺は氷の剣で再びデスノウラビットの顔面をぶった切った。


《にぃにの攻撃! デスノウラビットに2ダメージ!》

《デスノウラビット 16/23》


 その時、デスノウラビットの黒曜石みたいなツノがパキンと折れた。


《デスノウラビットの部位破壊成功! HP−10%》

《デスノウラビット 14/23》


「委員長、拾ってくれ!」

「あうん。え、何このアイテム?」


 委員長が何やら呟いたが、あまり構っていられない。

 デスノウラビットは背後に仰け反り、しかしすぐ俺の顔面をツノを突こうとする。

 ダメージによる痛覚はないと理解していながらも、やはり人間の本能に従って恐怖を感じる。

 一瞬の隙にデスノウラビットのツノが肩に当たった。


《にぃにへ4ダメージ!》

《にぃに 6/10》


「なに4ダメージ!」


 これではあと二撃でしまいじゃないか!

 やはりあの双子ちゃんがいなければこんなモンスターにここまでの苦戦を強いられる!


「委員長、ヘルプ!」

「え、私がにぃにくんの助けになれる?」

「なにいってんだよ、カマン!」

「よーし、じゃ行くぞ〜!」


 委員長はデスノウラビットの視界に入り、敵の視線を誘導する。

 その隙に俺は氷の剣で二連撃! 青白い直線と水色の細線が二回走り、デスノウラビットへ一気にダメージを与えられた。


《デスノウラビットへ4ダメージ!》

《デスノウラビット 10/23》


 ここで、デスノウラビットが後ろ足でぶっ飛び、委員長へ留めを刺そうと試みる。


「きゃっ!」


 委員長は横飛びした。よってデスノウラビットの突進攻撃は空振りして、俺は背後からデスノウラビットのお尻を切りつけることに成功する。


「ギギギ〜!」


《デスノウラビットへ3ダメージ!》

《デスノウラビット 7/23》


 通常よりダメージが大きい? こいつ、お尻が弱点なのか!


「委員長は攻撃しなくていい! とりあえず逃げてくれ!」

「わ、わかった!」


 前回の戦いでの双子ちゃんの戦法を真似て、デスノウラビットの脇腹へ氷の剣で切り込みを入れる。

 快音が鳴り響きデスノウラビットのHPが削られた。


《デスノウラビットへ2ダメージ!》

《デスノウラビット 5/23》


 委員長は必死にデスノウラビットから逃走する。このモンスター、委員長の方ばかりに狙いを定めてくる。運がいいのか悪いのか、おかげでこのダメージをお尻に与えられた。


《デスノウラビットへ3ダメージ!》

《デスノウラビット HP2/23》


 あと一発だ! ……なのに、委員長がこけてしまった。

 雪の煙が小さく起きて、委員長は涙目で仰天する。


「ぴゃう〜!」


 あの子、こんな大きな声出せるのかなんて面白く思っていたら、デスノウラビットはピョーンと大ジャンプした。

 そのまま委員長へトドメを刺そうと落下した!

 絶体絶命か——と思いきや、ぐぬぬっと委員長が雪原の上で仰向けになった。


「なーんてね! 私だってっ!」


 なんと空中で刀を横に滑らせたのだ。


!」


 デスノウラビットへ白い線が走り、ダメージが表示された。


《デスノウラビットへ2ダメージ!》

《デスノウラビットを倒した! HP0/23》


「うおぉおおおお! 委員長すげえええ!」


 俺は大喜びして委員長の方へ走っていく。

 彼女は起き上がり、あれ、向かいくる俺の方へ両手を広げた。


 女神様のようににっこり笑って、——ギュっ! 飛び込むように俺を抱きすくめて優雅に回る。


 俺のほっぺに白く柔らかな女の子のほっぺで頬ずりして、バレリーナのようにエレガントに二人して舞って笑いあった。

 委員長はとっても幸せそうに俺の耳元で囁いてくれた。


「楽しかったね……ね?」


 俺は思わず苦笑して頷いた。スピカとルナに負けないくらい不思議な娘なのだ、このケモミミのちっこい狼女子はね。むろん、おっきい尻尾は嬉しそうにゆりゆりしていて、俺はホッと安心した。

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