第四十五話 ひとりぼっちの少女は運命的に出会った


 雪山でスノウラビットを二人して追いかけていた。

 委員長は運動が苦手なので、やはり俺よりも足が遅い。けれど、それは足の動かし方の問題で、スタミナの低減による不快感もなくて、体も軽いようだ。


「ねえ、言ってなかったかな?」


 委員長は群青の目で俺を見た。青いケモミミはぺたっとしている。彼女は微笑して喋った。


「私、中学生の頃まで友達がいなかったんだ」

「え、そうなん?」


 当然、俺はびっくりした。たくさんの仲間に囲まれてる今からはとても想像できない過去だった。


「えへ、運動音痴で、走り方が変っていわれてね? 変でしょ?」


 委員長はちょっとへっぴり腰で太い尻尾をゆりゆり走っていたが、ガーリーでかわいかった。


「そうか? 女の子っぽくて可愛いじゃん」

「かわっ……優しい……」


 ほっぺを赤くして、委員長は笑った。


「覚えてる? 入学式の日の席は、にぃにくんと隣同士だった」

「エ、そうだっけ?」

「もう、忘れちゃったの?」

「ごめん」

「ふふ、いいよ。忘れたならそれでいい」


 委員長は赤いほっぺのまま俺の隣で遠くを眺めた。白一面の雪山がどこまでも続いている。


「君はいってくれたよ」


 委員長は薄ぼんやりとした目で語った。


「——『隣の席だし、仲良くしようぜ』ってね? にやにや笑ってさ。たったそれだけで、私の長年の呪いは解けちゃったんだ」

「なんで?」

「そりゃ、他人から仲良くなろうねなんていわれたことが初めてだったから、嬉しかった。……にぃにくんはそれから、本当に仲良くしてくれたよ。そのことがとても幸せでさ。今も、だよ」


 ケモミミをペタっとして、青目と赤いほっぺで、尻尾をゆりゆりして俺を見た。ちょっと涙目だ。

 俺は茶化してしまった。


「おいおい、フラグ立てちまったか?」

「ははっ、立ってたりして〜?」


 委員長は俺の手を優しく握って、自分のほっぺにつけた。


「ね?」


 やばい、ふいにドキッと来たぞ。

 その時、黒スノウラビットが視界の雪面からぴょこっと出てきた。


「あ、二つ名モンスターだぞ、にぃにくん!」

「うし、任せとけ!」

「うんっ! 信じてるよっ!」


 やけに大きな返事で委員長はにぱっとはにかんでくれた。俺は羞恥を悟られない様に頷く。

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