第三十九話 かまくらの中の一悶着
スピカとルナがかまくらを作った。
あまり大きくなくて、三人で中に入るとギュウギュウになってしまった。
「なんでこんなところにみんなして入らにゃならんのだ?」
俺が困惑して聞くとスピカとルナはにっこにこで回答した。
「だって楽しいじゃないですか?」
「ねー?」
俺も歳なのか、そういうのに鈍感になってきちまった。ガキの頃は雪さえあったら一日中遊んでられたんだがね。
左右でスピカとルナは体育座りでにっこにこなのだ。
「さて、それでは会議を始めましょう!」
ようやく本題に入る様にしてスピカが喋ったが、俺には何のことかわからない。
するとスピカがむーと俺を睨んだ。
「白達磨ドレス[絆]の会議ですよ!」
「え、あれはルナがもらったんじゃないの?」
「そ、そうだよ! これはぼくの!」
ルナは白達磨ドレス[絆]をアイテムポーチから出して、ギュッと両手に抱く。
「えぇええ〜! なんでそうなるのですか〜!」
あれ、スピカは大声を出して反論した。
「それ、絆装備ですよ! ふたおらの世界でも上位陣御用達のレアアイテムなのです! さっきの白達磨の隠れ家でのミッションクリアは3%の確率での奇跡なのですよ! お姉様が持ったら宝の持ち腐れです!」
「ななな! タカラノモチクサレじゃないもん!」
エ、なぜちょっと片言なのだ。言葉の意味、わかっとるか?
「だってお姉様、その装備の効果もよく知らないでしょ?」
「え、えぇっと、わかるもん!」
「じゃ、いってみなさいよ!」
「あ、あぅ、にぃに……っ」
俺の右肩に顔を当ててルナは泣いてしまう。
「ほら、そうやってお姉様はいつも、にぃにに泣きついたら何でも許されると思ってる! にぃに、この子に惑わされてはダメです!」
「ああ、ほら泣くなよルナ。喧嘩はやめようぜ、スピカ」
「なぁ……っ」
しまった。これにスピカは両目にうるうるの涙を溜めてしまった。
そのまま、くしゅっと鼻水をすすって、ポロポロ泣かれてしまった。
「にぃにのばかぁああ〜」
そのまま、カマクラから飛び出してしまう。
「あ、おい!」
俺は慌てて追いかけるが、スピカはメチャクチャ速かった。つるつるの丘を両膝でかわいく滑り降りて、そのままピュ〜と中心街の方へと走り去ってしまった。
俺はやっちまったと顔に手を当てる。ルナも赤いほっぺでカマクラの中から、呆然と妹の消えてった方向を見ていた。
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