第二十七話 いざ、ゴールのお宝へGO!!


《氷の塊》が景品のスケートリンクっぽい氷面の前でスピカが「はーい」と手を上げた。


「最初に滑りたい人〜?」


 てん・てん・てん。

 俺とルナは目をそらす。要はとおーーーくにある巨大な氷の結晶から《氷の剣》を作るために必要なアイテムをゲットしたいのだ。しかし、なんというか、恐怖……純粋な恐怖である。


「こわ」


 ルナもジト目だ。

 こほっ、スピカは咳払いした。


「言い方が悪かったですね? ……《氷の塊》に一番乗りしたいひと〜!」


 これで「はーい」と手を上げたらアホである。やることは一緒だ。


「えぇ! お姉様、おてて上げないの? あそこ、一番乗りしたいでしょ?」

「やらないよバカスピカ!」


 ルナは幼稚園児か。ワンチャン現役でもこの誘いには乗らないぞ。


「だって、あそこよく見たらすごく遠いよ! 助走は目一杯つけないとならないし。あそこにゴールできる確率なんてどれくらい!」

「大丈夫。ゲームですから何回でもやり直せます。お姉様、挑戦することから逃げてはいけません。ほら、泣くのはやめて。いきなさい。わたしとにぃには見守っています」

「う、うん……! じゃないぃ〜! これはぼくの挑戦じゃない!」


 危なかった。一瞬乗ったぞルナよ。次回から気をつける様に。

 しかし、なんか子供が初めておつかいでもするみたいな空気だ。


「あ〜! わかりましたよ!」


 おや、スピカが妙なテンションになった。


「ルナもにぃにもわたしが口先でごまかして生きてると思ってるでしょ! えぇ、はぃはぃ——やったりますよ!」

「わっ、スピカが珍しく精神論だ!」

「にぃに!」


 銀の前髪を斜めに揺らし、スピカはにっとした。


「……ご褒美に今夜耳かきしてください♡」

「あぁ〜! ずるいずるいずるいずるい! だったらルナも〜!」

「はいもう遅いでーす。にぃにも許しませーん。だ〜め〜」

「バカスピカは黙れ〜!」


 そうなのだ。ゲームではグズだが現実では俺もちゃんとしたお兄ちゃんなのだ。自己肯定感を忘れてはならない。悪口いわれすぎてマジモンのヒキニートになるトコだった。


「あぁ、いいぞスピカ、ルナ。お膝の上でかりかりしてやろう」

「「かりかり♡」」


 大小のおぱいの前で両手のぐーを作り、妹の双子ちゃんは双方にんまりした。


「力が……お兄ちゃんパワーがわたしの体にみなぎってきます!」


 お兄ちゃん力と双子力は相互に干渉してお互いパワーアップしていく。つまり、双子ちゃんが運営のツボにはまって蝶々を発したら、おまけで兄もパワーアッブするし、運営がお兄ちゃんを羨む、あるいはかっこいいと判断し、お兄ちゃん力と共に蝶々のエフェクトが与えたら、双子ちゃんの力も増幅される。ここら辺は審判のジャッジが曖昧で、ライブ感。楽しけりゃ何でもありだ。


 思っきし、スケートリンクからスピカは距離を取った。

 ふわっ! 銀ロングがカーテンのように膨らみ、青目に光の線が差し込む。たッ、足元を蹴る。

 道中、ルナが横から手を出し、スピカとハイタッチする。ピンクのスターのエフェクトがキラと散って、ラストに俺の手にもスピカの手がパチと鳴った。白銀の蝶々が銀髪から溢れて、双子力が最高頂に!


 次のシーンで、こて! スタート地点でこけて、スピカはスケートリンクを明後日の方向に滑っていく。


「わわわ〜!」


 大声を出してあわあわ《氷の塊》に向かおうとするがくるくる回転して、やがて道半ばで静止してしまった。


 女の子座りでキョトンの顔のスピカである。

 立ち上がろうとしても、白パンプスがつるつるして力が入らない。


 しばらくスピカは呆然と真顔で俺とルナの方を見ていたが、そのおっきい青目がふいにうるっと光った。

 ぽろぽろ……大粒の涙を零して、子供みたいに泣きじゃくる。


「えぐっ。うあぁんん……だずげてぇ……」


 さっきまでテンション高まっていたのに最悪の結果がこれである。ルナも幼顔のほっぺを両手で包み、金ツインテをしょんぼりして悩ましげに嘆息する。


  to be contined...

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