第二十五話 かわいく思われたい心理


 スピカが前を歩いて、俺とルナが手を結びその後ろに続くいつものスタイルで、三人は雪山の洞窟を進む。もう、けっこう奥まで来ていて、天からいっぱいの巨大つららがこちらを見下していた。青白くて現実よりも透明度の高いうるうるの光が眩しい。


 ひんやりした空気に不快感はなくて、体の周りでぱちぱち氷の砕ける感覚がした。地面は変わらず薄い氷の膜が張ってあり、つるつる滑る。かれこれ三人で十回以上転んでいた。


「綺麗なところですね〜? プレイする前から実況プレイで知っていましたが、やはり【ふたおら】の景色のビジュアル値はもはや芸術の域ですよう」


 はぁ〜、瞳の奥に小さい赤のハートを浮かべてスピカがうっとりする。となりのルナもにっこり目を細めこちらを上目で見る。


「キレイだね、にぃに?」


 その微笑みがとても幻想的にかわいく見えて俺はびっくりした。さらさらの金毛の前髪。長い金のまつ毛に縁取られた赤のおめめにも汚れはなくて、本物の吸血鬼のお姫様と会話している様だ。


 こく、子供の頭を小さく傾げて、不思議そうな目をしてルナはうすい唇を開く。


「どうしたの?」


 俺はにっとして正直に答えた。


「いや、かわいいなと思って」

「「えぇええぇえええ!」」


 いや、なぜルナだけではなくスピカまで驚くのだ。


「にぃに、それはお姉様がかわいいのではなくお姉様のデザインがかわいいだけでは!」

「なんでスピカがいうのさぁ!」


 早速の銀髪ロングの妹の苦言に金髪ツインテの姉は猛反発する。確かに自分でいうのならあれだが他人から言われたらイラっとするぞ。

 俺は一応つけ加えておく。


「ルナのデザインは俺が現実のお前に似せて作ったのだ。だから、もしかしたら、俺の目にはルナが金ピカの天使みたいに映ってるのかも」

「はわぁぅ」


 変な声を出された。ルナに喜んでもらいたくてそう説明したら、ふたごおんらいんの感情感知により、ルナの童顔が真っ赤になった。おっきい赤目がうるうるし、わわわっとするお口からチラと犬歯が見えて、片手をちっぱいの前でぐーにする。リアルが物足りなくなるくらいキュートなモーションだ。


 それから嬉し恥ずかしのあれこれを込めて、氷の地面を俯く——ギュ♡ デレたルナは俺の手をしっかり結び直した。


 まだ赤いお顔で、ふいっ……! 涙目で俺を見上げて健気に微笑してくれた。


「ありがと、にぃに……?」


 おや、どこか勘違したのかうっとりの目をしている。

 俺が微笑ましい目をしたら、前方のスピカからいきなり頬を両手でむにとされた。


「にぃにぃ〜! そっち派ですか! ルナ派ですかにぃにぃい〜!」

「いやいや、お前の顔だって可愛いさ。ほらもってよく見せてくれ」


 前髪の下の青目に睨まれたまま、俺もスピカの白のほっぺを両手でむにとしたら、お互い頬を包みあう形になってしまった。おや、なんだか無自覚系ラノベ主人公のセクハラじみてきたぞ。


 スピカの白のほっぺたが次第に赤くなり、銀糸のまつ毛に縁取られた二つの青目がうるうるの湖面みたいに立体的に揺れる。我慢してスゥと息を吸って両目を『く』のシンメトリーにし一気に爆発させた。


「「にぃにのばかぁあぁああ!」」


 なぜかここでルナの叫びも混じり、双子ちゃんの声がシンクロした。二人から、あむあむあむっ、両肩を甘噛みされた。ゾンビに噛まれた悪役のように俺は押し倒される。うん、楽しい楽しい。やっぱり土曜はサイコーね? この現実が空想の世界から出てもずっと続けばよいと思うのだ。


  to be continued...

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