第二十四話 ちゅいた〜んのうわさ
「見てください、にぃに、お姉様!」
妹の双子ちゃんに続いて崖の階段を上ったあと、少し休憩していたら、開いたウィンドウでインターネットを見ていた妹スピカが大声を出した。
三人で透明な氷塊に座っていた。最初これが《氷の塊》ではないかとドキドキしたが、調べてみてもアイテムではなくただの椅子でがっかりした。
スピカは『ちゅいた〜ん』という中高生に人気のSNSを開いていた。現在進行形で人々のぼやきが流れて賑わっておる。
「わたし、ふたごおんらいんについて少し調べてみました。そしたら、ほら!」
彼女の顔の前のウィンドウに人々のぼやきが連続して流れた。
《今話題のスノウタウンのお餅プレイヤー、シャとりました!》
「シャとりってなぁにスピカ?」
ルナが子供っぽく質問したら、やはり先生風にスピカは回答した。
「シャッター切るの略です。つまり撮影したって意味ですね?」
「ほんとだ!」
次にルナがびっくりする。スピカがスクロールした先にルナとスピカが並び、歌いながら微笑むかわいいスクリーンショットが写っていた。
「きゃ〜、ぼくだ!」
「わたしです!」
画像の下に《いいっスね 112》と表示があった。
俺は詳しげなスピカに訊ねる。
「この《いいっスね》って何だ?」
「共感度です。つまり、112人のお方がこの写真のかわいさに共感しました!」
「すごい」
俺は素直に感心する。
次々にスピカがスクロールしていく。
アイテム屋の店員に怯える双子ちゃん。《いいっスね 259》
猫飯NYAで大泣きする双子ちゃん。《いいっスね 578》
雪山で「「ばかばかばかばか!」」と怒り合う双子ちゃんの動画。《いいっスね 1056》
この世界にいる変態の数に恐れ入る。
「このグリムニルさんとのPvP動画なんて《いいっスね 2120》です!」
「すごーい!」
ちょうどアザレアを雷撃で倒したシーンだ。コメントがすごいことになっている。
《二人ともレベル2の初心者だろ!》
《金銀の天使すげー!》
《でも兄はヒキニート》
《すげーよ、こんなザコでもかわいい双子ちゃんいるだけで有名人()》
《でも炎上商法》
《双子=天使 兄=う〇こ》
「おい、こいつらに暴言吐いてよろしいか」
「にぃに、気を確かにっ!」
「今の時代、悪口じゃ数には敵いません。ここは冷静に……!」
スピカのウィンドウで喧嘩を試みたらむろん二人に止められた。
結果、お尻の硬くつるつるした氷塊に、見返してやるの決意を込めて俺は座り直した。
to be contined...
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