第二十一話 帰ったら幸せの〇〇


 しばらくホワイトスライムを狩り続けていたら、超巨大白玉がぼよよんぼよよんと雪面を跳ねているのを見つけた。

 ジト目をして、ルナが声を発する。


「あのホワイトスライム、大きい」


 三メートルある。丸い目玉焼きのおめめがあらぬ方向に動いていた。巨体が跳ねるのと同じ動きでころころ黒目が転がっている。


「あれは二つ名モンスターですね? 名前を見てください」


 どでかいホワイトスライムの頭の上にモンスター名が表示された。


《白玉大王 HP16/16》


「しらたまだいおー?」


 キョトンとルナが首を傾げる。金のツインテールがふりっと揺れた。

 銀の前髪をなでてスピカが説明を加えてくれた。


「二つ名モンスターとは、ある一定の条件を満たすことによって出現する、通常よりも強い個体です! たぶん、今回はホワイトスライムを倒しまくり、条件が満たされました!」


 俺ら三人はお顔を合わせる。


「ホワスラハートが期待できるぞ」

「ですね?」

「やた〜!」


 ダッシュで近づくと、ぼよよん、ぼよよん、と白玉大王は跳ねまくり、俺らの頭上の空に跳ぶ。

 黒い影が三人を覆い、直後————真下に落下したッ!


「「「わ」」」


 ズズゥン! 雪面から粉雪の煙が吹いて、大爆発したようになる。ぼっふん! 全方位に小型の雪崩が襲来した。

 俺は無事だったが、スピカとルナの素足がぺろんと雪上から伸びていた。慌てて引っぱってJC×2を救助する。


「「ぷはっ」」


 ぶるぶるぶる、雪の中から全身が抜けたあとも二人のお顔は青い。全身が小刻みに震えている。


「あれ、体がうまく動かない……」

「これは状態異常の《氷結》ですね……」


 がくがく、両手で旅人のコートの体を抱いて、ルナとスピカは凍える。


「スタミナが最低値から回復しなくなって、走ったりできなくなります……」

「やばいのでは?」

「「やばい……」」


 やはり双子ちゃん、反応がぴったしだ。二人は取り柄の元気も絞られてしまったようで、双子力をうまく発動できない。

 よって、俺は一人で白玉大王に立ち向かった。


 外野のプレイヤーらが「「「ゲーム! オーバ!」」」とえげつねえブーイングをかましてくる。ええい黙りやがれ。


「俺が相手だ!」


 白玉大王を見上げてかっこつけたが、奴さんはばいいんとジャンプして、直後に俺に大ダメージを喰らわそうとする。


「ぐ!」


 ダッシュで距離を取り、ダイレクトアタックと雪崩を回避する。ぼふふーんっ! 粉雪が大爆発し、再び雪崩が巻き起こる。


「ちゃんと狙え白玉大王!」

「しとめい、やつをしとめい!」

「お餅プレイヤーに死と絶望を!」

「いてまぃいいい!」


 連中のブーイングに人間の血が通っていない。言いたい放題しやがって、許せん!

 ぼよよん、ぼよよん、白玉大王は方向転換して俺を睨む。いや、黒目はあらぬ方向に泳いでいたが、再びジャンプする。

 俺は決死のダイブで回避を試みる。しかし、雪崩に呑まれてしまった。


「ごわふ」


 ようやくもがいて雪上に立つがダメージが表示される。


「にぃに HP4/10」


 そういえば俺はスピカとルナとちがってまだレベル1だ。このままでは純粋にゲームオーバーになる。


「ひゃははははははあ! ざまぁない!」

「見ろよ、おいみんな最高の見せもんだぁ!」

「悔しいか、ほれ怒ってみろよ? にぃに、怒ったモン!」


 連中の煽りレベルがじみに高い……!

 くそ、このままでは終わりかと諦めかけた頃である。


「————にぃにぃ、負けないでくださいぃ!」

「————にぃには絶対に勝てるもんっ!」


 金銀の天使のエールが聞こえた。

 愛する妹の双子ちゃんは青くなった顔で震えながら、必死に俺を元気づける。


「にぃにはわたしの大切な家族! そんなに汚く罵るのはやめなさい!」

「ばかばかばかばか! にぃにのこと悪くいうな〜!」


 俺は感動で血色がよくなった。っておい、なぜ野次馬の顔色までよくなっておる。双子のお言葉だったら何でも嬉しいのかお前らバカか。

 その時、俺の体から半透明の蝶々がちらついた。これは、お兄ちゃん力か? あの時、グリムニルが使っていたものと同じ種類。お餅プレイヤー同士の戦いで、彼がエメラルドグリーンの蝶々を芽吹かせていたのを想起した。


 俺は雪面を蹴り、跳躍する。


 バシュっ! 雪の煙が伸びて、俺は青空に浮かび——垂直落下の踵落としを白玉大王の脳天に直撃させた。


 ばいぃいん! 確かな手応え、白玉大王にダメージが付与された。


《白玉大王 HP10/16》


「おいおい調子に乗るなこの!」

「白玉大王、今すぐそいつにトドメを!」

「あぁ、なにやっとる!」


 言葉を選ばんか双子マニアよ。白玉大王はお前らのしもべか。野生のモンスターだろアホか。

 俺が着雪したら、白玉大王がごろろと前方に転がった。

 俺は両手を前に出して——全力で正面から受け止める!


 ぶにょにょにょにょ! 手の指が白玉大王のゼリー状の巨体に食い込む。雪が削れて俺は背後に滑る。青白い蝶々も減衰していく。


 金銀の天使は二人で声を揃えて、決意して……衝撃の一言を告げた。


「「……にぃに、帰ったら一緒にお風呂に入ろうね♡」」


 ズゴオォオオンンン! 連中の大ショックが雷撃となって雪面に電波した。


「あわあわっこしよ♡」

「髪の毛も洗いっこしましょ♡」

「お顔は優しくね♡」

「三人でお湯に入るのです♡」


「「「「おいおいおいおいおいおいおい!」」」」


 ひな壇芸人のガヤかい。別に我が家では普通なのだが、そろそろスピカとルナも大きくなってきたし、この反応を見るにやめた方がいいかもしれない。そこをスピカは計算していたのか、二人の連続エールにより俺のお兄ちゃん力がクリスタルの青白い蝶々となり炸裂した。


 グゥウン! 両手で白玉大王の巨体を晴天に掲げた。

 直後、全力で扉をこじ開けるように開く。

 ぶちぶちぃ! 白玉大王は千切れて目を×にして真っ二つになった。


《DEAD END!! 白玉大王は即死した》


 ポワワァン☆ 白玉大王は水色の光になって四散する。

 真っ白の雪の結晶みたいなアイテムが俺の片手にドロップした。


《ホワスラハートをGETした》


 金銀の天使がJCのさらさらロングヘアとツインテールをなびかせて、元気いっぱいに走ってくる。

 二人でギュ〜♡ にんまり俺の腰に抱きついた。


「にぃに、やりましたよ!」

「お風呂、一緒に入っててよかったね!」

「あまり外で言わない方がいいぞ」

「恥ずかしい?」

「にぃにのえっち♡」


 などとにこにこ会話していたら、ぱた、ぱたぱたぱた、一人、二人とプレイヤーが倒れていって、やがて大量の廃人が雪上に転がった。すまないとは謝らんぞ。


  to be contined...

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