第十四話 グリムニルへの要求


 雪原。俺、スピカ、ルナ&竜騎士、サンバ鎧の双子が真正面で睨み合った。

 夜空は群青で、深海の色をしている。灰色の雲はなくて、青白い星々がシュガーケーキの様にまぶされている。


 ぞろぞろ、マシロタウンで噂らしい俺らと、最強の装備チームの対峙を見物するために、お兄ちゃんと双子のプレイヤーが集まってくる。もちろん、俺、スピカ、ルナは気後れしてしまったが、竜騎士の兄とサンバ鎧の双子は全く気にしていない。


 何者だ、この方々? 竜騎士の兄は腕組みしたまま、ドラゴンの兜の奥の目を白く光らせて語る。


「我の名はグリムニル。おい、自己紹介をしろ、二人とも」


 その声に、サンバの衣装の青ロングヘアの女の子が冷たい目で続く。マジメちゃんといった感じだ。しかもちっぱい。直感で分かる。この子は妹である。


「ネモフィラ」


 さらに、赤ロングヘアの女の子がおどおど股のところで指をツンツンさせてた。姉っぽい雰囲気を感じた。こっちは胸がおっきい。


「アザレアです……」


 なんか、俺のチームも自己紹介しないと失礼に思えたので口を開く。


「俺はにぃにだ」


 次に、妹スピカが不審な目のまま声を発する。


「スピカです」


 最後に、姉ルナが俺の背に半分隠れて、ぽそぽそ喋った。


「ルナ」


 グリムニルは、やけに白い歯で笑い、大声で喋る。


「ほう! スピカにルナ、つまり星と月か! なかなかいい名を持っているじゃないか! 双子への愛のセンスを感じる!」

「ネモフィラ、アザレア。それって確か花の名前だ。好きなのか?」

「わはははははっ!」


 いや、質問に答えんか。話の一方通行か。


「で、何の用でしょう? わたしら、絶賛、もめている最中でして」


 続くスピカの声に、グリムニルは衝撃の一言を告げた。


「PvPを挑みたい!」


 なんと、俺らに勝ち目0の提案ではないか。


「安心しろ、この装備では挑まない!」


 ぱんっ、グリムニルが手を叩くと、ネモフィラとアザレアも合わせて平民の服に変身した。さらには武器みたいなものも所持していない。


「これでどうだ。悪くない条件だろ?」

「……待った」


 この際、俺はもう少し譲歩してもらうことにした。


「このふたごおんらいんはアクション的な要素も多い。あなた方のHPを俺らの半分まで減らしてくれ」

「ほう! そこは盲点だった! よかろう、いいハンデだ!」


 民族衣装的なワンピースを着たネモフィラとアザレアは少しも臆さない。なかなかやるじゃん。


「さらに!」


 もうちっと俺は条件をつけ加えてみる。


「この世界にはAttackやGuardのスキル値がある。おそらく、俺らとあなた方ではこの差が大きいため、兄および双子は俺らに一切打撃を与えないものとする!」

「……スキルポイントを一旦リセットしたらいいのでは?」

「確かに、。あくまでフェアにいかせてくれないか」

「……ぅあっはっはっは! 面白い! 我らから殴る蹴る等のアクションは取らない!」


 この時から、民族衣装の双子のお顔に違和感が出てきた。眉がぴくぴく動き始める。


「しーかーもー!」


 もらえるだけハンデをもらいたい。


「このゲームでは、双子の設定がものをいう。だが、いまいち俺らはこの双子力というものをうまく引き出すことがない。よって、自由自在に双子力を使えるあなた方は動かないで攻撃や防御が可能なはずだ」

「…………それは我らに移動するなということか?」

「……そうだ」

「……うぁ、うぁっはっはっはっは! ユニークな提案だ! 受けて立とうではないか!」

「さらに体力はやっぱり1とする!」

「お、おぉう!」

「おぉーにぃーいぃーさぁーまぁーっ!」


 青ロングのネモフィラがぶち切れた。


「それって、私たちが体力1で敵から一撃ももらえないしぃ! 物理攻撃の手段も取れない! ステータス値もほとんど一緒で、回避行動も禁止ってことだよぉ! 大丈夫なのぉ!」

「だだ、大丈夫だって! 我らは最強じゃないか!」

「最強の要素全部取っ払ったじゃない!」

「我らの双子愛を見せてやろうぞ!」

「むー! あ、お前、まだハンデを要求する気ね! もう、ぜったい譲歩しないんだからぁ!」


 まだ、顎に手を当て悩む俺を青髪を夜叉のように振るいネモフィラが牽制した。仕方ない、奪えるだけ奪ったから、あとは全力でやるのみだ。


 赤髪のアザレアはひぃいぃいと青い顔で口をあわあわする。おそらく彼女が姉であり、基本的に妹の方がしっかりしているのはどこも一緒だ。これは義兄としての直感だ。


「では、始めようぞ!」


 グリムニルは平民の服で腕組みし、意識でウィンドウを展開して目線で俺にメッセージを送る。ネモフィラはまだ納得いかない感じで、アザレアはガビーンとしている。


《PvPを挑まれました》

《受けますか?》


 俺は、銀髪白ワンピのスピカと金髪黒ワンピのルナの二人を見て、語りかける。


「すまない、こんなことになってしまったがいけそうか?」

「恐らくグリムニルさんは上位ランカー。ここで勝利したら、プレイヤーランキングもかなり上昇するでしょう。条件も悪くありません。わたしは乗ります」

「ぼくもやる」

「よし」


 義兄の俺をふたごおんらいんに誘っただけあり、やはり、彼女らもこうした要素は大好物の様だ。

 俺は選択肢の《→はい》を選ぶ。


 水晶玉が連続して反響する音。

 キュキュルルル! 透明の衝撃は決勝ステージを構築する。

 雪原に七色のレーザービーム。観戦者の兄×双子の妹はすごい人数になってしまった。恐らく、録画しているチームもいるぞ。


 電磁波が夜空に敵チームのHPを表示した。


《グリムニル HP1/25110》

《ネモフィラ HP1/19500》

《アザレア HP1/43120》


 なに! あの赤髪のおどおどした女の子の体力が四万越えだ!

 俺らの《HP10/10》の体力がかなり頼りなく思える。

 だが、敵は強力かつ無慈悲なハンデのオンパレード状態だ。勝たせてもらう。


「いくぞ、スピカ、ルナ!」

「はい!」

「うん!」


 山の雪原でお餅プレイヤー同士のスリーマンセルVSスリーマンセルが開幕した。

 こうして。

 スノウタウンの歴史に残るPPが爆誕する。


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