〜 二日目 〜

第八話 アイテム屋の店主


 翌日の夜。ふたごおんらいんにログインした。

 正直、昨日の今日なのでゆっくり眠りたかったが、案の定、スピカとルナが許してくれなかった。二人は、俺が帰宅したら、抱きつくように両手を引っ張って重い腰をPCの前に座らせた。三人でゲームヘッドを被り、VRの世界に入った。


「町ですよ、町!」

「いこう、にぃに!」


 銀世界で、俺の両手を引っ張る、銀髪ロング白ワンピ&金髪ツインテ黒ワンピの双子の義妹である。昨日と違い、夜空は晴れていて、月光に少し溶けた雪面がきらきら光っていた。

 昨夜とは打って変わってハイキングでもするように俺らは町に到着した。もちろん、本日もお兄ちゃん×双子の姉妹は大量の人口密度で、歩くたび肩や手がぶつかる。もしこれが侍であれば刀がぶつかり斬り合いが勃発していたろう。


 俺は左右の手でしっかり妹スピカと姉ルナを引いて進む。


《アイテム屋に行こう》


 視界のメッセージウィンドウに従い、矢印の方向に進行する。

 さっきからすごい視線を感じる。気のせいかと思っていたが、スピカとルナも気づいていて、幼子のように怯えて俺の腰にくっつく。


「銀髪の天使……金髪の天使……」

「ヒキニート……」


 待て、さっきから聞こえるヒキニートとはさては俺のことだな。何がどうなってヒキニートになったのか知らぬが、終わってる人みたいに聞こえるからやめてほしい。


 とにかく、ストーリーを進めるため人口の密集した店と店の間を歩く。宿屋、くじ屋、飯屋。ファンタジーでよくあるラインナップの中にアイテム屋はあった。


 そこにPCの店主はいた。バンダナを巻いたおっさんで恰幅がよい。平台の上にHPポーションやMPポーション、剣や盾、服なんかも置いてあった。ちょこっとこのゲームの楽しみ方、理解したかもしれない。


「おや、双子ちゃんかわいいね」


 開口一番いわれたが、きわどい発言である。ナチュラルに「あら〜、かわいい双子ちゃんね?」とかではなくて、イントネーションが「あの双子かわいくね?」って感じで、込められている愛情の成分が多分ちがう。

 にこやかな男のごつごつの顔がどことなくゲスに見えてきた。銀のスピカと金のルナはさっと俺の後ろに隠れる。


「ここはアイテムのお店さ」


 男はぽんっと丸いお腹を叩いた。

 ゲームのモーションで両手をふっと広げる。


「気になる商品はあるかい?」

「ありません」

「ないんかい」


 べし。俺の即答に、客の肩に片手でチョップを入れるバンダナの店主。ほんわか関西人テイストでファンタジーとのノリに温度差を感じた。世界観、イエローカード。現時点では冗談としておく。


「ま、君はいい。問題は双子ちゃんの方さ」


 にたっ、男はにやけた。


「何か聞きたいことは?」

「ひぃ」

「にぃに……」


 俺の背でうるうるの涙目で小さく震える銀と金の天使。この店主、双子の何を問題にしているのか非常に開発者に問いたいところだが、早めに切り上げるため、二人は首を左右にふりふりする。金銀の髪の毛から純白と漆黒の蝶々がきらきらこぼれる。


「ところで困った。ポーションの材料がない」


 ところでの切り替え方、便利か。十個くらい話すっ飛ばしたぞ。


「三人に取って来てほしい」


 結局、お客にお願いしよった。こいつの目的は何だ。商売する気あるか。今のところ信用率0%だぞ。

 俺の後ろで双子の姉妹の銀髪×金髪が、白黒の蝶々を零してブンブン左右に振られた。

 ストーリーの進行上、手っ取り早いと判断し俺はしぶしぶ了承した。


《クエストを受注しました》

《店主のスライムゼリーだ! クリア条件 スライムゼリー×1の入手》


 おい、こいつの体液みたいな表現でかなり不愉快である。

 この辺りから、少しずつ運営への不満が影を見せる。


  to be continued...

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