第七話 お餅プレイヤー


 PvPが終了して、破壊された雪原が再生していく。

 爆心地の中心で、おにぃ、レディピーチ、レディチェリーは放心状態の後、化け物でも見る目でこちらを見てくる。


「おお、お前ら何者だ……? 初心者の見た目をした玄人——初心者狩り狩りか!」

「いいえ。わたしらはただの初心者です」


 どう答えようかあぐねて、肩の雪を払って妹スピカが答えたので、俺とルナもこくこくこく頷く。なんか、悪いことしてないのにこちらが悪人のように思えてくる。


「ありえない、ありえないありえないありえない!」


 おにぃの戦慄に、レディピーチとレディチェリーもとっさに旦那の背に隠れてしまう。それくらい先のルナの攻撃は規格外だったらしい。


 くしゅっ、ルナは打開策を考えるのを諦めて、またくしゃみのモーションで遊び始めた。


 しかも、俺らの手はまだ繋がれたままなのだ。


「よよ、よく見たら、銀髪と金髪の双子味も凄まじいものがある……」


 双子味とは……。何やら、おにぃが力説し始めた。

 黒眼帯をパチと締め直して、漫画であったら劇画風に語る。


「まず、お顔の造形がすごい。二人とも、よく似ているようで目元に違いがある。お、俺なら無意識に同じように作ってしまう二重まぶたの開かれ具合……性格も二人とも全く違うのにちゃんと双子としての個性が出ている……手抜きや妥協というものが一切ない……!」


 じっと、俺とルナの繋がれた手を見る。雪の中でもかじかむことなく仲良しだ。


「PvPは終わったというのにまだ結ばれたままのおてて。くしゃみのモーションで遊ぶ、おそらくは双子の姉を特に咎めることなく優しい包容力で見守るお兄ちゃん味。妹の方は果敢に俺らに挑みかかってくるが、後ろのお兄ちゃんを守るためというママ感と、いざとなったらお兄ちゃんが助けてくれるの妹感がすさまじい浸透率を誇り、三人の絆に一体感を出している——」

「なんですかこいつバカですか」

「にぃに、相手にしない方がいい!」


 銀髪と金髪を揺らし、スピカとルナがビビっておにぃを見る。


「……にぃにと兄を呼ぶ時の声にが全くない……ありえない、なんだこの設定の立体感は……」


 まじでバカだぞこいつ。立体感ってなに。

 吹雪に負けながら、仕方なく俺は答え合わせしてやった。


「当たり前だ。俺らは本物の兄と双子の姉妹である」

「なななななな——ッ!」


 おにぃの声が夜の純白の世界にこだました。

 レディピーチとレディチェリーも新雪を頭や肩に積もらせたまま絶句する。そんなすごいこと喋ってしまったかと俺ら三人は眉をしかめる。


だと……?」

「お餅とは、スピカ?」


 すぐに俺が前を見て質問したら、銀髪から銀の蝶々をこぼしスピカは振り向く。しぶしぶ答えてくれた。彼女も早くここから撤退したいらしい。


「本物の双子のプレイヤーを持つお兄ちゃん、双子持ち、からお餅という言葉は生まれました」


 ここまで聞いて、語弊が生まれると思い、おにぃにこう付け加えておく。


「リアルの兄というか、俺は義兄だ」


 バチゴーン! 雷でも直撃した衝撃の仰天顔をおにぃは見せた。やはり劇画調なのだ。

 ひぃとレディピーチとレディチェリーはおにぃの心が壊れたことに悲鳴をあげる。


「ど、どうしたのだ?」


 こわごわ俺が質問しても、おにぃはピクとも動かない。


「あぅ、本物の兄妹じゃないし、変……?」


 吹雪の闇で、ルナがしょんぼりたずねたら、おにぃが小声で反論した。ようやく声が出た感じだ。


(ばかっしょ……それは見ようによっちゃ長所だろ……)


「にぃに。こいつアホです」


 悔しげにスピカが断言してしまった。

 このタイミングで俺は双子の妹らにお願いした。


「スピカ、ルナ。兄ちゃんもう眠いよ」


 夜空が白んでもおかしくない時間帯だ。


「え〜? ルナ、もっと遊びた〜い♡」

「スピカも遊ぶ〜♡」


 ハートのエフェクトをぽわぽわ浮かべて、俺の腕を左右からぐいぐい引っぱる。銀ロングと金ツインテの姉妹に、なぜか、おにぃはいよいよ白目をむく。


 銀世界。ドッと疲れが全身に回った。


 二人の頭をポンとやり、はーい、の返事をもらった。

 半透明のウィンドウを展開して、俺らはログアウトした。


 マシロタウンの町へは明日向かおう。エピソードにはあまり期待しないでおく。


 この時、俺らは知らなかったのだ。

 このPvPが、ちょっとした話題を呼んでしまうことに——。


 to be continued...

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