ふたごおんらいん

りんご屋さん

〜 一日目 〜

第一話 双子のキャラクター作成


 銀のロングヘアのスピカは、白いワンピースを着ていた。

 いつもの困り顔で、心細そうに手の指をふわふわの胸の前で組む。


 金のツインテールのルナは、黒いワンピースを着ていた。

 勝気な目をして、いつも怒っているように見える。


「……こんなのでどうだ?」

「最初はこんなものです、よね?」

「ぜーんぜん、話にならないわ」


 サイバー空間。一面、オブジェクトはなかった。果てしないスペースがどこまでも広がっている。

 しかも、スピカは許してくれたが、ルナに怒られた。


 ここは、ふたごおんらいん——通称【ふたおら】のキャラクター作成ページだ。

 まだ、二人の設定を新しく作る段階で、景色は存在しない。


【ふたおら】とは……双子への愛に満ちたクレイジーなオンラインゲームである。設定がかなり特殊で、三人のメンバーでチームを組むことが推奨される。

 作品の中で、三名は、兄、双子の妹の役を演じて運営の課題をクリアしていくのだ。しかも、勝利条件が、双子への愛……つまりで決まるというから、一部のゲーマーからは神ゲーと称されて、ふつうのゲーマーからはクソゲーと揶揄される。


 必ず三人でプレイしなきゃならなくはない。「結局のところ、三人でプレイしているプレイヤーの方が、絆、つまり双子愛がある!」とチャットで誰かが声高に語っていたが、たぶん頭おかしい。


 だいたい、男三人で組んだり、本物の兄妹じゃない三名がチームになったりする。

 しかし、俺のところは本物の兄妹であり姉妹だ。

 しかも、彼女らから見たら、俺は義兄なのだ。


「俺的には、妹のおぱーいの大小で個性を出したつもりだが」

「にぃに。それは、世の男性がたいていロ〇コンで、年上に貧乳属性を与えることによって、姉としてのデメリットを打ち消したって意味ですね?」

「なにが姉のデメリットじゃ! にぃにはちがうよね? こんなちんちくりんより、姉×妹、二つの属性を持つ贅沢なぼくの方が好きよね?」

「胸がちんちくりんなのはお姉さまでしょ! わたしにはおっぱいがありますからね〜?」

「ぼくにだってあるわバカスピカ!」


 むー! 双子の姉妹はにらみ合った。

 なにいっとる、こいつら。


 俺の場合、双子への愛は通常の家族が抱いているものと同じくらいの量なのだ。【ふたおら】は、スピカ&ルナに無理やり一緒にプレイしたいと誘われた。


「この銀髪ロングの設定、わたしはとっても好きですよ!」


 にまっ。スピカはさらっと自分の絹みたいなシルバーの毛髪を払った。ホワイトの蝶々の燐光がこぼれる。もちろん、ゲーム上のヘアスタイルで実際とは似ても似つかない。


「銀髪のお姫様、憧れますものね?」

「ぼくも金髪ツインテール! かわいい!」


 縄跳びのように両手で金ツインテを子供みたいにふりふりする、ルナ。大人っぽいブラックの蝶々の燐光が生まれた。

 そこに、スピカが怪しく笑った。


「ふふふ、気づいてないのですねお姉さま。ここでもツインテールという妹属性を与えられて、姉のデメリットをうまく中和されていることに」

「だーかーらー! 姉はデメリットじゃない! それに、にぃにからしたらぼくも妹だ!」

「ほら、やっぱり妹がいいじゃないですか。妹×妹である真の妹のわたしの勝利です!」

「ばーか! 姉×妹の贅沢なぼくの一人勝ちだ!」


 きゃんきゃん、子犬みたいにじゃれあう妹×2を死んだうんちゃらの目で見る。虚しかった。

 しかも、今は深夜の時間帯であり、個人的にとても眠い。明日も学校があるのに、体力おばけのこいつらに付き合っていたら、脳がダメージを受けてハゲる。女子中学生ってどうしてこうも元気なのか。たぶん、これをいったらネットでバカにされる。

 だって俺も高校生だからである。


「つまり、このまま進めていいのか?」


 頃合いを見て、問うたら、二人は左右でちがう反応を見せた。

 にまっ、スピカは、祈るようにふわふわの胸の前で指を組み、乙女に小首を傾げる。

 ルナは、ちっさいふくらみの前に腕組みし、ツンデレふうに顔を上に向ける。


「いいと思います☆」

「勝手にしたら?」

「じゃ、そうする」


 視界のウィンドウで、キャラクター設定の状況を指先で《完了》にしたら《次へ》のメッセージウィンドウが流れて、サイバー空間に一匹のスライムがポムっと現れた。


 目玉焼きのおめめ、半分溶けたエメラルドグリーンのゼリー状の体。体内で、こぽこぽ、小さい気泡が立っている。

 ゲームでおなじみのあいつなのだ。

 銀髪ロングに白ワンピのスピカに、金髪ツインテに黒ワンピのルナの二人は、俺の前に立って、特撮ヒーローの決めポーズを取った。

 二人して、声高らかに語る。


「にぃにはわたしが守る!」

「にぃにの敵はぼくが倒す!」


 チュートリアルだが、このバトルで俺らの方向性が決まったように思われた。


 to be continued...

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