FileNo.8 プリディクション - 24
「……話を戻すぜ。お前らが攻められてる立場にあるのは間違いねえ。あたしは侵入者迎撃用と思しき魔術装置をぶち壊したわけだし、お前らはその侵入者迎撃装置で『誰か』を狙い続けてる」
――きっと坂田先生のことだ。
「そんな中、逃げるでもなくお前はわざわざこっちへ
「『わたしは
……遠くで、ヘリコプターのプロペラ音が
夕暮れの、ボロボロに
「少なくとも、お前こそが各種魔術装置を動かす中心人物の筈だ。魔術装置の仕組みから逆算すると、そう考えるのが一番妥当だしな」
「仕組み、でございますか」
「お前、ヴードゥーの神官なんだろ?」
……ヴ―ドゥー。聞こえたキーワードに、あたしは顔を
確か、アフリカかどこかで
「ヴードゥーでは人間の
まず、特製のウィジャ盤で遊んだ人間の魂を『把握』する。そう、『把握』だ。プランシェットの奴にはマーキングって言ったが、こっちの方がより実態に即してる。ウィジャ盤を介して送った呪力で、お前はその人間の魂の特徴を把握し、識別できるようになるんだ。ここでの狙いはあくまで識別までだから、後で除霊師がウィジャ盤の利用者を
そしてヴードゥーの神官であるお前は、世界を構成する無数の霊的存在を知覚できる。人間の魂も含めた個々の識別には距離的な制約もつくだろうが、少なくともお前は、この街全体くらいであれば識別が可能な筈だ」
『この町にゃ、最寄り駅に帰ってくる度、空に持ち物をブン投げる風習でもあるのか?』
「ここまでが分割式呪術の第一段階。そして第二段階――恐らくは何らかの魔術装置の発動をきっかけに、その内容に応じて識別済みの魂を呪力で操作し、人々に特定の動作を強制する。今回は『
ああそうそう。前に会った時、あたしはお前が『
「ご
傍の魔術師――神官って呼ぶべきなのかな――が、どうやらしずしずと頭を下げたようだった。先生は舌打ちをする。実に腹立たしい、といった調子で。
「気に入らねーな、あっさり認めやがって。魂の識別情報なんてのは、
「有り得ないことではないと思いますが」
「そうかね。だがあたしには、お前が『主』と表現する奴と、他ならないお前自身が、どこまでも対等な関係だと考えた方がしっくりくるぜ。で、もしそうだとした場合……お前は自分の所業をすべて、『主』の責任だ、っつってなすり付けてるように思える」
気に入らねーな、と先生は改めて吐き捨てた。その時。
顔を伏せたまま、何とか目線を上げて前方を視野に入れようとしていたあたしの前に、一筋の青紫色の耀きが走った。
「気に入らねーよマジで。お前のその『わたしに罪は
一応教えてやるけどな、この国の刑法じゃあ、
それはあたしにとって、何らかの前兆に思えた。
感情を抑えるようにつらつらと――しかし強い口調で先生は神官に言葉を投げ続ける。それと同時に、あたしの視野で、二度、三度と、線香花火の火花のように、細かな輝きが走っていく。
何をしてるんだろう、とあたしは思った。先生は間違いなく重傷な筈だ。多分、もうまともに動くのも難しい筈。だけどこの輝きはきっと、先生が『何か』をしようとしている、その前兆に間違いない。
「あなたは」
そんな、先生に対し。
「どこまでも、純粋な方なのですね。操る力こそ、
傍の神官は、どこまでも美しく、整った――無感情な声で告げる。
「その実、何よりも善を
興味深い、と
「もういい。分かった」
強い、何もかもを吹き飛ばすような風が前方から吹き
「お前も魔術装置の防衛システムたちと同じだ。自分を
先生は――白衣をはためかせ、両手の指の間に古びたお守りをぎっちりと
「まるで、雷獣のよう」
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