第183話 世界の真実
一真が次元にある神の世界に帰って来てから一時間が経った。
結果は二つのチームのどちらも負けた。
しかも、殆どの仲間を失って。
だが、今はそれよりも理解できない事がある。
それはエトの存在である。
一真は看病をしてくれているフレイに話しかける。
「…… フレイ、さっき言った事って本当なんだよな?」
「そうだよー」
「やっぱりそうか……」
フレイ…… いや、それ以外の仲間も全てが口を揃えて答える。
エトはあの戦いには参加していないと。
何故そんな事が起きてるのか。
考えようとすると頭が痛くなる。
何故こんな事が起きてるのか。
そもそもエトが生きているならレイアは死ななくて済んだのでは?
一真の頬に一粒の涙が流れる。
全ては止められなかった自分のせいであり、弱さのせいであるというのに。
「うぅ……」
「……フレイ?」
そうやって後悔に打ちひしがれているとすすり泣く声が聞こえる。
一真はゆっくりと声のする方を見ると、なんとフレイが膝をつき泣いていた。
元気に振る舞ってはいたが、この場にいないフレイ、そして彼女の親友であるプレケケが戦死した事を知りとうとう耐えられなくなったのだろう。
一真は涙を吹きベッドから立ち上がるとフレイに近づく。
「…… フレイ」
「うぅ、一真…… 私は、私は……」
「今は我慢しなくていい。 俺は少し出てくる」
「…… どこ行くの?」
「エトのとこ」
一真はそう言うと扉を空けて出ていく。
考えても頭痛がそれを遮るのならエト自身に聞けばいい。
何故生きているのか?
何故エトが戦いに参加していた事を皆んなは忘れているのか?
一真は戦神であるギエルの元に向かう。
そこにエトがいる事は知っているのだから。
そして、戦神に会ったあの場所に到着すると上に向かおうとする。
しかし、近くの草むらから声が聞こえたので隠れてそれを聞く。
「ゼフは強者であった。 これは受け入れなければならん。 そして、考えなければならない。 我々の行く末を」
「そんなに思いつめないでよ。 僕がなんとかするからさ」
その声には両方ともに聞き覚えがあった。
戦神であるギエルと創造神であるエトのものだ。
「それは叶わん事だ。 我はあの戦いから力の全てを失った。 今や最下級の魔物にすら勝てん」
「そうなんだね…… やっぱりゼフと戦うのは早かったかな……」
「いや、そうでもない。 あの時が最善であった。 仕方のない事である」
「そう言ってくれると助かるよ。 そういえば最近頭痛の方はどう?」
「特に変わらずだ。 だが、一つそれで気づいた事がある」
「…… それはなんだい?」
その瞬間、何かを感じた一真の背筋が凍りつく。
これは殺気なのか、それは分からない。
だが、ギエルは次の瞬間、とんでもない事を口走る。
「それはお前の事を考えた時だ、エト」
一真はそれに少し心当たりがあった。
だから、妙に納得してしまう。
「…… へぇ、僕が何かしたというのかい?」
「そもそも何故…… 我の隣にいる? この場所にいる? お前は誰だ?」
「面白い冗談だね。 それで本当のところはどうなんだい?」
「我は能力に詳しい訳ではない。 だが、貴様は創ったのだろう。 この世界が貴様の思うようになるようにと。 そして、我々神々の記憶の中に居るはずのない創造神を」
「…… そうか、ここら辺が潮時か」
「本性を表したか」
「創造神、それはこの世界に存在しない神だ。 だから、それに入り込んだ。 だけど、ゼフに殺られたのは痛かったな。 まさかもう一人の僕が馬鹿な事を考えたせいで…… 僕が創った創造神という記憶が薄れバレてしまったんだから」
エトはそう言って動こうとした時、ギエルが激昂しながら叫ぶ。
「動くな! 動けば斬る…… 我の射程範囲だ」
「今の君に僕を倒せるの?」
「ああ、勿論だ」
「…… 一ついい事を教えてあげるよ。 創造の能力では自分の本体すらも創る事ができる。 だから、僕が死んでも他の本体が引き継ぐよ」
「だが、それが一体いなくなれば大きな支障が出るのではないか?」
「ご名答、流石は戦神だね。 でも、もういいんだ。 この強者が現れない世界を維持する事も君のような元々の強者を監視する事もね。 だって、僕が最後にやる事はこの神の世界を崩壊させる事だからね」
「…… まさか! 貴様!」
「もう遅いよ、後は僕が手を下すまでもない」
「…… 素直に喋ったのもそういう事か……」
「そうだよ、君はもう死ぬのだから」
エトがそう言った瞬間、地面が大きく揺れる。
敵襲、普通ならそう考えるだろう。
しかし、それはあまりにも絶望的な敵であった。
神々の世界には巨大な結界を張っているのだが、それを這いずり回る巨大な蟲。
見た目はムカデのようだが、明らかに強度ある甲殻と鋭利な脚と牙。
そんな蟲が神々の世界を包み込むようにして巻きついている。
「…… お前は誰だ」
ギエルはエトを見据えながらそう言うと、エトは嬉しそうな笑みを浮かべながら口を開く。
「42柱が一つ、創造のエト。 君達を陥れた悪魔の名前だよ」
戦神はそれを聞いた後、殺された仲間の思いを胸に斬りかかるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます