第11話『異世界転生オンライン:ドリームランド王国』
銀星と虚子は、『異世界転生オンライン』の始まりの地であるドリームランド王国の存在する、魔法の森で目覚める。この魔法の森は全てのプレイイヤーのとなる場所でもある。
「おお……最近のMMORPGのアバターは結構リアルだな。ゲームの進化は日進月歩だな。それに、俺もミームもゲームの中なのに普段と同じ外見だ。このアバターはミームが作ったのか?」
「そうなの。Modでかーちんと、ボクの分のアバターを作ったなの。表情や動きのモーションも完全オリジナルなの」
「なんか良いね。本当に普段と同じ格好だから本当に異世界転生した気分になれるよ」
「ひさびさの
冒険の始まりを期待させるかのように、晴れ渡った青空と、美しい森が目の前に広がる。
「随分とクオリティー高いな。これはModというレベルではないぞ。西洋風のファンタジー世界観はぶち壊しだけどな」
「表情や特殊モーションも設定済みなの」
いかにもな正統派の剣と魔法のファンタジー世界にやたら完成度の高い黒パーカーの少年と、車椅子の銀髪少女のアバターが現出する。Modの利用が許可されたこの世界において、現代風の服を着たプレイヤーが全くいないというわけではないが、ここまでのクオリティーのアバターをまとった、プレイヤーはこのゲーム内に存在しない。
「このゲームまず何をすればいいんだ?」
「王様に会いに行くなの」
「いやはや……8bitゲーム時代の設定だねぇ。逆に新しい」
銀星と虚子は、ドリームランド王国を目指す。アバターの虚子は、車椅子に乗ったキャラクターで、銀星が手押ししなければ移動できないという設定となっている。この辺りの設定についても、Modの設定によるものだ。
このMMORPGも他のゲームと同様にいわゆる『はじまりの街』が存在する。ギルドや武器屋や宿屋なんかの基本的な機能はこのドリームランド王国に全て備わっている。プレイヤーはゲーム内の基本的な知識や遊び方をこの街で体得し、更なる難易度の街に進んでいくのである。
銀星と虚子は、『異世界転生オンライン』において、最初の目的地であるドリームランド王国の城下町を歩く。城下町の道行く人の中に銀星たちと同じようなプレイヤーキャラクターが居るのであろうが、外観からは分からない。NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の頭上にそれを示すマークなども存在せず、プレイヤーキャラクターとNPCの違いを外観で判別するのは不可能だ。
「なんだろう。フルダイブ式ではないのに妙にリアルだな」
「ボクもそう感じていたところなの」
「外観を見るだけではNPCとプレイヤーキャラクターの違いが分からないから、あんまりゲーム内の世界って感じがしないんだよなぁ……」
しばらく城下町を歩くと、王城にたどり着く。王城は王座まで一本道なので、迷う事もなく車椅子の少女と、その車椅子を手押しする少年は向かう。
《転生者シルバースター、ミーム、よくぞこの城に参った。この世界は魔の軍勢によって――》
「話が長くなりそうだから、この会話はスキップするなの」
「まぁ。この辺りの下りはぶっちゃけ飛ばすよな」
《――まずはこの城下町の近くのカダスの山でのレベリングに励むのじゃ》
「それじゃ、そのカダスの山とやらに向かうか」
「向かうなの」
カダスの山。町から歩いてすぐの背の山である。大きさ的には、小学校の登山で登る程度の山である。ポップするモンスターも、スライムやゾンビやサハギンといったような、いたって一般的なモンスターである。この『異世界転生オンライン』内の戦闘を覚えるには十分な山だ。
「まさに序盤のレベリングのための山。登場するのは雑魚キャラばっかだな」
銀星は鉄バットをフルスイングし、ゾンビの頭頂部に直撃させる。ファンタジー世界なので、ゴア表現規制により肉片は飛び散らず、敵キャラクターは消滅するだけである。自動的にインベントリにゴールドと、経験値、アイテムなどが蓄積されていく。
「この山の山頂であるワードを入力すると、強力な女性NPCが仲間になるらしいなの。序盤のソロプレイヤーが攻略に詰まらないように、運営が用意した救済キャラとか、取り忘れたバグだとか諸説あるなの」
「なるほどね」
ここは、カダのス山七合目。中ボス戦である。ゲル状のスライムが集合したようなグロテスクな形状のモンスター。ゲル状のその体内には数十の眼球がぷかぷかと浮かんでいる。
なにしろこのゲームにはNPCだけではなく、敵キャラクターの頭上にも名前が表示されないので、具体的に何という名前の敵なのかはわからないのだ。モンスターの名前を知るためには、図書館にあるモンスター図鑑を閲覧する以外の方法はない。
「究極魔法・シューティング・スター」
銀星の目の前に、強大な星が墜落し、ゲル状のモンスターに直撃。もちろん敵は即死である。虚子が、運営のサーバーをちょっとだけいじり、スタータス値を最大に設定しているからできる芸当である。
「おお。やっぱ、異世界転生といったらチートだよな。No チート No 異世界ライフ!」
そう言いながら銀星は、チートによって習得したスキル、ヘキサ・アクセラレーションによって身体速度を8倍に向上させ、目の前のサハギンの群れの頭部のみを爆散させていく。正確無比な鉄バットによるヘッドショットである。もちろん、実際にはゴア表現規制により、敵の頭部が爆散する前に消滅するのだが。
「このゲームは異世界転生オンラインなの。だからボクたちがチート能力を使うのは正しい遊び方なの」
「わかる」
転生者無双ロールプレイを楽しみながら、山路を道なりに進んでいくと山頂が見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます