独白

 愛しい愛しい、俺の妹。


 彼女は、時空の歪みに産み落とされた天使様。


 全てに愛されるために生まれてきた、地上で唯一の存在。


 彼女の無垢な瞳は、俺の心臓を締め付けて離さない。


 脳に電流が走ったように、彼女の笑顔は俺の自由を奪う。


 白黒映写機の世界が彼女の力で色鮮やかな楽園へと姿を変えていく。



 俺はもう、彼女無しには生きられない。


 俺は彼女を守る騎士になるため、この世に生を受けたのだ。


 しかし彼女は、俺だけの姫になってはくれない。


 彼女は俺の天使様。同時に、みんなの天使様だ。


 今はまだ誰彼構わず笑顔を振りまいても、いつか必ず。


 その神秘の瞳に、俺だけを映すように。


 俺無しでは生きられなくなるように。


 俺は、愛を注ぎ続ける。


 例え、妹という事実が消えなくとも、血の繋がりが二人を阻んでも。


 俺はこの愛を偽ることはない。


 いつか彼女の手をとって、二人で旅に出よう。


 誰にも邪魔されない場所へ行って、ずっと俺の腕の中で眠るんだ。



 こんな風に、天使の寝顔で。


「母さんちょっと出掛けてくるから、赤ちゃん見ててね、お兄ちゃん」



 だから早く、大きくなあれ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歪 ―いびつ― 渉志 @meimo_kkym

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ